長の子供2
「あのね~一緒に遊んだのよ~」
幸せそうに話すレンヤンを見て
ケルレンは思考に沈む
巫子大国サフラ・・・確か女王は、サラ・ルージュ=サフラから
ルナ・フィリス=サフラに代わったのだったか?
どちらの女王の子か分からないけど子供が何人か居るんだったか
まだ若い20前程の女王だったと習った。
それ以上は余り伝わってきていない。
「ケルレンも一緒に遊んだら良いよ~」
にこにこ笑ってそう無邪気に言うレンヤンを思わず
抱きしめる。
(こんな子も・・・・こんなに小さな無邪気な子も殺されるのだろうか?
反逆者の血を引く男子として・・長は、殺すのだろうか?)
ケルレンは心の何処かが寒くなるのを感じた。
「チョイルン様・・・・・宜しかったのですか?」
集まって今後のことを話していた他の者が去って
二人だけになっていた。
「ウルト・・・貴方は、ケルレンにレンヤンを預けてきたこと
不安に思いますか?」
双子の兄の名前であったチョイルンを名乗る
ケルレンの姉レンチョンは、そのセピアの瞳を
自分の腹心の部下にして
ハンガイのチーフォンの部下として潜んでいる
ウルトに向けた。
「レンヤンとケルレンは叔母と甥になります
会わせて上げるのが悪いことと思えません。」
「・・・・・レンヤン様は貴方のたった一人のご子息で
我がオタル族のたった一人の正統な後継者」
瞳を細めるようにしてウルトはチョイルンを真っ直ぐに
見つめる。
「ケルレンの人柄をケルレンのことをたびたび
教えてくれたのはウルトでしょう?・・・私は、
ケルレンを信じています。」
その言葉を聞いてウルトはフッと柔らかく微笑む
「はい・・・・・実は、私もケルレン様を
信じております。
あの方は、貴方とそういうところが
よく似ていらっしゃいますから」
「あの子だけは亡くしたくない・・・
あの子とケルレンだけは亡くしたくない・・・」
チョイルンの言葉にウルトは深く頷いた。
「ハンガイの長子チーフォンですが・・
馬鹿ではありません・・・すぐにケルレン様を奪い返しに来るでしょう」
「チーフォンか・・・」
「完全に婚儀を妨害するには新郎新婦を殺すか
奪うか・・・・・・しかし・・・・警戒は強くなっているでしょう・・
此方としてもこんなに早く手を打つとは思いませんでしたので・・」
情報を手に入れて3日やそこらでは十分に準備出来なかった
それほど唐突に婚儀は決まった。
「・・・・・ケルレンは・・・・・悲しむかな・・・」
ゲルの上、トーノ(天窓)を見上げながらチョイルンは
妹を思いポツリと呟いた。
「とにかく・・・・・やれるだけのことをするしか
ありません・・・・・・正統な後継・・レンヤン様の為に・・」
「うん・・・・」
月明かりにチョイルンの身に纏う鎧に所々付けられた
鉄の板が照らされキラッと輝いていた。
愛しい子供を守りたい・・・・
この無邪気な小さな子供を守りたい
ただそれだけのこと




