無力2-1
「ケルレン様!」
半分遠のいている意識の中で
誰かの声が聞こえる。
そう。ずっと昔、まだ私達が小さかった時
私をそう呼んでくれた人達が居た。
乳母や、じい、フールンと共に
大切に愛されていたと思う。
「フールン様、ケルレン様」
はっきりと二人を分けて私たちを呼んで
大きな柔らかい胸で乳母やは抱き締めてくれた。
私達は不安も何も無くて
乳母やの腕の外の世界のことなんて
幼い私達は、考えても見なかった。
断髪式(乳児を抜け幼児となったと認められる儀式)前の
長い髪を互いに触りあって遊んでいる
私達を優しい瞳で見守りながら一目一目愛情を
持って乳母やは私達の服を縫う。
後継の乳母という立場の彼女なのに
服はもちろん帽子や手袋や靴下だって
彼女が作ってくれた。
「そろそろお食事の時間ですよ」
そして、そう言って用意してくれる食事もまた
彼女が作ってくれていた。
「「うーやぁ!たべしゃせて~」」
きゃっきゃと笑いながら甘える二人に
「またそんなに甘えん坊なことを仰って・・・
乳母やは困ってしまいます。」
はにかんだ、でも嬉しそうな顔でギュッと抱き締めてくれる
腕に
「よろしいですねじいもご相伴下さいな」
いつもゲルの入り口に居て時々遊んでくれる髭の戦士が
そう言って私達から嫌いな物を食べさせられたりしながらも
グリグリと大きな手で頭を撫ぜてくれるのにも
私達は溢れる愛情を感じていた。
大好きだった・・
愛されていた。
血を吐いて死んだ乳母や
体中傷だらけで息絶えたじい
私達を護る為に
私達は彼女達の命を貰って生きている。
フールン私達は彼女達の命の上で
愛情の上で今生きているんだね?




