戦の中で3
(草と土の香りがする・・・・)
そういえば、まだ雨季だったんだな
フールンは曇り空を見上げ戦とかけ離れた
緩やかな雰囲気に戦場と言うのに少しだけ心が和んだ。
ここは、静けさと戦士達の雄たけび、太鼓の音が交じり合って居た。
「・・・・・・セレンゲ達の避難は終わったのでしょうか?」
誰とも無く呟くフールンの声に
すぐ隣で騎乗している父、ハンガイ族長ウリャスタイが
無言のままチラリと見る。
「・・・ああ・・・・・もう終わったと思うぜ?・・・
あちらには選りすぐった100名ほど残してある
牛や羊達と一緒に待機してるだろ?」
チーフォンの言葉を瞳を向けて聞いていたが
前方に戻して小さく息を吸い込むと、
手が震えているのが分からないようにと強く手綱を握り締め
遠くに見えるイェニセイ族を見つめた。
「・・・・・そうですか・・・・」
(敵陣からなんの名乗りも無かった)
敵同士と言っても名乗りあうのが草原の礼儀、
それがなかったと言う事はどう言う事なんだろうと考えつつ
静かに頭を巡らす。
イェニセイ族は、オタル族とほぼ同じ数の戦士がいるはず
目に見える数は約1万・・どこかに残りの戦士を
潜ませているのかも知れない。
(うかつに此方から攻めていけないな・・・)
「・・・・とにかくセレンゲと女子供、馬や羊達を
気にしていないといけないですね?」
「ああ・・・・・・奴らは・・・・ハンガイとバイカルの
同盟を阻止する為に来たんだろうからな・・・」
チラチラとチーフォンはフールンを伺いながら
続ける。
「・・・セレンゲを誘拐したり・・・殺しちまったら一発だからな~
・・・戦するのに、まず糧食奪うしな~」
チーフォンの方に視線を戻し静かに笑う
(ケルレンが向こうに付いたこと、
イェニセイ族に、ケルレンの肉親が居たということを
気にしてるんだろうか?・・・・・・私に衝撃を与えてはいないか?・・・・と)
「フールン様、敵の本隊は、同じ位置に陣を構えたまま
依然動きません・・・・・」
スッと馬に近づいてきた物見の男の姿をフールンは
前方を見つめたまま一つ頷いて視界の端に入れ
報告を受ける。
今は・・・・・此方が押しているけれど・・
何か思惑があるのか?
時間稼ぎか?
色々な考えが頭に浮かんでは消えてゆく。
「・・・・負けませんよ。」
イェニセイ族にか、ケルレンの姉チョイルンにか
そう呟きフールンは新たに命を下した。
父、ハンガイ長ウリュスタイと
兄、一族の闘神チーフォンと
相談して決めた戦略を実行することとした。
「・・・1,500前へ・・」
フールン達は、相手の隊をおびき出すために兵を追加した。
うわあああああ!!
イェニセイ族の方からも3,000繰り出され
両軍のうなり声と喚声と剣のぶつかる音が聞こえると
次にフールンはさらに、3,500を繰り出した。
私は、ハンガイ族の後継、成人の儀の前より
魔法剣を与えられし、草原のハンガイ族の戦士フールン
ハンガイ、オタル、バイカル、チェルクの戦士を纏めるもの。
けして・・・・・負けたりはしない・・・
多くの命を預かるものとしてけして負けられない
・・・たとえ君だとしても・・・。




