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太陽のカケラ  作者: のえる
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影武者1

「出してくれせめてケルレンだけでも」


戦が起こっているハンガイ族とオタル族とイェニセイ族とで


大部族2つとそれに匹敵する部族、


3つの部族の間で戦が起きると言う事は


モルドル国全体が戦に巻き込まれると考えても間違いない。


東の大部族と西の大部族と


そして北に大きな勢力持つ部族がぶつかっているのだから。


フールンはそこで気付いた。


(・・・・それだけではない)


チーフォンの母の出身部族は南の部族チュルク族


戦となるとチーフォンの母の部族、チュルク族も黙っては居ない。


モルドル国の東西南北全てを戦いに引きずり込んで何をするつもりなのだろう?


フールンはゾッとした。




「ケルレン、私達はなんとしても戻らなければ・・・・・


もし、私が戻れないとしても君だけでも」


ケルレンの頬に触れてフールンは驚いた。




「ケルレン!?・・・・・・どうして?」


少し前まで高い熱を出して燃えるようだったケルレンの身体が今度は


冷え冷えとして来て顔が血の気を失い青白くなって来ていた。




「ケルレン!」


必死でゆするものの焦点を結ばぬ瞳のまま虚空を


見つめ何の反応も示さない。


フールンは説明出来ない衝動で自分の上着を脱いで


ケルレンを包み込むと膝の上に抱え上げた。


勘としか言いようがないがこの部屋の物に触れさせてはいけない気がした。


フールン自身の意識も時間が立つにつれ朦朧として


身体の床に付いている所から体中の力が奪われている感覚があった。






(ケルレン・・・ケル・・レン)


ガラス玉のようになったケルレンのセピアの瞳を覗き込む


ポツリポツリとケルレンの額に頬に水滴が落ちる。


何だろう?と考えて、ああ、これは自分の涙なのだとフールンは気付いた。


このまま私達は何のためか分からない目的の為に力を奪われて


朽ち果てるのだろうか?


考えてケルレンを抱きしめる手が緩みかけるけれど


せめて、自分が力尽きるまではと再び力を入れる。




「・・・・ケ・・ル・・・レン・・。」


身体の中の呪いも嬉しそうに暴れまわる。


フールンは口の中のむせ返る血を吐き出し食い破られているような


(いや、ここまで来たら本当に食い破られているのだろう)


激痛に耐えてそれでもケルレンを離すまいと抱きしめていた。




(私の吐いた血・・・・それから、零れた涙も


地面で光っている・・・・。)


薄っすら考えて、考えたときには床に倒れ付していた。


何とかしなければ・・・・・フールンは焦る


この光の意味は失われる体の力は何の意味があるのか


朦朧とする意識の中必死で考え


流れる血をそのままに床を這いずる。


震える手で自分の愛剣ヴェルジネ<聖女>を握り締める。




霞む瞳で眼を凝らす




「・・・・・・混沌の・・・・深紅の魔・・王・・・


傲慢・・・、嫉妬・・・、憤怒・・・・、怠惰・・・・、


強欲・・・、暴食・・・、色欲・・・・。


そして・・・殺生・・・・、偸盗・・・・、邪淫・・・・、


妄語・・・、綺語・・・、粗悪語・・・、


離間語・・・、妄貪・・・、瞋恚・・・、邪見・・・。」


ゆるゆると読み取れる文字を読んでいく、




「・・・魔法陣・・・・?


・・・・・魔族の・・・・銀・・・の・・・・王子・・・の召喚・・?」








ケルレンだけはと倒れた自分の身体の上に引き上げ


如何すべきか何が出来るのか


フールンは必死だった


盗み見るように傍に居る銀色の髪の女性を見て


時々意識が飛びそうになりながら


ところどころの地面を掻き毟り自分の血で汚した。












(ケルレンだけでも誰か助けて・・・


彼女はもう、自由になっていいはずだ


供物が居るなら私の全てを捧げて良い・・・・・


過去も未来もこの血も身体も心も要らないから)


月の女神よ


炎の精霊神、先祖の、戦士達の御魂よ




ルテル母上、ベクテル叔父上、コンラト義叔母上


チーフォン兄上・・・・。




薄れる意識の中フールンは願った。






意識が完全に闇に沈みこんでしまう前に


ようやく声が聞こえた。






(どうしたい?


望みを叶える為にお前は何を犠牲にするのか)・・・・と




フールンは、その声に向かい言った。

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