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太陽のカケラ  作者: のえる
34/105

出戦4

「嫌だよ~!行かないでケルレン・・・

僕のとこ居てよ~!」

たどたどしい口調で泣きながらしがみ付いて来る

レンヤンをたまらない気持ちで振り切ってきた。


連れては行けないとはいえ、

こんなに素直に懐いてくれるレンヤンを置いて行くのは

なんとも罪悪感を感じた。





「ケルレン・・・!貴女!」

チョイルンの、姉の陣に背後から入ったケルレンは、

「戦に加えてください」と言った瞬間

チョイルンに頬を叩かれた、ちっとも痛くはなかったけれど

叩いた後ギュッと強く抱きしめてくれた

チョイルンの腕に


「馬鹿・・・・馬鹿ね・・・戦に来るなんて・・・

正面きって敵対しに来るなんて・・・馬鹿ね・・・」

ひとしきり馬鹿と言った後に


「ごめんなさい・・・痛かった?・・・叩いたりして

ごめんなさいね?ケルレン。」

温かい言葉に目頭が熱くなった。





・・・・そうして、ケルレンは

出戦することとなった・・・・。





「・・・ケルレン、貴女・・・・どうしたの?

その姿・・・?」

チョイルンが抱きしめていた妹の姿を改めて見てみると

所々服が破れ、引っ張られ、頭もグシャグシャになっている。


「・・・ああ・・・ちょっと・・・その・・・皆さんが・・」

「・・・皆さん・・・?・・もしかして・・?」

引きとめようとした一族の人達を主な戦士たちは

戦に出ていなかったとはいえ力ずくで

振り切って来たのだった。


「・・・・男の方達が止めてくれてよかったです・・」

「・・・・・フフ・・・貴女は、女子供には優しいものね・・・?」

止められてもみくちゃになった時のことをケルレンは

思い出し

「・・・・でもですね・・・・

お年寄りの方が沢山でしたのでちょっと困りました。」

少しだけ疲れた顔をした。






「フールン!お前も戦に出るのか!?」

フールンが、自分の陣に向かおうとしている時に

不意に呼び止められた。

ゆっくりと振り向くと、


オタルの若長、ルーフェンが黒い髪をかき上げながら

ムスリとした表情でフールンを見ていた。


「・・・・はい・・・・異父兄上・・。」

「ウリュスタイには、お前の他に

長子チーフォンをはじめ4人も男子が居るだろうに」

ルーフェンは、そっとフールンの頬に髪へと

触れ顎を持ち上げる。


「母上に良く似たその顔、毛筋程も傷つけるな!」

「・・・・・異父兄上・・・・私は、ハンガイの後継です。

・・・それに、兄弟のうち成人しているのは、

私とチーフォン長兄と後お一人の3人だけで、

後のお二人は、末だ成人しておりません。」

「・・・・・まったく・・何故成人させておかなかったのだ!」

いらだったようなその言葉にこっそりと

ため息を付く。


フールンが、婚儀のために、兄達を差し置いて成人したのだ。


「異父兄上・・・・では、参りますので・・」

失礼に当たらない様にそっと離れると一礼をして

陣に向かう。


「前線に出るな!・・後ろに居て・・・・傷を付けるな!」

フールンは、ルーフェンの言葉に、

振り返りにっこりと微笑みかけると

足早にウリュスタイの元に向かった。




「・・・・・ケルレン・・・

もしかすると・・君はもう戻ってこないかも知れないね・・」

頭上にサンサンと光を降り注ぐ太陽を見上げながら

フールンは切なく言葉を零した。





「・・・・君が遠い・・・けれど・・君を愛しているよ・・・・」

(私の半身・・・)


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