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太陽のカケラ  作者: のえる
35/105

出戦5

「フールン・・・・・どんなことになっても・・・

敵になっても・・・・大好きだよ・・・」

ケルレンの掌の上に、ずっと幼い頃からつけていた

左の耳の太陽のカケラ石が乗っていた。

二つに分け合った片割れを持つ人が目の前に居るかのように

優しく囁き掛けると一つ口付けを落とし、鎖を付けたそれを

胸元へと仕舞った。


「第一の目的は、ハンガイの婚儀を行わせてはならない、

ハンガイと現オタルに更に、バイカル族を加えさせないと言う事です。」

チョイルンがイェニセイ族と、チョイルンとレンヤンの旧オタル族の戦士

の一万百に話しかける。


「現オタルにこれ以上力を与えてはなりません!」

哀しみ苦しみながらも自分が守ろうとしていた

ハンガイ族の、フールンの婚儀を阻止するために

今、私は居る・・・そう考えるとケルレンはとても不思議な気がした。


「さあ、行こう・・・・・バヤル<嬉しさ>」

(ハンガイと現オタルと戦う為に・・・)

ケルレンは、チョイルンから与えられたバヤル『嬉しさ』と名付けた

穏やかなその馬に乗って戦の場へと瞳を向けると

チョイルンの元へと馬を進めた。


「・・・・ケルレン・・・・」

旧オタル族の戦士の下に戻ってきた姉のチョイルンも馬に乗ったまま

微笑を浮かべてケルレンの元へと進んできた。


「チョイルン」

「・・・・・本当にしょうがない子なのだから・・・

でもね・・・私はとても嬉しい・・本当に嬉しかったの・・・」

微笑を苦笑へと変えてフワリと手に持っていた薄絹を

ケルレンの顔を隠す覆面のように被らせる。


「・・・・チョイルンこれはどう言う事ですか?」

「ケルレン・・・・貴方の顔はハンガイの後継に瓜二つ

でしょう?・・・・・混乱を避ける為に・・ね?」

ケルレンは、首を傾げてチョイルンを見上げる。


「・・・混乱?」

感傷かもしれないだけど、

チョイルンは、不思議そうな顔で見上げる今だ幼さを残すこの戦士を

裏切り者としてハンガイの前に晒したくなかった。


「これはね?・・・・あのサフラの薄絹なのよ?」

チョイルンは、悪戯っぽくクスリと笑って淡い黄緑の布に包まれた

妹の頬を挟み見上げてくる瞳を見つめ返す。


「はあ・・・」


「さあ・・・・共に参りましょうか・・・・?」

優しく問いかけるチョイルンにケルレンは深く頷いた。


「・・・・あの・・・・・・チョイルン様・・・」

その時、後ろからおどおどした声が聞こえた。









「ドクシィ・・・・行きたいのかい?

あの子の所に・・・・・・・」

フールンとケルレンに与えられた馬が

もう一人の主を恋しがるように小な嘶きの声に

優しく囁く。


(私も行きたい・・・・ケルレンの所に・・)

クスリと微笑みを浮かべると鬣をゆっくりと撫ぜ


「・・・・・共に来てくれるかい?

・・きっと戦場で会える気がするから・・」

そう言ってフールンは、戦場に向かった。







手綱を握る手が少し震えていた。

振り向くと数万の戦士達がフールンの一挙手一投足

に注目している。


ハンガイ族の後継としてフールンは一族を率い

兵力を貸すと言う形で更には、

異父兄である現オタルの若長より兵権を委ねられている。


実際に采配するのは、隣で騎乗している

父、ハンガイ長ウリャスタイなのだが

オタルの若長ルーフェンがフールンにでないと

戦士を貸さないと言ったのだ。



「1500前へ!」



戦士達が戦闘の興奮に雄たけびを上げた。


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