長の子供1
「ねえ~ケルレン!」
グイグイと胸元の服を引っ張って
レンヤンがケルレンの気を引こうとしている。
「・・・え?・・・・何?」
「えっとね~ボク、ケルレンのこと好きになったから
ボクのお嫁さんになって~」
ますます途方にくれた。
「・・・どうして・・・・?」
「まあ!レンヤン様ったら私にもお嫁さんになって
って言ってたくせに!」
思わず理由を聞くケルレンに
拗ねたフリをする異国の少女=ティル
「ケルレンはとってもびじんだから~!」
レンヤンは小さいくせにそう言って
カラカラ笑って答えてくれる。
「んとね~ケルレンがね~第一のお嫁さんで
ティルを第二のお嫁さんにしてあげる~」
確かにモルドルは重婚を認められているけれど
とケルレンは思って頭を抑える。
(きっと深い意味もなければ、悪気も無いんだ)
どうして・・・何がどうなってこんな小さな
子供に気に入られることになったのか・・・
調子が狂ってしょうがない
調子が狂うと言えば、名前をごく普通に呼ばれることも
ハンガイ族長と、末子にして後継のフールンと
長子チーフォン以外にはあまり無かった。
見る見るうちに遅まきながらケルレンの顔が真っ赤になっていく
幼子のたわごとと思いながらも
レンヤンのお嫁さん発言と美人発言のせいだ。
「でも確かに・・・・・ケルレン様って
母君似ってお聞きしたけど・・・・凛々しいのだけど
お綺麗ね」
それを聞いて
(こんなのは、私じゃない・・・)と
思いながらもますます赤くなって何も話せなくなってしまう。
「なぜ!・・・・・私の母のことを知っている!?」
「え?・・・レイヤン様のお母様でいらっしゃる総領に
・・・ケルレン様のお姉様に、お聞きしました。」
あの人に?
ケルレンは、まだたくさん疑う余地が有ると思いつつも
じゃあもしかして本当に姉なのかも知れない・・と
ふと思った。
「ねえ~ねえ~ケルレン~」
「・・・え?・・・はい?」
今度は何を言うつもりなのだろうか?
そう思って視線を落とす。
「思い出したの~ボクね~サフラの子達と
友達なのよう~」
「・・・・・!?・・・・どういう?」
「母上達といっちゃのよ~」
レンヤンの説明は要領を得ない
幼児に要領も無いかもしれないけれど、
「母上達とサフラに行って友達になりに
いったのよ~エーティルも行ったのよ~
でもね~ボクと同じ位の子達だったからサフリャん子たち
友だちなのよ~」
一生懸命話してくれる。
それを思わず微笑ましく思いながら
頭の中で整理する。
そうか・・・・・つまりは
もちろんモルドルの他の民族も回ったのだろうが
援助を得る為にサフラ、エーティルといった
他の国ににも行ったのだろう
・・・・この子は・・・・・・
オタル族とハンガイ族の長の直系の血を引く男子
後継の資格を持つのだから・・・
いまさらながらに幼子のその身の危うさに
気が付いて口の中が渇いてくる自分に気がついた。