協議会4
「セレンゲ殿」
俯いていたセレンゲは目の前に立つか弱そうな中にも凛とした
美しさを持つその麗人を見上げた。
「・・・・チョイルン様・・。」
この人はセレンゲの許婚であるフールン兄様のハンガイ族と
敵対する部族イェニセイ族長の妃の一人でチョイルン
と言う方だったなと思った。
「疲れていませんが?・・・・・休みなしで来たので・・・
・・・その・・・ずいぶん疲れたでしょう?」
ケルレンと似ている暗い茶色の瞳が揺らめくのに
セレンゲは、ケルレン様もチョイルン様も
とても私を労わって下さるのだな私は、敵方から
奪って来られた者の筈なのにと首を傾げる。
(ケルレン様とチョイルン様って不思議に雰囲気似ているのですよね
時々、二人だけのときに何だか・・・
なんとも言えない空気が漂ってますし・・。)
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・何か?」
無言で見上げているセレンゲに対して
やわらかく微笑みかけながらチョイルンが聞いてくる。
慌てて首を振ると
「・・・・・・あの・・・・・・ちょっと気持ちが悪くて
・・・・果物・・オレンジとか何か・・。」
苦笑してすぐに頷くとチョイルンは自らセレンゲの為に
探しに行ってくれた様だ
(誰かに頼めば良いのに・・・・族長の妃自らが動かれるなんて・・)
不思議なことに周りに居る女達もそれを止めようとも自分が
主に代わって取ってこようともしないようだ。
「・・・・・フールン兄様・・・。」
お会いしたことは無くても小さな頃から許婚で
数ヶ月前に少しだけ会えた素敵過ぎて顔も十分に見れなかった
セレンゲの夫になる人を懐かしく思い出した。
そんなに離れていたわけでは無いと思うのに
「・・・・・私を妻をして迎えるけど好きな人が居るから
私を好きになれないっておっしゃった。」
フールンが説明した長い言葉を短くまとめてセレンゲは
再び数ヶ月前のことにしみじみ哀しくなって涙が出てきそうになる。
(フールン兄様・・・・好きな人ってどなたなのかしら
私なんてやっぱり全然足元に及ばない
素晴らしい方なんでしょうね・・)
じんわり涙が滲んでしまいめには
俯いていた瞳からポツリポツリと落ちてきた。
「・・・・果物・・・・とは言いましても・・・」
何か果物は無いかと部屋を出たものの
もともと草原に囲まれる遊牧の土地に果物の類は
なかなか無い物で部族から持って来た食料を見せてもらうが
干し肉、小麦粉・・・干し魚、いちよう干し葡萄等はあるけれど
生の果物、木苺のようなものや異国から送られて来た
杏や李なんてものもあったがセレンゲが口に出した
オレンジは見る限りではどうやら無いようだ。
「・・・・・オレンジとか・・気持ちが悪い時に欲しい果物と言うことは
生の物なのでしょうね・・・・サラッとそんな物が口から出てくるなんて
さすがハンガイ族の食料庫バイカル族。」
もっともオレンジこそ無いもののイェニセイ族やオタル族クラスの
大部族でも無い限りわざわざ取り寄せたわけでもない
生の果物の杏や李があるということは内陸の草原の国としては
とても珍しくその勢力の強さを思わせることではあるけれど
と、代わりとしてチョイルンは、
木苺、杏、李を持ってセレンゲの許へ戻りかけた。
「・・・・・なあ!・・・ちょっと聞きたいんだけど良いか?」
明るい声が聞こえて呼び止められたチョイルンは
振り向いた姿のまま
思わず凍りついてしまった。
「・・・・おっと・・・他の部族の所来て名乗らないとな
俺は、ハンガイ族が長ウリャスタイの長子チーフォンだぜ!
ちょっと会いたい奴が居るんだけど・・・・・会わせて貰えないか?」
ニカッと大らかな微笑を浮かべてたった一人でチーフォンは、
休戦中とはいえ敵対するイェニセイ族のエリアで立っている。
「・・・・・・・チーフォン・・・殿・・。」
それ以上あまりの驚きで何もいえないチョイルンだったが
名前を呼ばれてん?と言いたげな表情で首を傾げて
こちらを見ていた視線が妹ケルレンとよく似たセピア色の瞳に
止まって少しチーフォンの口がポカンと開いたのに
ようやく冷静さを取り戻して
「・・・・・・久しぶりです。・・ハンガイ族のチーフォン殿・・
ケルレンと・・・セレンゲ殿に会いに来たのですね・・?」
「・・・・・女装・・・・?・・・・・・って・・・・・あれだよな?
一度戦のとき会ったケルレンの本当の兄弟の長子チョイルン
じゃなかったのか・・・・?・・・・・めちゃくちゃ女っぽかったけど
実はやっぱり女だったのか?やー驚いたなー!うん、久しぶりだぜ」
ニカニカとあっけなく元の調子に戻ってバンバンと
肩でも叩きそうな勢いでチーフォンはそう言っ




