長の娘1
広々とした風と草のダンス場を数騎の人馬が駆け抜けた
ある一つの場所、心を一つにした仲間達の待つ場所へ
自分達と主にとって大切なものを騎上に載せて・・・・
「クスクスッ・・・・・・・ここだよ~ティル~何処見てるの~」
褐色のフワリとした猫毛を風に跳ねさせ、
黒い瞳をクルクルと輝かせながら小さな幼児が
ゲルの中の箪笥、衣装箱と隠れながら少女に話しかける。
まだ赤ん坊から脱してそんなにたっていない幼児の相手をする
ティルと言う少女の方は赤味の茶色の髪と
同色の零れるほどの大きな瞳で
少し睨みつける様に
「もう・・・・レイヤン様・・・私だって忙しいのよ!!」
といたずらな幼児を嗜める。
少女は女達と、外に出ていた仲間達が帰って来たので、
急いで食事の用意をしていた途中で、
幼児を探してきてほしいと頼まれれしまったのだ。
(せっかく久し振りにお寄りになったウルト様に
私が作ったツァイ《茶》を飲んで頂いてお話しようと思っていたのに・・)
憮然としながらもさっさと幼児=レイヤンの首根っこを掴んで
連れ出そうとするティルの首をその瞬間掴まれた
(・・・!?・・・・え!?誰?)
驚くティルの瞳に映ったのはお話したかったウルト様と
ベットに寝かされた少女・・・少年・・・・!?・・・・だった。
「え・・・!?・・・・ウルト様!!」
「・・・・・レイヤン様・・・ティル・・・ここはケルレン様が眠られているゲルだ
・・・・・『隠れん坊』で窓から入ってくるのは良い・・・・だが・・・・
余所でしなさい。」
(どうしてウルト様がここに?・・・と言うか私達が
余計なところに入りこんでしまったの?)
淡々と諭されながらもティルは頭がパニックのまま
驚きで見開いた瞳に飛び込んできた
ケルレンの姿から目を離す事が出来なかった。
(この方が・・・・・ケルレン様!?・・・・総領のあの・・・?!
少年みたいに短く髪を切った中性的な雰囲気のこの方が?
固い少しの癖がある栗色の髪、毛先が少し跳ねていて
前髪がウエーブを描いて額に集まって
肌は遊牧の民にしては滑らかで小麦というよりミルク色。
(何だかカッコイイ・・・・美形系・・・・かも)
レイヤンを追いかけて来た事もウルトが居ることも忘れて
のんきに
いち早くケルレン様が見れて幸運だった
などと思いながら
瞳を細めかすかに頬をピンクにして見つめるティルは、
やがてケルレンの睫毛が震えているのに気付いた
(あ!・・・目覚められる・・・)
彼女達が出会うのはもうすぐ・・・・




