望むもの3
「・・・・・・勝っちゃったけど?」
「・・・・・・勝ったら帰るって言ってない!」
チーフォンに返してもらった剣を受け取ると
もう一度構える。
「ああ!そうか!じゃ、もう一回だな」
にこにこ笑って再び構えるチーフォンにケルレンは
「・・・・兄上は、どうしてそんなにむきになっている?」
「・・・!!・・・俺は、むきになってないぜ!?
お前の方がなってるじゃねーか!
ムスッとした顔に変わって言うチーフォンを見て
やっぱりいつもと違っていると思う。
余裕のように見えて
いつもの余裕が無くみえる・・・・本気になったのかと思ったが
それも違う。
「変だ!兄上はとても変だ!」
指の代わりに剣を突きつけて言ってみると
「・・・・剣、危ないな・・・・・・
だって・・だってさ・・お前さ・・あっさり肉親とってさ・・
俺達ずっと一緒に育ってきたのにさ・・・ずるいじゃん?」
ぶつぶつ呟く。
「・・・・・・・は?・・・・・」
「つまんないからさ・・・邪魔してやる」
「子供ですか!貴方は!・・・・・・もう・・」
そんなことを思っていたのか
ため息をついて首を振る。
「私は、貴方達よりチョイルンを取ったわけじゃない
気持ちは変わらない!・・・・・・・貴方もフールンも傷つけない
傷つけたくない・・・ハンガイの人も傷つけたくないと・・・でも、
チョイルン達も傷つけたくないと言う気持ちが生まれただけだ!」
(どうしたら良いかなんて正確には分からない・・・けど・・)
「だから、チョイルン達を守りながら・・・兄上とフールンが
死なないようにする!・・・・その為にはハンガイもオタルも
傷つけてしまうかもしれないけど・・そうする!」
後ろで反応するオタルの男の気配に気づきながら
ケルレンは、それをあえてほおっておく。
決心は代わらない。
「・・・・う~ん~・・・・・俺は、お前のその瞳に惚れてるんだよな・・
・・・でも、絶対お前連れて帰るし・・・」
「・・・・///////!?・・・ひ・・卑怯だ!・・・そんなこと言うのは・・」
「・・・・うん!・・・・・そうだな・・・10回だな・・
チャンス10回やるから、勝負1回でも勝ったら『今日は』
諦めてやろう・・・」
疑わしげに見つめながらケルレンは剣を振りかぶって思い切り
振り下ろす。
一合二合打ち合う・・・・三合目には手がしびれて
飛ばされる・・・懲りずに待ってくれるのを良いことに剣を拾って
打ち合って・・・飛ばされて・・・拾って・・・
打ち合って・・飛ばされる・・・。
悔しくて焦って、歯を食いしばる。
「・・・・そうですか・・・分かりました。」
一つ頷き決心した。
「・・・・・私も・・・引けないので・・・悔しながら
卑怯な手を・・・・使います・・・」
再び振り下ろしたケルレンの剣を
もちろんチーフォンは剣を受け止めるが
ケルレンは、悔しさに歯軋りしながらキッとチーフォンを
睨みつけて口を開く。
「・・・・クッ!・・・チーフォン!!!・・・あ・・・
愛しているよ!!!!・・・って屈辱!!」
その瞬間えっ!?と動きが止まったチーフォンの肩口の寸前に
ケルレンの剣が止まった。
「一回・・・か・・・・勝ったよ!!」
顔を真っ赤にしながら荒い息を吐いて
言うケルレンに
チーフォンも少し赤い顔でため息をつき
「・・・・//////・・・・卑怯な手な・・・初めてのそんな言葉に
俺はめちゃめちゃ舞い上がりなんだけどなぁ」
アハハ~っと笑うチーフォンを睨み付け
真っ正直には勝てないので
チーフォンの心を揺らす方法を取った自分が悔しかった。
「悔しい・・・・実力が足りないのが
本当は、私は実力で勝ちたい!・・・でも、
約束だよ!・・・・私は帰らない!」
「頭を使って作戦を立てるのも実力だぜ?
・・・・・うん・・・・お前の決心分かった・・・」
思いがけず明るく言うチーフォンを不思議な気持ちで
見上げ心を読もうとするが
「・・・・・しょがないな・・・『今日』のところは諦めてやるよ!」
微笑むだけで分からない。
「・・・・・・なんだよ!その目は・・そんなに俺聞き分けない子供か?」
(子供じゃないですか!?)
「・・・・うん・・・・もちろん諦めないぜ?・・・
でも、お前の気持ち分かったよ決心も分かった・・・
試してみたかっただけだよ・・・・」
ニッといつもの無邪気で力強い笑顔を浮かべたチーフォンに
ケルレンは、ちゃんと分かってくれてたんだと初めて分かった。