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量産型勇者の英雄譚  作者: ちくわ
七章 精霊の契約
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七章五十話 『羽ばたく鳥』



 ルークの決意を汲み取り、振り返りたくなる気持ちを抑えて上の階にたどり着いたソラ。

 部屋には血液と思われる染みがあちこちに付着しており、テーブルが砕けてソファーがひっくり返っていた。


「まだかわききっていない……まさかティアニーズの……」


 しゃがみ、地面についた血で指先を湿らせる。太陽がまともに射し込んでいないという問題もあるが、完全にはかわききっていなかった。となると、ついさっきまで誰かがここで血を流しという事だ。

 辺りを見渡し、人がいないのを確かめる。


「いや、あの死んだ男……ベルトスのものか」


 なにやら下から騒がしい声が聞こえるが、ソラはそれをあえて無視した。ルークは必ず追い付くと信じ、自分は自分のやるべき事を成すため、怪しげな扉へと近付く。


「……力の多くを失ったと思っていたが……ここまで不気味だと感じとる事が出来るのだな」


 ドアノブに触れた瞬間、嫌な感覚が腕を伝って全身を駆け巡った。ドロドロとして悪寒が体にまとわりつくような感覚。それほどまでのなにかが、この扉の向こうには存在しているのだろうか。


「さて、対面と行こうか」


 不安を拭うように格好つけ、ソラは一気にドアノブを捻って扉を開いた。上に向かう一本の階段があり、それを照らす光源は見当たらない。

 手探りで壁を探し、足元を確かめるようにゆっくりと進む。


 たっぷりと時間をかけ、階段を上りきると、再び扉が目の前に現れた。木で出来たシンプルな扉だ。かなり古い物なのか、ところどころに穴が見られ、腐った木の臭いが鼻を刺激する。


(流石に私一人で魔元帥と対峙する事は避けたい。私が死ねば、それこそ勝つための算段がなくなってしまう)


 いくら精霊とはいえ、ソラの体はただの少女だ。多少丈夫に出来ていて、宝石を砕かれなければ死なないとはいえ、魔元帥と一対一で戦えるほどの力を秘めてはいない。

 だから、ここは運に任せる。

 この扉の先にいるのが、敵ではなく味方だと。


 意を決し、ソラは扉を開いた。

 小窓から射し込む太陽の光が顔に当たり、目を細めながら手を使って太陽の光を遮る。

 そして、視線の先、そこに立つ人物を見て安堵の息をもらした。


「……やっと、やっと会えたな」


 後ろ姿だけでも、それが誰なのか分かった。

 特徴的な桃色の長い髪。腰にある剣。

 それが、ずっと探していた少女だと、ソラは直ぐに分かった。


 ティアニーズはソラの声を聞き、静かにこちらへと体を向けた。

 生気が抜けたような表情。この世界が終わって、たった一人取り残されたような表情。

 ともかく、いつもの姿ではなかった。


 ソラは、ゆっくりとティアニーズに近付く。


「どれくらいだ? 二日ぶりくらいか?」


「…………」


「随分と痩せこけているな。食事はちゃんととっているのか? ガジールの料理に不満はないが、やはり牛乳がないとしまらん」


 出来るだけ平然を装い、ソラは極ありふれた会話を心がける。そうする事で、ほんの少しでもティアニーズの不安を取り除ければと願って。


「連れ戻しに来たぞ。外の様子は知っているだろう? ルークも来ている、とっとと魔元帥を倒して終わらせよう」


 そこで、ソラの足が止まった。

 ティアニーズを見て、いや正確に言えばティアニーズの背後に浮かぶ黒いなにかを見て。


「……なるほど、それが門とやらか」


 地面へと視線を下ろすと、サルマで見たものに近い紋様が浮かび上がっていた。あの時ほど複雑ではないものの、魔獣を召喚するには十分な情報量だという事は分かった。

 その紋様の上に、黒い種は重力に逆らって浮かんでいる。

 ゆらゆらと、ゆらゆらと。


「ティアニーズ、こちへ来い。ルークが来るまで待って、私がそれを破壊する」


「……それじゃ、遅いんです」


「なに……?」


「これは、いつ作動するか分からない。あの人が来ていても、間に合わない」


「だったらなおさらこちへ来るんだ。そんなところにいたら巻き込まれるぞ」


「良いんです。ここじゃないと、中には入れないから」


 改めて、ティアニーズがどれだけ追い込まれているのかを理解した。

 この絶望的な状況で、真後ろには魔獣が現れるための通り道があるのに、ティアニーズは笑っていた。

 ヘラヘラと。まるで、壊れた人形のように。


「中に入るだと? そんな事をすればどうなのるのか分かっているのか!」


「分かっています。けど、これしか方法がないから。内側からしか、この門は閉じれないから」


「……ダメだ、そんな事絶対に認めんぞ。私は決めたんだ、もう二度と友を失わないと」


 トワイルが死んで、ソラは涙を流した。

 どうしようもなく、悲しかったから。

 始まりの勇者が死んだ瞬間は、今となっては覚えていない。けれど、きっと、あの時以上に泣いていたのだろう。


 だから、そんな思いはもう二度としたくない。

 誰が死ぬ瞬間なんか、絶対に見たくない。

 そのために、ソラは前を向いた。

 あの男と戦うと、もう一度誓いを立てた。


「ティアニーズ、貴様が自分をどう思っているかは知らない。どれだけ過小評価しているのかも知らない。だがな、私には貴様が必要なんだ」


「こんな私でも、友達だと思ってくれていたんですね」


「当たり前だ。あの時、勇者殺しを倒して初めて会った時、手を重ねて約束しただろう」


「そんな事ありましたね」


 恐らくだが、ティアニーズは自分がなにを言っているのすら理解出来ていない。瞳にはソラがうつっているが、ソラを見ている訳ではない。

 いや、違う。

 なにも、見ないようにしているのだ。


 これ以上は手遅れになると判断し、ソラは走り出そうとした。多少強引な手段を使ってでも連れ戻さなければ、間違いなく取り返しのつかない事になる。

 しかし、


「来ないで!!」


 悲しみに満ちた声が、ソラの足を止めた。

 ティアニーズの背後で蠢く種が、次第に大きさを増して行く。


「全部、私が悪いんです。私のせいで、こんな事になったんです」


「それは違う。全てあの男が仕組んだ事だ。貴様は利用されていただけにすぎない」


「だとしても、この種を町に置いたのは私です。私の軽率で浅はかな行動が、悲劇を引き起こすんです」


「……だから、貧民街にいたのか」


 ずっと気になっていた。敵として決別した筈のティアニーズの姿が、なぜ貧民街で見かけられたのか。

 きっと、それすらもあの男の掌の上の出来事だったのだろう。全てを見透かした上で、ティアニーズの行動を操っていたのだ。


「私のせいだから、私がどうにかしないといけない。たとえ命を落とす事になったとしても、私にはこの町を守る責任がある」


「それを言うなら私達だ。私達がこの町に来さえしなければ、こんな事にはならかったんだ。だから、だから……」


「違うんです。私が力を求めたから、初めから認めていれば良かったんです。私にはなにもないって、特別な力に憧れるのは無意味だって」


「違う、貴様には立派な勇気があるだろう。何者にも負けない意思の強さが」


「ありませんよ、そんなもの。私は弱くて、考えだってブレブレで、いつだって迷って、悩んで……そのせいで、誰かが傷つく」


 ゆっくりと、ティアニーズが振り返る。

 そこには、種と呼ぶにはあまりにも大きすぎるなにかがあった。なにもない筈の空間に黒い亀裂が走り、向こう側にはどこまでも続く黒が広がっている。

 それに向かい、ティアニーズは手を伸ばす。


「やっと、やっと皆の力になれる。こんな事で私の罪は消えないけど……やっと、誰かを守れる」


「そんなのは救いじゃない! ただ逃げているだけだ!」


 ソラは走り出した。

 必死に足を前に出し、必死に手を伸ばして。


「私、自分勝手なんです。本当に、ズルくて卑怯なんです」


「ダメだ! まーー」


 ソラの手が、空を切った。

 そこにいた筈の少女の姿はない。

 吸い込まれるようにして、黒い亀裂の中へと消えて行った。


 最後の瞬間、ティアニーズはこう言っていた。


 ーーごめんなさい、と。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ああもう、うるさいから静かにして!」


 シャルルの言葉によってまとまりを見せたテムランの住人達。そこに奴隷との壁はなく、一つの目標ーーこの町を救うために互いに手を取り合っていた。

 きっと、この姿を全員が望んでいた筈だ。


 だがしかし、若干テンションが上がり過ぎていた。

 今後の行動を話す上で邪魔にしかならないので、シャルルは思わず声を張り上げる。


 静まらない周囲に呆れながらも、アテナは話を進めようと口を開いた。


「とりあえず、目的は魔獣の進行の阻止だ。種の破壊が一番好ましいが、恐らくそれは無理だ。無理な事を嘆いていても仕方ない、私達は私達の出来る事をやろう」


 ガジールがどこかから持って来たテムランの地図を地面に広げ、現在地と大まかな種の位置を確認する。


「種は全部で五ヶ所。時計塔の方はあの三人に任せるとして、我々は四つの部隊に別れる必要があるな」


「貧民街は俺達に任せてくれ。あそこは俺の家だ、俺達の手で守ってみせる」


「分かりました。何人か連れて事の対処にあたってください」


「おう、そっちも無理するじゃねぇぞ」


 やる気満々の様子で名乗りを上げると、ガジールは貧民街の住人、あとは周りの人間を数十人を連れて貧民街へと走り出した。

 ガジール達の姿を見送り、アテナは再び地図へと視線を下ろす。


「残るは三ヶ所だな。西門の近くは私が行く。シャルル、一緒について来てくれるか?」


「勿論。戦力としては不十分かもしれないけど、言い出しっぺがなにもせずに見てるなんて出来ないからね」


「いや、人は多いに越した事はない。君の力に期待しているよ」


「では、居住区には私が行きます」


 地図上に記された居住区の場所を指差し、そこへ行くと宣言したのはケルトだ。となれば、隣にいる姫様も当然の如く、


「私もご一緒します!」


「いえ、エリミアス様は安全な場所で……」


「私も行くのです!」


「いやですが……」


「行くのです!!」


 頑なに譲る気配のないエリミアスに、ケルトは困ったように頭をかく。基本的に、この姫様は頑固なので、一度決めたらなにがなんでも動かない。ケルトもそれが分かっているからこそ、返事に困っていたようだが、


「ケルト、エリミアスを連れて行ってくれ。魔獣が町に放たれれば、安全な場所はなくなる。その場合、君が側にいる方が守れる確率が上がる」


「ですが……」


「ケルト、君が思っているよりもエリミアスはずっと強い。なに、心配する事はないさ。それはほかでもない、君が誰よりも知っている筈だろう?」


「……分かりました。エリミアス様、片時も私の側を離れないでください」


「はい! 一緒に戦いましょう!」


 渋々、というかまったく納得していない様子だが、これ以上の口論は不毛だと判断したのか、ケルトは輝くエリミアスの瞳を見て肩を落とした。

 残るは一ヶ所。露店が集まる商店街だ。

 しかし、


「問題はここだ。ルークとソラはともかく、アンドラがいれば……」


「……僕が、行きます」


「いやダメだ。君一人では危険過ぎる」


 静かに呟いたアキンに対し、アテナは食いぎみに反論した。

 いくら住民の手助けがあるとはいえ、主な戦力はここにいるメンバーだ。先陣をきり、一番危険な場所で魔獣と戦わなくてはならない。

 いくらアキンの魔法の腕が高いとはいえ、子供一人に任せる訳にはいかないのだろう。


 しかし、


「お願いします。僕に行かせてください」


「君の実力は私も分かっている。だが、数も戦力も分からない以上、君のような子供を一人で行かせる訳にはいかないんだ」


「お願いします、戦いたいんです。お頭も、ルークさんも、皆さんも、これまでずっと戦って来た。でも、僕はそれを後ろで見てる事しか出来なくて……それが、ずっと悔しかったんです」


「子供を守るのは大人の役目だ。君が気悩む事ではない」


「分かってます。でも、嫌なんです。もう誰かが死ぬのは、その瞬間に動けないのは……戦わないで、立ち向かわないで、あの時やっとけば良かったって後悔したくないんです」


 アキンは、魔王が復活した瞬間を目にした。

 いやそれだけではない。その復活を止められた筈の立場にいて、阻止する事が出来なかった。別にアキンだけの責任にはないし、一緒にいたルークとアンドラの力不足も理由の一つだ。


 でも、後悔は消えてくれない。

 トワイルとの会話はまったくなかったけれど、目の前が彼が死ぬのを見て、耐え難い苦痛が胸を襲った。ここに来るまで、救えた筈の命をいくつも取りこぼして来た。

 そんなのは、もうごめんだから。


 あの時戦っておけば良かったなんて、もう二度と後悔はしたくないから。


「僕には守りたい人がいるんです。顔も声も知らない人でも、死んでほしくないんです。無理だって分かってるけど、皆に笑っていてほしいんです」

 

「……覚悟は分かった。だが……」


「僕の歩く道の、邪魔をしないでください」


 その言葉に、アテナは目を大きく見開いた。

 その瞳を、表情を、アテナは知っていたのだろう。

 どこかのアホ勇者と、まったく同じ顔をしていた。


「多分、ここを逃したら僕は一生なれない気がするんです」


「なれない?」


「勇者に、なりたいんです。ルークさんは僕ならなれるって言ってくれました。そのチャンスを、奪わないでください」


「……まったく、ティアニーズにしろエリミアスにしろ、どうしてこう……いや、側にいるのが悪い大人だからか」


 頭に浮かんだ盗賊と勇者を追い出すように頭を振り、アテナは改めてアキンと向き合う。

 決意と覚悟、真っ直ぐな信念を宿した瞳だ。


「分かった、商店街の方は君に任せる。だが約束してくれ、危なくなったら必ず逃げると」


「はい」


「本当に、約束出来るな?」


「はい」


「……君の年齢は?」


「はい」


 アテナの盛大なため息が響く。

 一応返事のタイミングはあっているので聞こえてはいるのだろうが、アキンの意識は体を離れているらしい。

 不安しかないこの状況、少しの時間すら惜しい状況で、アテナは決断を下す。


「仕方ない、部隊は今話した通りだ。各自住民を連れて所定の位置についてくれ」


 全員の元気な返事があった。

 それにつられ、後ろで騒いでいた住民達の雄叫びも。まとまりがあるのは良い事だが、なんだかお祭り騒ぎのような雰囲気である。


「良いか、私達の役目はあくまでも魔獣の進行を食い止める事だ。無理に殲滅させる必要はない。ルーク達が魔元帥を倒すまでの時間稼ぎ、それをしっかりと胸にとめておけ」


「ルーク様なら必ずやってくださいます!」


「あぁ、情けない話だが彼に望みを託すしかない。だが、甘えて良い訳ではないぞ。私達は、私達のやるべき事をやり通す」


 地図をたたみ、ポケットにしまいながらアテナは立ち上がる。

 これから先へ進めば、もうあと戻りは出来ない。死ぬかもしれない戦場へ、自らの足を踏み入れなければならない。

 勇気があれば良いとか、覚悟があれば良いとか、そんな簡単は話ではない。


 それを理解して、なおも進むと決めた人間がここにいるのだ。

 だったら、あとは進むしかない。

 どんな結末が待ち受けていようと、進むしかないのだ。


「死ぬな、生きろ。生きてさえいればあとはどうにでもなる。必ず生きてまた会おう。その時は、私のおごりで食事にでも連れて行ってやる」


 その言葉を最後に、全員が走り出した。

 絶望へと踏み入れた事を理解していて、全員が笑っていた。



 別れ、商店街を目指して走るアキン。

 背後に武器を持った住民達を引き連れ、頭の中に刻み込んだ地図を頼りに目的地を目指していた。

 恐怖はない。これだけの仲間がいて、恐れる事なんかなにもないから。


「えと……ここら辺ですか?」


「あぁ、地図だとこの付近の筈だが……」


 商店街へとたどり着くと、とりあえず違和感を探ろうと辺りを見渡した。並ぶ露店に人はおらず、静かな風が不気味にアキン達を叩く。

 すると、一人の男は通りの先を指差した。


「おい坊主、ありゃなんだ」


「……あれは」


 思わず、息を飲んだ。

 なんの変鉄もない道に、明らかにおかしな紋様が刻まれていた。空間が歪んだように、蜃気楼のようにその場所が揺れ、中心に浮かんでいるのは小さな黒い種だった。

 その種は、ゆっくりと大きさを増して行く。


「多分、あれだと思います。魔法でも破壊出来るみたいなので、一応試してーー」


「おっと、それは見過ごせないねぇ」


 踏み出そうとした瞬間、上から声がした。

 その声の正体を確認するよりも早く、声の主が屋根から飛び下りる。一人ではなく、二人の人影がアキン達の前に立ち塞がった。


「おいおい、まさか俺達の相手はガキは一人かよ」


「一人で来たという事は、それほどの実力者かよほどのバカか。ともかく、油断はしない事ですよ、ロイ」


「さっすが騎士団の言う事は違うねぇ」


 見覚えがあった。

 首の回りに鎖を垂らし、掴み所のない男。

 もう一人の男には見覚えがないが、放っている空気が異質なものだという事は分かった。


 背後にいた男が、声を、体を震わせながら呟く。


「アイツら、見た事ある……」


「敵、ですよね」


「何度か牢屋に来てた……。奴隷商人をまとめてた奴らだ」


 ならば、とアキンは力強く足を前に出す。

 立ち向かうと、変わると決めても恐怖は簡単には消えない。そんな事、アキンは誰よりも分かっている。

 だから、自分がやらなくてはいけない。

 そのために、ここへ来たのだから。


 息を吸い、立ち塞がる二人を見る。


「お前達の相手は僕だ」


「オタク、俺らの事バカにしてんのか?」


「お前らなんか、僕一人で十分だ!」


 やれやれ、といった様子でロイは首を振る。

 隣に立つ男ーーカストリーダは眉をひそめ、


「君、状況を分かっていないようですね。ここは子供が来て良いような場所ではない。だから、帰る事をオススメしますよ」


 瞬間、地面が揺れた。

 ダンッ!とカストリーダが地面を踏みつけた瞬間、泥の波が出現し、露店をなぎ倒し、浚いながらアキン達へと迫る。


「子供だからって、舐めるな」


 アキンは真っ直ぐに前を見る。

 手をかざし、凝縮した炎が鳥の形へと変わった。

 羽根を羽ばたかせ、迫り来る泥の波へと突っ込みーー跡形もなく吹き飛ばした。


 轟音が炸裂し、泥の波を根こそぎ吹き飛ばしたのだ。

 アキンは魔法に形を与える術を習得してはいない。手を離れれば、数秒で爆散してしまう。だから、それを利用した。

 一滴も残さず、完全に消し飛ばした。


「……お前達を、僕は絶対に許さない。人の命をもてあそんで、傷つけて、なんで笑っていられるんだよ!」


 少女は進む。

 立ち向かう勇気を胸に、倒すべき相手へと。


「かかって来い! 僕は、偉大なお頭の弟子ーーアキンだ!!」



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