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太陽のカケラ  作者: のえる
31/105

出戦1

「じゃあな・・・・また『明日』!」

ニッと大らかに笑って去ってゆくチーフォンの

背中に何か言いたい気がして、

けれど何も言葉が出無くて

本当に明日も来るってこと無いよねと思いながら

只、黙って見ていた。


(兄上が・・・行ってしまう・・・

・・これで良い・・・・・私自身が決めたこと決心したこと・・・)


決心したことなのだけれど

チーフォンの背中が小さくなるに連れ

ハンガイが離れて行く気がしてとても寂しかった。


「・・・・・・」

「よろしいの・・・・ですね?」

付いてきてくれた後ろの声に

小さく頷き、下を向く。


そして次に上げた瞳は表情は

強い意志を持っていた。

チーフォンの背中は消えていた。


心は揺らぐけど

もう迷わない。

欲張りに、最低限に願う二つの願いのを

叶えるために行こうと決めた。






「・・・・・・家族だからな・・・・

敵対しても家族だから・・・・仲間だからな」

唇を噛み締めて、けれど瞳は先に向かい

チーフォンは呟いた。


「俺は諦めない!

ケルレンも、フールンも、ハンガイも守って見せる!

守って・・・・ケルレンも手に入れる!」

・・・炎のような一途な瞳が、

気の強い気性が、ちっともくじけない芯の強さが堪らない


その真っ直ぐな気性のままに生きている姿を

見るのが好きだから今回は身を引いたけれど、


誰にも・・・・フールンにもやらない・・・


チーフォンは口の端に自然に笑みが浮かんでいた。






「これで良い!・・・・私は・・・必要ならばハンガイも切る・・

その決意をしている!・・・だが・・・

出来うる限り傷つけたくない・・

・・・後継フールンと長子チーフォンを

傷つけたくない・・・」


グッと唇を噛み締めだけどすぐに再び唇を開く。


「・・・もし・・・そんなことになったら・・・

反対に貴方たちを傷つけるかもしれない・・・そんな・・でも・・

そんな欲張りな気持ちでも良いだろうか・・・・?」


どっちつかずなのかも知れない・・・

ハンガイも、オタルも傷つけたくないというのは

卑怯なのかも知れない・・・。


「・・・・ケルレン様・・・・」


「・・・・私は、どちらにも最後の部分で裏切りたくないと

思って・・・結局一番卑怯な裏切りをしているのかもしれない・・・・」

口元に微笑みを浮かべながらも瞳は揺らめき

けれど必死にその想いを語る。


「・・・・・・・傷つけたくない・・・・裏切りたくない・・・

フールンもチーフォンも・・・それから、チョイルンも

レンヤンも・・・・ハンガイもオタルも守りたい・・・

・・・・・・・私は・・・・・何の力も無いかもしれないけど・・・」


(ハンガイでは無く、チョイルンの元ならば

それも可能な気がするから・・・・それは甘えだろうか?)


「・・・・・ケルレン様!!?」


知らないうちに瞳から涙が溢れていた。

フールンの前以外ではほんの小さな時以外は

涙を見せたことがなかったのに・・・・・

どんなに泣きたかった時だって、

フールンの代わりなのだからと、誰にも弱みを見せたくないからと

私は、死んだ父と母の子なんだからと、強く見せるために

涙を零したりしなかった。



「・・・・本当は・・・・本当は・・・私は!」

声が震えるのを無理に抑えケルレンは続ける。



「・・・・・良いのです!・・・・・チョイルン様も

分かってらっしゃいます・・・それで良いのです!」


「・・・・チョイルンはやっぱり優しいのだね・・・・

(あの温かい胸のように触れてくれた手のように)


・・・・・きっと・・・・だから私は甘えているのかも知れない・・・

今まで生きていることすら知らなかった血が繋がっているだけの

・・・・・本当は、私自身に対する愛情は無いのかも知れないチョイルンに、

肉親と言う無償の愛情を・・・・・・幻のようなそれを与えてくれって

無理強いしているのかも・・・」


今まで、一緒に育ったわけじゃないのだ・・・

そんな肉親よりも育ったハンガイを大切にした方が良いかもしれない


「・・・ただ・・・・・ハンガイの・・・とても哀しかった長の下から

離れるためにここに残ったかも知れないって考える。」


その為に肉親と言う理由に縋りついたのかも・・




「・・・・・知らなかった訳無いではありませんか・・・

・・・・チョイルン様は・・・・・・いつもウルト様に貴方のことを・・・

ずっと貴方を思っていましたよ?」


大粒の涙が零れ落ちた・・・・・・。


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