フールンが好きだから2
「・・・・・・ん・・・・・!?」
ガバッと勢い良く起き上がり周りを見まわしてみる。
身体に掛けられていた布団が、パサリとそれに合わせて
寝台に落ちる。
・・・・・ここは何処?・・・・
遅れて頭の芯がクラッとして再び寝台に倒れこむ
傷の痛みもジワジワと感じてきた。
「・・・・・急に・・・・・・動くな。」
不意に寝台の下から声が聞こえガンガンする頭を押さえながら
其方に瞳を向ける。
ゴソゴソと荷物かと思っていた塊が毛布を被っていた
チーフォン兄上だと気付きもう一度寝台に視線を戻す。
・・・・寝台の上に枕が二つ・・・・・・
周りをゆっくりもう一度見まわしてみると、どうやら
ここはチーフォン兄上のゲルのようだ・・・・
朝、チーフォン兄上のゲルで目覚めたのは初めてだった為
気付かなかった。
一瞬まさかと疑い頭に血が上りそうになるが、
落ち着いて尋ねてみる。
「・・・・・・・・チーフォン兄上・・・・・ここに居たのは
兄上だけですか?」
「・・・・・・え・・・・あ・・・・い・・いや・・・お前も居たよ・・・・」
いつもはさっぱりしているくせに、妙に歯切れ悪く
乾いた笑いをするチーフォンに重ねて
「・・ふざけてないで・・・・私に添い寝してくれていた人は、兄上ですか?」
「・・・・え・・・・あ・・・・うううう・・・・」
「・・・・・・・」
無言で見詰め返していると、
「・・・・・・・いや!!・・・・お前に一晩中付いていたのは、フールンだ!」
決心したように真剣な瞳ではっきりと
そう言うのを聞いて
息が詰まった。
「・・・・フ・・・・・フールン・・・・!」
駆け出そうとするが、頭がグラグラして身体が重い上に
ズキリと傷口が痛む。
「だから、まだ動くなって・・・物凄い出血していた上に
熱まで出てるんだぞ・・・!・・俺のゲルまで来るのにやっとだったんだから・・・」
「・・・・?!・・・兄上が私を運んでくれたの?」
しぶしぶと寝台に戻りながら
チーフォンのゲルまでがやっとと聞いて自分を抱えて運んでくれたのが
7歳も離れた上に年相応のチーフォンだとしたらそこまでがやっとなのは
不思議だと思って恐る恐る尋ねてみる。
「・・・・・いや・・・・それも・・・フールンだよ。・・・意識失ってたくせに
お前俺に抱っこさせないんだもん!・・・頑固者が・・・」
・・・良く見ると何と、瞳を細め愛しそうにケルレンを見詰める
チーフォンの両頬(昨日殴ったのは片方だったのに)に
少し赤味が残っていた。
「・・・ね・・・・チーフォン兄上・・・・私、自分のゲルに戻りたいんだけど・・・・」
「・・・・ああ・・・・もう少ししたら、送ってやるよ。
今、戻ったら親父に叱られるぞ!・・・・黙って飛び出してって。」
思いきり殴った上にきっぱりと振ったケルレンを
何も言わずに何処までも優しく見詰めてくれるチーフォンに
心の中でちょっとだけ感謝を捧げるが、
「送っててやる時は暴れるなよ・・・・」
少しだけ見とれそうな微笑を浮かべてゆっくり近付いてくる
チーフォンの顔に寝ていた身の危険を感じて反射的に殴る。
「・・・・・!!・・・・た!・・・・やっぱ気付かれたか!?
・・・・後もうちょっとで口付け出来たのに!!」
やはりチーフォンは油断なら無い兄上だった、
でも、ケルレンの心は少しだけ明るくなっていた。