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量産型勇者の英雄譚  作者: ちくわ
四章 王の影
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四章二十二話 『並ぶために』



 今の一撃で意識が飛ばなかったのは、恐らく奇跡だろう。

 ルークの体は既に限界を迎えているし、立つことさえ困難なレベルでの重症だ。根性とか気合いとかでどうにか出来る範疇は越えている。


 その証拠に、立ち上がった足が言う事を聞いてくれない。勝手にフラフラと歩き、心なしか震えているようにも感じる。

 恐怖なのか、それとも武者震いなのか。

 いや、その答えはまた今度にしよう。

 何故なら、今は生きる事だけに頭を使うべきなのだから。


「はやい……!」


『ルーク! 後ろだバカ者!』


 ソラの言葉に合わせて振り返るが、既に視界が拳で満たされていた。鼻っ柱に直撃し、大きく仰け反りながら倒れそうになるが、そのまま胸ぐらを掴まれて引き寄せられ、今度は膝が胸板に叩き込まれる。


「ゴ、ハッ……!」


 呼吸が一瞬止まり、それにつられるように体の自由がなくなる。やけに相手の動きがゆっくりと見えるけれど、抵抗する事が出来ない。

 次にあったのは衝撃である。

 こめかみに爪先が食い込み、弾かれるようにして体が宙を舞った。


「ゲホッ、ゴホッ……なんだ、アイツ……!」


 大量の酸素を取り込み、その分だけ血液が口から溢れる。生きようとしているのに、その分だけ体から出てはいけない物が飛び出していた。


『ルーク、逃げろ。今の貴様では奴には絶対に敵わない』


「だな、正直言って勝てる気がまったくしねぇ……」


『立て、そして走れ。殺されるぞ』


「んな事言ったって……どうみても逃がしてくれそうにもねぇけどな」


 もし、ルークの体調が万全であったなら、黒マントに勝てただろうか。

 否、断言しよう。

 絶対に敵わないと。

 無傷で体力も満タン、睡眠も食事も完璧にとっていたとしても、ルークは敵わないだう。


 多少の抵抗は出来たかもしれないが、かといって戦局が傾く訳ではない。それほどまでの力の差が、今のルークと黒マントにはあるのだ。

 それに、相手は腰にある剣に手をつけようとすらしない。あくまでも素手だけで、ルークを制圧するつもりなのだろう。


「この野郎、舐めやがって……!」


『熱くなるな、今は逃げる事だけを考えろ』


「うっせぇ、逃げるにしても一発ぶん殴ってからだ。やられたままなんてゼッテー嫌だ」


『いい加減にしろ、貴様がここで死ねばどうやって残りの魔元帥を倒す? 貴様は生きて戦う義務があるんだぞ』


「知らねーよんな事。俺が戦うのは俺のだ。それに、どのみち全部の魔元帥を倒すんだ、顔くらい見といて損はねぇだろ」


 こうなってしまっては、ルークは人の話を聞かないだろう。元々やられたらとことんやり返すタイプなので、一方的に殴られて逃げるなんてのはあり得ない。

 戦力差は圧倒的。しかしながら、このまま尻を振って逃げる事など出来はしない。

 それに、


「逃がしてくれそうにもねぇよ」


『分かった。ただし、死ぬ事は絶対に許さんぞ。私の加護も長くは続かない、血を止めるので精一杯だからな。やるのなら早くしろ、そして早く逃げろ』


「わーってるよ、一発はゼッテーに殴ってやる!」


 とりあえず戦う事は決定。最終的な目的を逃げるという事に定め、ルークはそのために剣を握って走り出した。

 黒マントは迎え打つように構え、振り下ろした剣に合わせて拳を突き出す。

 剣と拳が激突し、


「やっぱりか、テメェなにもんだ!」


「…………」


「黙ってねぇでなんとか言えや!」


 勇者の剣に触れられた時点で、相手が少なくとも魔獣である事は確定した。剣を拳で受け止めるという荒業に関してはなにも言うまい。

 両手で剣を握って押し返そうとするが、黒マントは片手でそれを支える。びくともしなかった。まるで、硬い岩を素手で押しているような感覚だ。


「ッ! テメェの目的はなんだ、アイツを逃がす事か!」


「…………」


 やはり黒マントはなにも答えない。会話はする気がないのか分からないが、話し合いで解決するのは不可能だろうと決めつけ、ルークは体から流れる血に構わずに更に力を込める。が、


「うおッ!!」


 黒マントは握っていた拳を開き、素手でを掴みとると、そのままルークごとぶん投げる。

 空中でなんとか体を捻って着地しようとするが、地面に足がたどり着く前に腹部に痛みが走った。衝撃、そして胃の中身が逆流する。


 必死に口を閉めて嘔吐を逃れるが、追撃の回し蹴りが頬を捉える。顔の形が変形したかと思うほどの威力に、ルークはなすすべもなく地面へと落下。

 黒マントは素早く駆け寄り、ボールを蹴るようにしてルークの腹に向けて足を振り抜いた。


「ガッ……フ、グゥ……」


 二度三度と跳ねながら地面を転がり、今度は背中に鈍痛が駆け巡る。転がる方向が変わり、大きく跳ねて顔面から草にダイブした。

 動きが止まったあとでさえ、どこを殴られて蹴られたのか正確に把握出来ない。早く、そして一撃一撃が骨の髄まで響く。


「……の、ヤロウ。ふざけやがって……!」


『ルーク、残念な知らせだ。加護が切れるぞ』


「え、早くねーか?」


『これ以上加護の方に力を割くと、貴様の出血を止められなくなる。苦肉の策だ、今生きるにはこれしかない』


「マジか……加護ありで動きに追い付けねぇってのに」


 ソラが静かにそう呟いた直後、体を包んでいた違和感が消滅。加護を受けてい状態で太刀打ち出来なかった相手に、加護無しでどれだけ抗えるのか。

 絶体絶命にもほどがある。

 ルークの頭の中には、いよいよ死という一文字が鮮明に見えてきた。


 ただ、諦めるという選択肢はない。

 ルークの目的である、安寧の生活を手に入れるまでは、なにがなんでも死ぬ訳にはいかないのだ。

 剣を地面に突き刺し、ふらつく体を支える。


『ここはなんとしても堪えろ。奴に一撃を与えるにしても、死んでしまってはその目的さえ果たせないぞ』


「分かってる、みっともなく足掻いてでも必ず殴ってやる」


 黒マントを見据え、口の中で転がる折れた歯の欠片を吐き捨てる。

 ここからが正念場。

 加護もない今、ルークは己の能力だけであの化け物とやり合わなければならない。


 普通に考えれば絶対に敵わないだろう。

 しかし、ルークの目的は勝つ事ではなく、自分の鬱憤を晴らすために一発ぶん殴る事だ。

 それならば。いや、それすらも困難なのはルークが誰よりも分かっている。

 だからこそ背は向けない。

 この程度の壁は、ルークがこれから歩く道には数えきれないほどに立っているのだろうから。


「勇者舐めんじゃねぇぞ」


 自分を奮い立たせるように呟き、目の前の驚異に向かって駆け出した。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 負けた。

 それなのにも関わらず、ウルスは清々しい気分だった。

 厳密には勝負がついたとは言えないが、恐らくあのままやっていたとしても殺されていただろう。あの一撃で、宝石を砕かれた時点でウルスの戦力はほぼ削り取られていた。


 とはいえ、この男はそのまま逃げて終わりなんて性格ではない。肉体に刻まれた切り傷を魔法である程度治療し、本調子とは程遠いけれど、本来の目的のために王都を走り回っていた。


「あの嬢ちゃんに鎖をつけといたのが項をそうするとはな」


 エリミアスの手足には、ウルスの力で作り出した鎖が巻かれている。離れ過ぎていては関知出来ないが、王都の中にいればどこら辺に居るのかは把握できる。


 ルークとの勝負には負けた。

 けれど、この目的だけはなんとしても果たさなければならない。


「……まさかアイツが王都に居るってのは予想外だったが……ま、元々居場所を掴めねぇ奴だったしな」


 民家の屋根を飛び込え、エリミアスがいると思われる場所を目指して速度を上げる。

 砕けた宝石がきになるけれど、一人の少女を拘束するくらいならならば問題はない。

 だから、今は急ぐ。

 城へ着いた時点で、本当の意味での負けが確定してしまうから。


「よっと、あ? いたいた、発見」


 軽い身のこなしで人混みをすり抜け、暗い路地へと足を踏み入れる。壁を蹴りつつ跳び跳ねながら移動していると、視線の先に目的の人物を発見した。

 ニヤリと広角を上げて喜びを表すが、それと同時に首を傾げる。


「ティアニーズだけなのか?」


 前を走るのはティアニーズだけだった。エリミアスを肩に担ぎ上げ、たった一人で走っている。

 王と行動していないのを見るに、他の面々は王の方を護衛し、違うルートで城へ向かっているのだろう。

 ともあれ、


「やりやすいな、とっとと終わらせて王都とはおさらばっすか」


 射程距離内に入った瞬間、ウルスは戦闘態勢へた移行する。無意識に殺気が漏れていたのか、走るティアニーズが後ろを振り返る。


「な、ウルス……さん!」


「よォ、会いに来てやったぜ」


 挨拶を適当に済ますと、すかず剣を作り出してティアニーズへと放った。

 ギリギリのところで回避し、バランスを崩しながらも路地を曲がるティアニーズ。

 加速して離されないようにウルスも角を曲がるが、


「あ? 逃げなくて良いのか?」


「逃げたところで追い付かれますから。だったら、ここで貴方を倒した方が得策かと」


「良い判断とは言えねぇな。こっちは手負いだが、お前には負ける気がしねぇぞ」


 角の先、エリミアスを守ようにしてティアニーズが立っていた。既に剣を構え、臨戦態勢へと入っている。破れた服と治療したての傷を見て、怪訝な表情を浮かべた。


「ルークさんは、どうしたんですか」


「負けたよ。だから俺はここにいるんだ。流石に死ぬのは御免だからな」


「……生きているんですね?」


「多分な。あとの事はアイツに任せたから俺は知らねぇよ」


「そうですか……生きているなら大丈夫です。貴方を倒して、それから助けに行けば良いだけですから」


 倒す、ティアニーズは確かにそう口にした。時間を稼いでエリミアスを逃がすでもなく、隙をつくって逃げ出すでもなく、真正面から向き合って滅ぼす道を選んだのだ。

 ウルスは剣を握り締め、傷口に響かないように抑えて笑う。


「やっぱお前は面白い奴だな。俺としちゃ用があんのは後ろの嬢ちゃんだ。引いてくれるってんなら、命をとる事はしねぇけど?」


「私の役目は姫様を守る事、ここで逃げ出すなんて絶対に出来ません」


「勇気と無謀は違う。無駄に命を投げ出す必要はねぇと思うが?」


 ウルスの言葉を遮るように飛び出し、ティアニーズは剣を振り下ろした。

 なんて事はない。避ける必要もなければ、無闇に動く事すら不必要だ。意図も簡単にその一撃を剣で受け止め、ウルスは言葉を続ける。


「俺が人間を好きな理由を教えてやるよ。絶対に諦めないからだ。どんな困難があろうと、逃げずに立ち向かう勇気を持ってるからだ」


「それが、人間の強さです!」


 剣を跳ね退け、がら空きになった腹へと靴裏を叩き付ける。骨が軋むような音とともにティアニーズの体が宙を舞い、転がりながら後ろへと吹っ飛んだ。

 しかし、ティアニーズは立ち上がる。

 腹を押さえ、必死に息を吐き出して。


「お前のそれは勇気だ。俺という困難に立ち向かう、立派で格好良いと思うぜ」


「まだ……まだァ!」


 再び突っ込んで来たティアニーズの足を払い、倒れる暇も与えずに腹へと肘を打ち込む。よろけた瞬間、その髪を鷲掴みにして引き寄せると、今度は顔面に容赦なく拳を二度三度とぶつけた。

 ふらふらと後退り、倒れそうになるが、


「……その程度ですか? それなら、ルークさんの拳骨の方が痛いです」


「……勇気ってのは一歩間違えば自分の身を滅ぼす。身の丈に合わねぇ事は勇気とは言わねぇよ。それは傲慢って言うんだぜ」


 躊躇いはなかった。いつものウルスであれば、女性の顔面を傷付ける事など絶対にしない。

 けれど、彼女は自分を敵だと認識し、勝てないと分かっていながらも向かって来る。

 だから、


「勇気のある人間は好きだぜ。でもな、自分の命の重みを理解してねぇ人間は大ッ嫌いだ」


 左足を踏み込み、渾身の右ストレートがティアニーズの顔面を捉えた。再び体が宙を舞い、怯えるように縮こまっていたエリミアスの横へと落下する。

 エリミアスは青ざめた顔で駆け寄り、


「もう、もう良いです! 私のために貴女が傷つく必要はありません!」


「姫様、大丈夫ですから。下がっていて下さい」


「で、ですが!」


「良いから……。私はこんなところでは死にません。いえ、死ねないんです」


 駆け寄るエリミアスを押し退け、体を起こして塞がった左目をウルスへと向ける。

 僅かに見える瞳、それを見てウルスは唇を噛み締めた。理由は分からない。分からないけれど、この胸で燃える感情は怒りだ。

 明確な怒り。ウルスはそれをティアニーズへと向けていた。


「……死ぬぞ、いや、殺すぞ。お前が俺をどう思ってるのかは知らねぇが、殺せないかも……なんて甘い期待は捨てろ」


「そんな期待、まったくしてませんよ。貴方はやる時はやる、そんな事、目を見れば私にだって分かります」


「だったら何故だ。何故向かって来る。来たって待ち受けてるのは死だけだ。勝てる見込みなんて少しもありゃしない」


「やってみなきゃ分からない……。戦わずして諦めるなんて選択肢、私の中には存在しない!」


 魔道具から放たれた炎を素手で弾く。それを目眩ましに使ったのか、剣を振り上げるティアニーズが目の前に迫っていた。体を少しだけ傾けてかわし、手首を掴んで振り回す。そのまま壁に向かってぶん投げた。

 鈍い音が響き、ずるずるともたれかかりながらティアニーズが地面に倒れこむ。


「やらなくちゃ分からない、か。そうだな、確かにその通りだ。だがな、世の中にはやらなくたって分かる事がある」


「……それを決めるのは私です」


「いいや、俺だよ。人間は魔元帥には敵わない。絶対にな」

 

 ティアニーズの細い首を掴み、そのまま体を持ち上げる。掴む腕を叩いて抗う様子を見せるが、そんなもの大した抵抗にはならない。引き寄せて膝を腹に突き刺し、ゴミでも捨てるかのようにして放り投げた。

 それだけでは終わらない。


 倒れるティアニーズの腹に爪先を叩きこみ、うずくまるように体を丸めた横腹へと拳を振り下ろす。胸ぐらを掴み、今度は肘を打ち据える。最後に、とどめと言わんばかりに回し蹴りを胸へと放った。

 けれど、


「……まだ、まだ。こんなところで終わらない……!」

 

「ッ! なんでだ、なんで立ち上がる。そのまま寝てりゃ良いだろ! わざわざ自分から死に急ぐ必要なんてねぇだろ!」


「立ち上がる……理由ですか? そんなの、そんなの決まってるじゃないですか……」


 立ち上がるその姿を見る度、胸の中で怒りの感情が暴れ回る。

 何故か、何故なのか。

 いまだかつて、こんなに怒りにまみれた事はなかった。

 こんな少女に、ただの人間に何故こんなにも怒りがわき上がるのか。


 その答えは、次の一言で分かった。


「私には、追い付かないといけない人がいるんです。その人の横に並ぶまでは、たとえなにがあろうと死ぬ訳にはいかない……!」


「ーーーー」


「貴方が魔元帥で、強いなんて事は分かってます。けど、だからなんですか。そんなの、諦める理由になんてならない!」


 ティアニーズは、ウルスを見ていなかった。

 敵と認識していながら、何度も立ち向かって来ながら、その瞳には少しもウルスはうつっていない。


 ティアニーズが見ているのはもっと先、はるか彼方に立つ誰かを見ていた。


 だから、怒りがわき上がる。

 戦うと言いながら、滅ぼすと言いながら。

 その瞳はウルスには向いていない。

 まるで、ウルスを倒すのはついでだとでも言いたげに。

 それに気付いてしまえば、笑いを堪える事なんて出来なかった。


「アハハハハハッ! そうか、そういう事かよ。俺なんか眼中にねぇってか、俺を倒すのなんざ踏み台でしかねぇってか」


「私は決めたんです。あの人と世界を救うと、いつか必ず横を歩くと。難しいかもしれない、きっと簡単な事じゃない。けど、初めて出来た私のやりたい事なんです」


「……そのために俺と戦うのか?」


「はい。あの人の横を歩くには、魔元帥くらい勝てないとダメなんです。だから立つ、だから向かう、たとえどれだけ打ちのめされようとも、私は歩く事を止めたくないんです!!」


 それはティアニーズの心の叫びなのだろう。

 ウルスは知らないが、ルークとともに過ごして自分の無力さを痛感したに違いない。その度にうちひしがれ、自分の弱さに気付き、悔しかったに違いない。


 それでもめげず、ティアニーズは選んだのだ。

 たとえ困難だろうと、目の前を走る男に追い付く事を目標に。


 困難に立ち向かう、揺るぎない勇気を胸に。


「あぁ、やっぱ人間ってのは良いな。お前と会えて良かったよ、また人間の事を一段と好きになれた。だが、殺さない訳にはいかねぇ」


 ウルスにだって譲れないものがある。目の前の少女の命を踏みにじる事になったとしても、達成しなければならない目的。

 父親の、魔王の復活を。

 冷たい瞳を浮かべ、ウルスはティアニーズに歩み寄る。後悔はない、躊躇いもない。

 だから振り下ろす、握り締めた剣をーー、


「ーーーー!?」


 瞬間、全身を熱が包みこんだ。それが炎の蛇だと認識した時には遅く、ウルスの体を締め上げる。一瞬動揺したが、痛みを堪えながら全身から剣を射出して逃れる。が、


「おまッ!」


「驚いた時、動きっていうのは鈍るものだよ」


 逃れた先に待ち構えていたのは、剣を構える金髪の青年だった。

 青年の突き出した剣を軌道を、自分の体から伸びる剣でギリギリのところで逸らし、大きく後ろへと跳躍ーー、


「ドーン!!」


「グバッ!」


 間の抜けた掛け声とともに、背中に衝撃が走った。首だけを後ろへ向け、そこで目にしたのは銀髪の猫耳の少女である。

 バヂィ! という音を出して電撃が全身を駆け巡り、ウルスの体はなすすべもなく地面へと落下。

 痺れに抗いながら体を起こすと、視線の先でティアニーズを守るように立つ女性がいた。


「私の部下をえらい傷付けてくれちゃって。覚悟、勿論出来てるんでしょうね?」


 思わず笑みがこぼれ落ちた。

 楽しくてしかたなかったからだ。

 もう一つの人間の強さである、仲間というものを見たからだ。


 王都騎士団第三部隊、そこに所属する三人の姿を。



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