出戦3
「・・・・・・・オタルの・・・この・・オタルの戦力は?・・・・」
沈黙していたケルレンがしばらくして尋ねたのに
その場に居たオタルの者の一人が答える。
「・・・・・・150・・・・総領に付いて行った者100と
残っている者で50・・・・後・・2百ばかりの部族が2つ
5百が1つ・・・3百と4百も一つずつ
それと、イェニセイ族がレンヤン様をオタルの後継と
認めてくれています。」
イェニセイ族の直接同盟部族もあるだろうが
オタルの味方は、イェニセイ族の他は小粒ばかりだ。
そんなに危うい所に居たのか・・・・二人は・・・・。
そっと瞳を閉じた。
「・・・・・・・私も戦に出て・・・・
良いだろうか・・・・?」
ポツリと呟く。
抱き上げられているレンヤンが目を見開いて
ケルレンを見た。
どうしたら良いのか、
ハンガイを出来るだけ傷つけることなく
チョイルンとレンヤンを守り、
更に、フールンと、チーフォンを守る方法は
無いかとずっと考えてケルレンは、答えを出した。
搾り出すようにもう一度
「戦に・・・・・出る・・・・・」
言葉にした・・・・・。
「・・・・・・兄上・・・・お叱りはすみましたか?」
馬を飛ばし集落へと戻ったチーフォンにそう聞いてくる声に
ゆっくりと笑みを浮かべながら振り返り答える
勝手に抜け出したこと行動を周り中に聞こえるほどの声で
怒りを落とされても全然平気な表情だ。
そう言いながら何かを伺うように周りを見るフールンを
安心させるように頭を叩く。
「大丈夫・・・・・・ケルレンは、
連れて帰れなかったけど・・・・本当の意味で敵になることはないさ!」
「・・・・・私は!」
ほんの少しだけ表情が崩れて慌てるフールンを
愛しげに見つめてギュッと抱きしめる。
「な!・・・・・・何をするのですか!兄上!!」
「可愛い可愛い!俺の弟だ・・・俺は・・・お前とケルレンが大事!」
フールンの小さな身体をチーフォンは自分の身体に閉じ込めて思った。
(本当にこうやって抱っこしてお前達を守れるのなら良いのにな・・・)
二人を生まれた時のことをしっかり覚えている。
あの時感じた感動と寂しさと・・・開放と・・切なさ
ずっと二人が生まれた時から一緒だった
他の兄弟よりそれこそ母を同じくした兄弟よりも一緒で・・・・
可愛いと思っていた。。
「ケルレンは、とても情の厚い奴だ・・・優しくて・・・
真っ直ぐで、・・・・・・一度決めたことはちょっとやそっとで
諦めない・・・・・頑固者だ!」
「・・・・・・それは・・・・・・・・よく・・・分かっています・・・」
グシャグシャとフールンの頭を撫ぜて
「だから・・・・・あっちの味方をしても、
一度誓ったお前とのハンガイを守りたいって約束
きっと守る。・・・・・・・本当の意味で敵にはならないよ・・・・剣は交えない!」
「俺も、お前も、本当に戦場で剣を交えることは無いよ!」
力強くそう言った。
「・・・・ケルレン様・・・・・しかし・・貴女は・・・」
「・・・・確かに、私は、ハンガイ族で生まれ育ち、
剣を与えられた者だ・・・・」
その場に居るオタルの人達が困惑してざわめいている中
にっこりと微笑みケルレンは言う。
「・・・・・ハンガイと
(レンヤンとチョイルンの)オタルを守りたい
どうすれば良いかと考えて・・・・・せめて、私の手で
ハンガイを傷つける・・・矛盾しているけど・・・驕りかもしれないけれど
出来るだけ傷つけないようにして・・・傷つける!」
(ハンガイでは無く、チョイルンの元ならば
それも可能な気がするから・・・・それは甘えだろうか?)
「ケルレン様!・・・・・そのようなこと
チョイルン様は求めていらっしゃいません!」
慌ててケルレンを止めようとする相手に黙って首を振って
「・・・・・チョイルンの気持ちはありがたいし良く分かる・・・・
でも、そんなのは卑怯だ!・・・・後ろに隠れているのなんて私は、嫌だ!」
「ケルレン様!」
「・・・・矛盾する願い・・・もっと良い方法があるのかも知れない
・・・けれど今、前にぶら下がっている方法しか今は分からないから・・」
「ケルレン様!!」
(フールンも大事・・・・チーフォンも大事・・
ハンガイ族も・・・・・だけど・・・・大きな瞳の無邪気な
この子供が死んでしまう・・・・・部族のしがらみに巻き込まれて・・・)
一心にケルレンを見つめるレンヤンに
小さな頃から命を狙われたフールンが重なる。
ケルレンは、何度も名前を繰り返す相手を説得させるためににっこりと
微笑んで
「だからね?・・・・・私は戦に出る!・・・・
レンヤンを頼む!」




