後継の妻8
「眠っていたのか・・・・起きて来なくて良いお前の身体は
随分弱っているのだ。・・・・・おのれ・・・・八つ裂きにしても足りなかったな」
「・・・・・異父兄上・・・大丈夫ですよ、様子を見に来てくれたのですか?」
激しく言い募るルーフェンに対して
フールンの苦笑する雰囲気が伝わってきた。
「必ず治るぞフールン、お前の呪い・・・」
「異父兄上・・・少し外に出ましょう」
呪い?
何の話だフールンの呪い?
「お前以外のハンガイ族後継など認めんぞ
族長になるのは、お前だフールン!
お前の居ないハンガイ等に興味は無い・・・ハンガイがお前を捨てるのならば
我がオタルに来るが良い!我が元でその身体癒すが良い。」
「・・・・・異父兄上・・・一族を預かるものがそんなことを言ってはいけないですよ
異父兄上は、早く一族に戻られた方が良い。長く空けてはいけません」
フールン!
と声がした後、ドタンッとベットの上に倒れ込む音と衝撃がして
ケルレンは声が出そうになるのに堪えた。
「・・・・・何故笑う!どうしてこんな時にも笑ってそんな事を言うのだ!
お前は、我が母が残してくれた唯一の肉親
母の面影をこんなに宿す大切なお前をこの私が必ず治してやる。」
「・・・・異父兄、・・・ゴホッゴホゴホッ・・・・」
激しい咳き込みが聞こえてフールンの苦しみを物語るように
ベットがギシギシ揺れ動く。
(フールン!)
「誰か!医師!呪師!居ないのか!?フールンが・・・・・
何故居ないのだ誰も!」
ルーフェンの人を呼びに出てゆく足音が響いて
だるい身体を急かして
ケルレンはベットの下から這い出しベットの上で蹲って
咳き込むフールンを見た
血が出ていた。
口から頬・・・瞳から
死ぬ、フールンが死んでしまう
もう、大丈夫なんてフールンの言葉も笑顔も信じない。
「フールン、フールン、フールン!!!」
嫌だ嫌だ
触れようとするケルレンを止めてフールンは、
自分の口元の血を拭い
「今のうちに行きなさい!
自分の帰るべき所へ帰りなさい。」
フールンの向ける鋭い瞳にケルレンは大きく首を振った。
(こんな時もなんて自制心
どうして!どうしてフールン微笑んで、誰にも頼らないで
人の事や一族の事ばかり)
「嫌だ!フールン!もう離れたくないよ
ルーフェンに捕まっても良い、ハンガイに長に、オタルに
捕まっても良い!どうせ、イェニセイ族でも
縛られているんだから・・・・・・・フールンが居るなら良い」
こんなになっているフールンを置いてけない
「・・・・・・君の姉上は?君の味方をしてくれる一族の者達は?
イェニセイ族後継と約束があるはずだ」
「チョイルンは、ハンガイに浚われているって
一族はウルトが見てくれているレンヤンがあの子が育ってくれたら
オタルを継いでくれるそれまで私は見守らなければと
セレンゲをフールンの元に返してあげなければと
外からフールンのハンガイを守らなければならない、イェニセイ族後継の
リューランも形はどうあれ慕ってくれているその期待に応えたい」
「・・・・だったら」
フールンの言葉を無視してしがみつく
「・・・・・でも、どうしてかな
今、その全てがとても遠く感じる。・・・・私、とても疲れたよ
何もしがらみの無い只のケルレンになりたい
すごく疲れたんだ。・・・フールンはまだハンガイ族が大事?そんなに
なってるのにまだハンガイ族が一番大事?・・・・私達一緒に逃げられないの?」
普段のケルレンだったらこんな事は言わなかっただろう
熱に浮かされていたのかその他にも何かあるのか
フールンにしがみ付いて
フールンの名前を繰り返す。
身体は高熱で熱くなってどこか痩せて顔色が悪かった。
フールンの耳にバタバタとルーフェンの帰ってくる音がする。
「こっちに」
グイッと急いで自分の口元や頬の辺りの汚れをふき取って
フールンはケルレンを引っ張る。
よろめきながらも付いてくるケルレンを見てフールンは苦笑し言う
「・・・・・抱えて上げられなくてごめん」
黙ってケルレンは首を振った。
「・・・・・・ケルレン、君が大事だよ
前に言ったと思うけど一番大切だ私、フールンにとっては
何より一番大切だ。・・・そして、ハンガイ族後継フールンにとっては
ハンガイ族が存在意義であって生まれた理由で生きてゆく意味、
一番大事だ。」
フールンに連れられて来た見た事も無い小部屋で
ケルレンは、フールンに切ない声でそう言われ
震える腕でギュッと抱きしめられた。
「・・・・・どちらも捨てられない・・・・どちらも無ければ
私ではなくなってしまう・・・・
もし、もしも私の願いを叶えてくれるのなら
君が傍に居てくれるのを願ってくれるのなら・・・・・
私の子どもを生んでくれないか?」




