フールンが好きだから3
「フールン様、入ります。」
ふと誰かの声がして、ケルレンは自分が寝てしまっていたことに気付いた。
「・・・・・」
熱が出てきた為に薄っすらと瞳を開けゆっくりとした動作で
入り口の方を見たケルレンは逆光の中立っている
背の高い青年の姿を見た。
「・・・・失礼します。」
よりフールンの影武者として相応しくなれるように、
また、少しは周りのかく乱の為に、一部の身内を除き私はフールンとまったく同じように
扱うように一族中で言われている。
入って来た一族の青年が言葉少なに額の布を換えるのをぼんやりと眺めていると
しばらくして布団など整え立ち去りかけたが、
ふと、気ついたようにケルレンを振り向くと
「・・・・フールン様と、セレンゲ様の婚儀が早められ3日後に行われると・・・
チーフォン様より伝言です・・・」
「・・・・・」
黙って頷くと青年は今度こそ去っていった。
両手で顔を覆い冷静に今までのことこれからのこと
考え、フールンの言葉を思い出しながら私にとってのフールンを自分の中に探す。
『・・・私の一番は君だ・・・・君と・・・一族だ。』
愛してるとは言わないが大切だとは良く言ってくれた。
一番・・・それは私を愛しているということだろうか?
一族と同じの一番・・・・愛しているとは言わない・・・・・
フールンは別れを言おうとしたのだろうか?
『・・・・・・私は・・・・・セレンゲと結婚しなければならないだろう』
はっきりとそう言った。
・・・・・覚悟していたつもりだった、どうしても私は妻になれない・・・
フールンがいつか私以外の妻を迎えて一族の長となる、
いつか来る現実だったけど、本当に分かっていなかったのかも知れない。
「・・・・・・・フールン・・・・・」
フールンは様子を見にも来ない。
それは、ケルレンがキチンと諦められる為の気使いだと分かっていたが
こんなに離れたのは生まれて初めてかもしれない。
父や母達が死んで赤ん坊の頃から一緒だったのだから・・・・・・
罪人の娘ではあるが、影武者にぴったりだと育てられた。
・・・・・私は・・・・フールンの傍に居たい・・・・
子が保護者である親を慕うように逃れがたい愛しさでフールンを
思う・・・・ケルレン自身それが本当の意味で恋愛じゃないかも知れないと
分かっていた。
・・・・・・フールンの傍に居たい・・・・・
・・・・他に妻が居ても?
胸が痛い、でもすぐに答えが返ってきた。
・・・・・フールンの傍で、温かさを2度と返してくれなくても・・
・・・一緒に居たい・・・・そして私がフールンを、フールンが大切にしている物を
・・守りたい。
「・・・だって・・・私は、フールンが好きだから・・・恋じゃないかも知れないけど
凄く・・・・凄く好きだから・・・・・共に大切なもの守って上げる!」
一粒涙か零れた。