母の面影1
「・・・・ケルレン・・・?」
ケルレンはフールンの腕で抱きしめられたまま
眠ってしまっていた。
熱が上がってきたのだろうか?
フールンはケルレンの額に頭を当てた。
やはり随分と高い
異父兄上ルーフェンからケルレンを連れて逃げたのは
良いが、いい加減に出て行かないと不味いし
ケルレンも寝床で寝かせなければならない。
「異父兄上に見つからないようにまずは
ハンガイの者を呼ばなければ・・・・・ケルレン、君を守るから」
そっと近くにある布を手繰り寄せてその上にケルレンを寝かせる。
優しくケルレンの額に掛かる前髪をそっと横にどけて額に口付ける。
本当は随分昔からそうしたかった。
フールンは自分自身がケルレンを家族とか、兄妹以外に
恋愛対象としても好きなんだと早くから自覚していた。
でも、一族の為の許婚セレンゲを捨てて
ケルレンを取る訳にはいかないと思ったし、
セレンゲを第一夫人にケルレンを第二夫人になどという
器用な真似も
(長兄チーフォンがケルレンを好きな事を知っていたし)
出来ないと思っていた。
けれど、今、自分が切羽詰ってきて
ケルレンにも一緒に居たいと言われて
やっと素直になれた気がする。
「・・・離れたくないんだ・・・大好きだよケルレン」
「何をしている・・・・フールン。」
不意に後の扉が開いて
異父兄上ルーフェンが立っていた。
「一緒に居させてください
彼女に手を出すのなら私も一緒に出て行きます。」
フールンは、しかし、とても落ち着いた瞳で声でルーフェンにそう言った。
ルーフェンは、怒りで目の前が真っ赤になるかと思った。
自分の愛する大切な弟フールン
母、ルテルに似た只一人の家族、
それが自分を裏切るのか、と、いっそのこと
一緒に殺してしまおうかと思った。
憎い憎い、ベクテルの子。
平穏だった生活、母ルテルを自分から引き離すきっかけとなった
ベクテルの子。
「フールン、お前まで奪おうと言うのか
ベクテルの子が!」
「ベクテルは、我が叔父です。
そして、ケルレンは、私の従妹、
オタルの血をひくケルレンは、貴方の一族では、ありませんか」
フールンの顔が母、ルテルに重なる。
母は、美しい人だった。
そして、優しく強い人だった。
「一族の中で争うなんて・・・私達は、家族なの」
母は、そう言って父である長の元へ
そして、オタル族中も駆け巡って説得しようとした。
ベクテルの一族ハンガイ族にも行って
橋渡しとなるべく、
長、ウリャスタイの妻になることを決めてしまった。
私は、まだ小さい幼児でどうして急に母上が居なくなったのか
理解できなくて、そのまま母上は帰って来ないまま死んだのだ
と言うことだけ後で理解した。




