七章三十七話 『男の宣言』
遡る事数分前。
放火騒ぎによって貧民街を追い出されたルーク達は、ガジールのあとをついて新たな寝床を目指していた。
話を聞く限り、畑や家畜、盗みだけでは養う事が難しいらしく、小さな骨董屋をやっているようだ。
なので、とりあえずそこを目指す。
当然道は分からないので、大人しくあとをついて行くしかないのだが……。
「…………なんでだ」
現在、ルーク・ガイトスは一人ぼっちである。
先ほどまで前を歩いていた筈の集団の姿は見当たらず、視界は見知らぬ顔ぶれで満たされている。
事情を説明するとすれば、良い匂いがするなぁ、なんて呑気な事を考えて視界を外し、ちょっとだけ匂いの正体を確認するとーー迷子になってたのです。
ここまで来ると、体質とか運ではなく、多分迷子になるように運命が働いているのでは、なんてアホな考えさえ浮かんで来る。
とりあえず辺りを見渡し、
「……さて、これは迷子だな。もう俺は認めちゃうよ、変に言い訳しても無様なだけだし」
午前中に学んだが、迷子を認めない人間は端から見ると可哀想に見える。なので、ルークは即座に自分が迷子だという事情を認め、それから今後の行動について考える事にした。
「いやどーすんのよ。軽く場所聞いてりゃなんとかなったのかもしれねぇけどさ」
大雑把な場所さえ聞いていないルークは、どちらに向かって歩けば良いのかも分からない。だが、分かっていたとしてもさらに迷子になるだけだろう。
しかし、ルークは学ぶ男だ。
「知ってるぜ? 迷子になった時は動かないのが鉄則。なぜなら入れ違いになる可能性があるからだ」
この男が何度迷子になったと思っているのだ。迷子になった挙げ句に誘拐された事ある。いくらバカでも、心得と耐性がつくに決まっている。
そう、つくに決まっている!
数分後、
「…………」
なぜか分からないが、ルークの周りには人がいない。まぁ端的に言うと、勝手に動いてひとけのない路地に進入しただけである。
もうお気付きだろうが、この男は学ばない男なのだ。
「……ふっ、なんでじゃボケ」
格好つけて鼻を鳴らしてはみるものの、余計哀れな気持ちになって来る。
ちなみに動いた理由は、もしかしたら歩けば会えんじゃね?というアホ丸出しの単純思考によるものだ。
結局、こういう男なのだ。
「しゃーねぇ、こうなったらとことん迷子になるか」
こうなってしまっては、待つという選択肢が無意味になる。であれば、向こうも探してくれている事を切に願いながらやみくもに歩くしかないのだ。
もしくは、
「俺は学ぶ男だ。こういう時の打開策は一つ、それは道を訪ねる、だ」
以前王都で迷子になった時、ルークはエリミアスに案内してもらう事で無事城にたどり着いた事がある。ただ、この男は気付いていないが、見ず知らずの人間がガジールの店を知る訳がないのである。
しかし、こうと決めれば突き進む男なので、
「んじゃ、まずはあの小屋」
適当に目にとまった小さな小屋に狙いを、いざ出陣。
ボロボロの扉に手をかけ、挨拶もせずに扉を開くーー、
「……あ? なにしてんだテメェ」
そこにいたのは、桃色の髪をした少女だった。
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ティアニーズは青年の顔を見つめ、ただ固まる事しか出来なかった。
どんな理由で、どんな道筋を辿ってここへ来たのかは知らない。そもそも同じ町なので会う可能性も少なからずあるのだが、そんな事を考えている余裕なんかなかったのだ。
青年はティアニーズを怪訝な様子で見つめ、
「なにやってんだって訊いてんだろ」
今のティアニーズには、青年が口を動かしているーーくらいの認識しかない。言葉を言葉として捉える事も出来ず、とりあえず青年の口を凝視。
考え、考え、考えた挙げ句、ティアニーズは行動を起こした。
即座に立ち上がり、姿勢を低くするとーー木の板で出来た壁をぶち破って外に出た。
「な、テメ!」
一瞬、驚いたような青年の声が耳に入ったが、ティアニーズはそれを問答無用で無視。腕に切り傷を負いながらも、そのまま全力疾走を開始した。
とった行動はシンプル。
逃走である。
「逃がすかボケ!」
当然の事ながら、怒声を上げながら青年はついて来る。この男のしつこさは嫌というほどに理解している。この男から逃げるのがどれだけ難しい事なのかも。
しかし、ティアニーズは走る。
落ちているゴミを踏みつけ、適当に積んである木箱を手で凪ぎ払って通路を塞ぎ。
だが、
「無視してんじゃねぇぞゴラァ!」
木箱をダイナミックジャンプで回避し、青年はなおも追走を続ける。
ティアニーズは僅かに振り返り、
「ついて来ないでください!」
それだけ言った。
脳ミソが状況整理を上手くやってくれず、ようやく捻り出せた言葉だった。とりあえず逃げる、走る、追い付かれたら終了。分かったのはそれだけだった。
「だったら止まれや!」
「私が止まったら止まるんですか!」
「止まる訳ねぇだろ!」
「だったら止まりません!」
「だったら追いかける!」
今のやり取りで判明したのは、ティアニーズが逃げるのを辞めるまでこの男は付きまとうという事だ。
であれば、止まる事は出来ない。
捕まったらなにをされるかとかではなく、きっと覚悟が簡単に砕けてしまうから。
裏路地のいりくんだ道をひたすら走りながら、
「ゼッテー逃がさねぇかんな! つか、ちょっとくらい話聞け!」
「話なら走りながらでも良いでしょ!」
「バカタレ! 息継ぎのタイミングが分からなくなんだろ!」
「そんなの知りませんよ! 私は絶対に止まりません、だから追い掛けるのを辞めるべきです!」
「断る! 俺が止まる時はテメェを捕まえた時だ!」
「なら一生止まれませんね!」
「一生追い掛けるだけだっつーの!」
会話は成立しない。
というか、ティアニーズ自身、自分がなにを言っているのか正確には理解していない。すでに十分ほど逃げ続けているが、それでも状況を理解出来ずにいたのだ。
いや、考える事自体が間違っている。
あの男はどこにでも現れる。
なんでとか、どうしてとかではなく、なぜか現れるのだ。
「敵になったと思ったらあんなボロ小屋暮らしかよ!」
「ボロ小屋のなにが悪いんですか! 藁暖かくて良いじゃないですか!」
「残念でしたぁ! 布団の方が数百倍暖かいですぅ! あと安眠出来ますぅ!」
「藁でも安眠出来るもん! お肌艶々になってるもん!」
「なら近くで見せてみろ!」
「その手には乗りませんよ!」
「クソ!」
本気で今の流れでティアニーズが立ち止まると思っていたのか、渾身の『クソ!』が炸裂した。
バカにされている事は分かった。
だが、止まる訳にはいかない。
根を上げそうになる足に渇を入れ、
「大体、なんの用ですか! 今さら話なんてない筈です!」
「話なら腐るほどあるっつーの!」
「なんですか!」
「止まったら教えてやる!」
「なんで偉そうに上から目線になってるんですか!」
「んなの俺の方が偉いからに決まってんだろ!」
分かってはいたが、いつでもどこでもこの男は平気で訳の分からない暴論を吐く。
今までそれを普通だと思い込んでいたが、今この瞬間、ティアニーズは改めて思った。
やっぱりおかしい、と。
「私は話なんかありません! もう敵なんですから!」
「テメェになくてもこっちにはあんだよ! だから止まれ!」
「自己中!」
「んなのテメェが一番分かってんだろ!」
「う……言い返せないのが凄くムカつく!」
「ざまぁみろ!」
息を切らしながら、二人はバカみたいなやり取りを続ける。
右に曲がり、左に曲がり、真っ直ぐ進む。ひたすら同じ景色が続くので、同じ場所をぐるぐる回っている気がしていた。ここがどこなのかは、走っているティアニーズにすら分からない。
それからどのくらい走っただろうか。
体感的には半日ほど走った気分だが、多分実際には三十分ほどだろう。
最近の出来事で安眠出来ていないのと、背後から迫るのがあの青年という事もあり、ティアニーズの体力は底を尽きようとしていた。
しかし、
「どーした、んなもんか! こっちはまだまだ走れんぞ!」
「な、なんで挑発してるんですか! 普通は逃げる方がするんですよ!」
「俺は追い掛けながらでも挑発すんだよ!」
「体力お化け!」
「田舎もんなめんな!」
ティアニーズの逃走劇もここまでだった。
前に進もうとする意識に反し、ゆっくりと足が止まって行く。スピードが段々と落ち、最後には止まってしまった。
止まったが最後、足は進んではくれなかった。
嫌々ながらも振り返り、膝に手を置きながら呼吸を整える。
青年はティアニーズが完全に止まったのを確認すると、
「俺の勝ちだな」
「べ、別に勝負してませんから」
「でも俺が追い付いた。だから俺の勝ちだ」
余裕ぶった態度ではあるが、顔が真っ青である。当たり前の事なのだが、ひたすら喋りながら走るというアホな行動の代償ーーつまり酸欠というやつだ。
青年はフラフラとよろめき、壁に手をついて体を支えると、
「俺が勝った。つー訳で、テメェは俺と話さなきゃならねぇ」
「そんなルール聞いてません」
「たりめーだろ、言ってねぇし今作ったんだから」
「あらかじめ言っておいてください」
「言ったら素直に従ったのか?」
「絶対にいや」
「だろうな」
お互いがお互いを嫌というほどに知っているため、次に飛び出る言葉がなんなのか安易に予想出来てしまう。
付き合い的にはまだ半年に満たないが、やはり似た者同士という事なのだろう。
ティアニーズは額の汗を拭い、
「それで、話ってなんですか」
「まず一つ、なんで敵になった」
「昨日言った筈ですよ。私は力が欲しかった、でも貴方といてもそれは叶わない。だから……だから敵になったんです」
「テメェ、わざとやってんだろ。俺が訊いてんのはそんな事じゃねぇ、なんで力が欲しいのかって訊いてんだ」
「簡単ですよ。この国を救いたいからです、もう傷つく人を見たくないからです。私一人が傷ついて済むのなら、それが一番良いに決まってます」
「……いい加減にしろよ、俺にんな嘘が通用するとでも思ってんのか?」
青年の眉がピクリと反応した。
ティアニーズは知っている。
本気で怒っている顔だった。
「俺を守るためだろうが。俺に傷ついてほしくねぇから、テメェは力が欲しいんだろ」
「……違います」
「もう一度だけ言うぞ、俺に嘘は通用しねぇ。テメェの事は大体分かんだよ」
「嘘です。貴方には分からない」
「分かる」
「分からない!!」
青年の静かな呟きに対し、ティアニーズは路地に響き渡るほどに声を張り上げた。
なにが、なにが分かるというのだ。
選ばれて力を得た人間に、選ばれずに特別な力を持たない人間の気持ちなんて分かるものか。
「もう放っておいてください。貴方と私は他人なんです、これ以上関わる理由なんてないんです」
「お前になくても俺にはある。思い上がんな、俺は誰かに守られるほど弱くねぇ」
「知ってますよ、知ってるから力が欲しいんです! 貴方は強いから、勝手にどっか行って全部を終わらせちゃうから……私の知らないところで傷ついているから……」
「だから、なんだよ」
「そんなの嫌なんです! 貴方が傷つくのも、置いて行かれるのも! だから、私なりに考えて選んだんです!」
守りたい、なんてのはあとから生じたものでしかない。
自分が見たくないものを見ないために、力が欲しかっただけだ。弱い自分を見るのが、認めるのが、怖いだけだ。
しかし、青年は言う。
「んなの知るかよ。テメェの事情なんざ知ったこっちゃねぇんだよ」
どこまでもどこまでも、この青年は理不尽だった。
どれだけ思いの丈を叫ぼうが、積み重ねて来た悲しみを叫ぼうが、辛い過去を叫ぼうが、それを『知らん』の一言で片付けてしまう。
この男と舌戦を繰り広げるだけ無駄なのだ。
どんな事情があろうとも、たった一言でそれらを粉砕する。恐らく、下手に正論を語られるよりも、これが本人にとっては一番効果があるのではないだろうか。
「お前が弱いなんてのは今さらだろ。初めてあった時からだ」
「それが嫌だったんです! 初めて会った人間に簡単に越えられて……そうですよ、ただの嫉妬ですよ!」
「俺は選ばれたくて選ばれた訳じゃねぇ。そもそもテメェが俺に会いに来なけりゃそんな事にはならなかっただろ」
「前にも言いましたよね。私は力が欲しかったと、だからその力をくださいと。あれは本心です、勇者の力が、私は欲しかった」
「……やっぱりか、テメェはなんも分かっちゃいねぇ。勇者の力ってのは暴力じゃねぇんだよ」
「……そんなに現実は甘くないんです」
意思の強ささえあれば、どんな困難にも立ち向かえるーー少女もそう思っていた。
けれど、現実はそんなに甘くない。大前提として強い事が重要なのだ。優しさや気遣いなんてのはあとからついて来るもので、強さがなければ同じ土俵に立つ事すら出来ない。
始まりの勇者だってそうに違いない。
力を得て英雄になったのではない。
力を得る前から、きっと英雄だったのだ。
「強い意思があればどうにかなるとか、諦めなければどうにかなるとか、もうそういう次元の話じゃないんです。強さがなければ、なにも守れない」
「そこが間違いだっつってんだよ。守るために力が欲しい? ちげぇだろ、他人を理由に使うんじゃねぇよ」
「そうですよ、結局は自分のためです」
「ならそう言え。俺の前で善人ぶったって意味なんかねぇぞ」
青年には全てを見透かされている、そんな気がしていた。
実際、見抜かれているのだろう。この青年には悪人と善人を見抜く一種の才能がある。青年を守りたいから力が欲しい、青年に笑っていてほしいから力が欲しい、なにもかも、全て。
誰かを守りたいという気持ちは、自己満足でしかないという事も。
「きちんと言っておくぞ、これは俺が選んだ事だ。魔元帥をぶっ潰して平和な生活を勝ち取る、それは俺自身で選んだ道だ」
「……だとしても、私は貴方が傷つくのは見ていられません」
「知るかんなもん。俺は好きで……いや好きじゃねぇけど、自分で決めた事で怪我してもなんとも思わねぇよ」
「知ってます、貴方はそういう人だって事も。けど、これは私の気持ちの問題なんです。巻き込んだ私にこんな事を言う資格はないけど……嫌なんです。貴方が怪我をするのが……」
心境の変化、というやつだろう。
初めは勇者だから巻き込んで当然だと思っていたが、青年とすごす内にその考えが変化し始めていた。
きっかけは、トワイルの死。
もし、トワイルと同じように青年が死んでしまったらーーそう考えると、もう戦場へ行ってほしくないという気持ちで満たされていた。
青年は息を整え、こちらへと一歩踏み出す。
ティアニーズはそれにあわせて後退る。
「来ないで」
「行く」
「来ないで!」
「行く!」
「なんで来るんですか!」
「んなの俺が知りてぇよ!」
青年が一歩踏み出す度に、ティアニーズは一歩後ろに下がる。距離が縮まる事はなく、今の二人の心の距離を表しているようだった。
そこで、我慢の限界を迎えた。
ティアニーズは拳を握り、腹の底から叫ぶ。
「貴方には関係ないじゃないですか!!」
青年は目を見開き、踏み出した足が止まる。
関係ない訳がない。けれど、こう言うのが精一杯だった。
こんな事で引いてくれるとは思っていない。
むしろ彼の怒りを刺激するだけだろう。次の瞬間に走り出し、容赦のない鉄拳が襲いかかって来る可能性だってある。
しかし、そうはならなかった。
青年は、笑っていた。
呆れた訳ではなく、自然な笑顔で。
「なるほどな、そういう事かよ」
「なにがですか」
「俺も頭ん中ごちゃごちゃしててよ、自分がどうしてぇか分かんなかったんだ。テメェを連れ戻したいって自分もいて、放っておけっていう自分もいる」
それは、予想外の言葉だった。
連れ戻したい?
一瞬聞き間違えかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。動揺を悟られないように表情を強ばらせるティアニーズは対照的に、青年はなおも微笑みながら言う。
「でも、ようやく分かった。俺がなんでテメェを連れ戻してぇのか。スッキリしたぜ、やっぱ悩むなんて俺らしくねぇわ」
言葉の通り、青年は一人スッキリしたように大きく体を伸ばした。肩に乗っかっていた重荷が取れたように、清々しいくらいの笑顔である。
だが、ティアニーズは気を抜くようなマネはしない。
相手がどう思おうが、こちらはなにも解決していないのだから。
「つー訳で、よーく聞け」
「なんですか?」
大きく息を吸い、青年は胸をはる。
人差し指を突き立て、空に向ける。
それから勢い良く振り下ろし、指先をティアニーズに向けると、
「テメェはなにがなんでも連れ戻す!」
裏路地、いや大通りまで響くほどの声量だった。
路地を抜ける風の音も、大通りの方から聞こえる活気も、この瞬間だけは全て消え失せた。
ティアニーズの頬が緩みかける。
理由は分からないが、笑いそうになってしまったのだ。なにがあっても変わらない青年に、恐らく安心してしまったのだろう。
しかし、必死に感情を押し殺した。
青年とは違い、静かな声で宣言する。
「私は、絶対に戻りません」
お互いの意見は真っ向から対立した。
今まで何度も同じように喧嘩をした事があったが、今回はそれとは訳が違う。いつもの口喧嘩ではすまない。
こういう時、青年がどんな行動をとるのか。
ティアニーズは、恐らくこの世界で誰よりも知っている。
青年は口角を上げ、
「ならぶっ飛ばす。殴って引きずってでも連れ帰る」
「今回は、この瞬間だけは絶対に負けません。たとえ貴方を傷つける事になったとしても、私はーーもう戻れない」
「覚悟は出来てるみてぇだな。よーし、歯ァ食いしばれ、渾身のグーパンくらわせてーー」
片方の掌を開き、そこへもう片方の結んだ拳を叩きつける。
パン!と甲高い音が鳴ったーー青年の左肩を、なにかが貫いた。
「ーーは」
小さな石ころのような物が地面に転がっていた。赤い液体をまとい、コロコロと転がって壁にぶつかる。
その直後、青年の肩から血が溢れだした。
服を真っ赤に染め、音をたてながら地面に落ちる。
そこへ、男が現れた。
いつからいたのかは分からないが、ティアニーズの背後から現れた。
「勘弁してくれよ、もうコイツは俺達の仲間なんだぜ?」
奇妙な笑い声を上げながら、ティアニーズの横を男が通過する。
表情を濁らせ、苦痛に満ちた顔で肩を抑える青年に向け、
「また会ったな勇者。今回は心の底から笑ってるぜ」
悪人はーーヴィランはそう言った。