二人の定め
同じ日同じ時、そして同じ部族の近しい血を持って
私達は生まれた。
その2人定められたまったく違う
運命の流れに沿って・・・・
まるで双子のように育った私達
でも一族の後継者と
後継者と良く似過ぎた容貌を持つ影武者となる私
という立場に沿って育ったまでの事。
影武者・・・・・後継となるフールンの代わりに傷を負う者
いつしか私自身も守りたいと思ったフールンの命を守る者。
「・・・・つ・・・・・・」
与えられた痛みで不意に目覚める。
「・・・・い・・・・痛いって・・
・・・!!・・・・フールン・・・・・・!?」
飛び起きてみるとすでに日の落ちかけた夕日が差し込む見慣れたフールンの部屋の中
フールンが包帯を手に微笑みながら此方を見ていた。
「痛かった?ご免ね
あっ・・動かないで・・・・・ケルレン」
しばらく目をパチパチさせてどうしてこの状況になっているのかを
じっと思い起こしてみる。
「出来るだけ優しく巻くけど
少し痛むかもしれないよ・・・・・我慢して・・・・・」
左肩に受けた怪我を再びフールンに晒す羽目になりながら
血が噴出している怪我の痛みに耐える為
グッと歯を食いしばりもう一度記憶の海に沈む。
包帯の上からフールンがそっと口付けを落とし
私の痛みを癒してゆく、
・・・ごめんね・・・・・ごめんね・・。
・・・・ケルレン・・・
何も言わない、微笑みを崩しもしない
でも
フールンの唇からそんな想いが押し寄せてくる。
私が影武者をして怪我をした時いつも治療してくれる、
心も身体も癒してくれる。
「フールン・・・・」
想いに涙溢れそうになる。
(・・・影武者をして怪我をした時・・・・・!?)
ハッと今までの事を思い出した。
唇をかみ拳を握り締め勢い良く起ち上がり
思い出した怒りにひたすら耐える。
「・・・・・・悔しい・・・・・あいつ・・・フールンを無能な後継だって言った!!」
影武者とも知らずにののしり
怒りにひたすら耐えていた私をいきなり切り付けた。
「あんな奴・・私、切り刻んでやりたかった。」
フールンは、静かな瞳で私の怒りを受け止めながら
宥めるように伸ばした右手で私の頬に触れる。
いつもの私の仕事・・・・・フールンの為に
代わりに傷つき、代わりに怒る。
そんな私を癒すのが大切なフールン。
大好きなフールン。
バサッ!!
「目覚めたかケルレン!!」
顔いっぱいの笑顔を浮かべながらチーフォン長兄(私にとっては従兄)が
入り口の布を勢い良く捲ってガッシリとした身体を中に入れた。
「・・・・入る前に言葉を掛けて入って欲しいものですね」
呆れたようにフールンがチーフォン長兄に声を掛けるが
チーフォン長兄はそんな言葉を気にすることなく
いつもの弟と仲の良い兄の顔ではない真剣な表情になって
私の方から弟フールンに視線を送ると
「フールン!!・・・・俺はお前が凄く長に向いている奴だって思っているよ
頭は良いし武術の腕も並以上にある
一族の奴らにも概ね好かれているしな、
・・・・・・俺も・・・・・大好きだし、可愛いし・・・・」
其処まで言ってチーフォン長兄は一度フールンから目を逸らせため息をつく
・・・・フールンは貼り付けたような笑顔を浮かべたままじっと見返している・・・
「でも、ケルレンのことは理解できねえし、サッサと影武者なんて
止めさせたいと思ってる!!・・・・・・そんで俺の嫁に貰いたいと思ってる。」
「どさくさにまぎれて・・・・・・」
「・・・・そうそう・・・・・これなんでか俺が預かって来ちまったんだけど・・・・」
嫁という発言に言葉を返そうとしたフールンに覆いかぶすように
チーフォン長兄が懐から封書のような物を取り出しフールンの手に握らせる。
一方私の方はフールンと2人でしんみりとなりかけていた空気が明るくなったのを
感じながら本人を前に臆面も無く嫁とか言うチーフォン長兄の顔面に
恥ずかしくて少し赤面しながらもパンチを叩きいれた。
・・・・封書はフールンの親に定められた許嫁の少女からの物だった・・・・・