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太陽のカケラ  作者: のえる
46/105

無力2

・・・・届けなければ・・・

この子を・・セレンゲをきちんとチョイルンの元に・・


他の誰でもなくフールンでもなく、チョイルンに



脂汗が額から流れ落ちて

一向に治まらないどころか揺れる度に痛みが増してゆく

自分の体を気力で馬にかじり付かせ

人質としてやっと捕まえたセレンゲを乗せながら

必死で炎を避けながら馬を先に進ませていた。


「・・・・!!?・・・・・」

ほんの僅かな違和感を感じて急にケルレンは馬を止める。

(馬のひずめの跡がここにずいぶん残っている・・・・?)

バラバラに逃げたはずの者達がいつのまにか炎によって

森を抜ける道が狭められたのかも知れない・・・


「網を張られていたら一網打尽だ・・・・・」

滴る汗を右の袖で拭った後、ぐったりとしてきているセレンゲの

汗もセレンゲの服の裾を使って拭ってから

炎の光に照らされた森をしみじみと見回すと

ほとんどもうここしか道が残されていないようで

ケルレンは決意を固めて前方を見据え


「少し・・・辛いかも知れませんが許してくださいセレンゲ」

少しでも負担の少ないようにと顔の薄布をセレンゲに被せて

一気に馬を駆けさせようとしたその時

突然横手から黒い影が走りケルレンの緊張が高まった。










ハンガイ・オタル・バイカル・チュルク連合軍の

勝利で戦場の勝敗はついた。



・・・・のだが・・・・・



「・・・・解け!解けよ!!」

しかし闘神のごとき活躍をしたハンガイ族長の長子

チーフォンは自らのゲルの奥にてグルグル巻きに縛られていた。

口に付けられていた布は何とか外し

煩く騒々しく喚き続けていたが


ハンガイ族を始めとして殆どの者がチーフォンと同じ気持ちだった。


「おかしいぜ!!・・・・捕虜ってたって

そこまですることねーじゃねーか!!・・・絶対駄目だ!

族長!!・・・・おい!族長ってば!!」

再び叫んでから悔しそうにチーフォンは下を向く。


「族長・・・・おやじ・・・それに、オタルの若長・・

頼むからよ・・頼むからフールンの父親と兄貴っていうのなら

・・・やめてくれよ・・・」

俯いたまま掠れた声で懇願の言葉を零す。


「・・・・頼むよ・・・」

チーフォンの居るそのゲルはまだ太陽が沈んだわけじゃなく

確かに天窓から日の光が入っているのにとても薄暗くて


族長の長子でありながら決定を覆す力も

オタルの若長に逆らうことも出来ない自分が辛かった。


フールンは傷つくだろう、自分の居ない時に

初陣の初めて自分が指示した戦で・・その後で行われたことを

知ったら。





『         ・・・・・!!!!!』


離れたゲルの中にいるはずのチーフォンの耳を

数々の悲鳴が木霊しては留まってゆく。


これ以上聞きたくなくて、でもせめて受け止めてやらなきゃならないと

何度も何度も頭を振って逃れたくなる心を振り払い

きつく閉じていた瞳を開けてチーフォンは叫ぶ


「・・・・・俺は認めない!誰が認めても長が認めたことでも

俺はオタルの族長ルーフォンのやり方を認めないからな!!」

・・・・・残忍な男・・・・・





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