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太陽のカケラ  作者: のえる
19/105

異邦の娘

・・・・本当に・・・どうしてこんなことになったんだろう・・




ケルレンはため息をついた。


「ね~どうしたの?ケルレン~?」

ケルレンの膝の上を陣取っている

小さな子供・・レイヤンが褐色の猫毛を

ふわふわさせながら大きい夜色の瞳をキラキラさせて此方を見ているのに

ケルレンは、無言で視線を送ることで返した。


「ケルレンは~ボクのこと嫌いなの~?」

「・・・・・いや・・・そんなことは・・・でも・・」

幼子のつぶらな瞳は困る。

ここは一様敵陣地になるんじゃないんだろうか?


例え自分の実の姉を名乗る人が居たとしても、

本当かどうかは、分からないし、敵であるイェニセイ族の集落内と

言う事には変わりない・・・はず・・


「今は~母上達、いしょがしいから

ボク達はここで大人しくしてなきゃダメなんだ~」


そうなのだ、この膝の上のレンヤンはよりにもよって

あの実の姉を名乗るあの人の息子らしい


・・・・私にとってじゃあ・・甥?


でも本当かどうかはあくまでも分からないことだ

今まで生き残ったのは唯一自分だけだと聞いていたのだから

例え実の姉を名乗るレンチョンの瞳の色がケルレンと同じセピア色

だということに気が付いても。


なんてことをもんもんと考えながらケルレンは

レンヤンを膝に乗せたままで居る。

こんな幼子に「お前は敵だ!早く一族の元に私を戻せ!」

とかも言えなくてはっきりいってケルレンは本当に

途方にくれていた。



フールンは・・・・フールンは今どうしているのだろうか・・



お願い、フールン私を助けて!

私の今の状態を何とかして!


どうしようも無いことを考えていた。




「レンヤン様、あまりケルレン様を困らせては

いけませんよ!?」

くすくす笑いながらケルレンと同じ年位の少女が

お盆に何かの乳を入れた器を持ってやって来た。


「・・・・・!私を!・・・・・・

・・・・あ・・・ありがとう・・・君は?」

少しは大きい人物が現われたので思い切って

帰してもらうか、捕虜らしい扱いをするように

言おうとしたが、少女の顔立ちがモルドルの

顔立ちでは無いことと、何より女は守るべきものと叩き込まれた

教育のせいでやはり何も言えなくなってしまった。


(私は、なんだか意気地のない人間にでも

なってしまった気がする・・調子が狂う・・)


少女が目の前においてくれた牛乳に瞳を落とした後

思い切って少女に視線を戻し何者かを尋ねた。

ケルレンは表情は、すっかり困惑のあまり

寄せた眉根が戻らなくなっていた。


「はい?何ですかケルレン様?・・・ああ名前ですね

私は、ティルと申します。」

「ティル?」

変わった名前だ。

思わずオウム返しに繰り返す。


「はい!ティルです。・・・・・・母がエーティルから

お嫁に来ていて其方の血を引いています。」

「モルドルに嫁して来たのか?」

眉間のシワが消えた。

西の大国エーティルから東の大国モルドル

だなんてまさに端から端じゃないかとケルレンは

思わず此処に居もしない女性を気の毒に思った。


「いえ・・・お嫁に行ったのはサフラ国で・・

結婚する時は好きあってだから良かったのだと思います。」

「サフラ・・・」

あの不思議な神と精霊と暮らす不思議な国

サフラだとしてもやはり他国に嫁するのは大変だったろうな

と同情的気持ちで頷く。


「ねえ!」

レンヤンが自分の存在を思い出せとばかりに声を掛ける。


「・・・・という訳で私は、ここの人間ではありませんけど

よろしくお願いしますケルレン様!」

ティルはそのエーティル系の顔でにっこりと微笑んだ。



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