白薔薇さんの感想
今日もすることがないわ。
薄暗い窖でうろうろするくらい。
外に出ようとしても見えない膜が外に向かって行く途中にどこかで引っかかって、そのまま進むとどんどん抵抗が強くなっていって、だいたい10歩分くらい進むともう先へは進めないのだから出ることも叶わない。
くそう、いつからこうなったんだ。人が昼寝してる間に誰かがイタズラしたのかな?
イマイチ困らないから微妙だけどね。
外にはそんなに興味はない。
何かもういいやってなることがあったんだと思うけれど、なんだったかは忘れちゃった。寝ぼけてるのかなぁ?
あら、歌が聞こえる。
この歌は知っているなぁ、などと思うときはいつも私が口ずさんでいる。
意識していないうちに歌を歌ってしまうのは私の癖。
いつも歌っていることに途中で気づいてそのまま歌う。
今日もまた、自分に促されて歌を歌う。
今日は音の響きがいいわねぇ。まるで歌声がたくさんあるみたい。
楽しいわぁ。
気分が乗って歌い上げていると、ひょいと顔を出したお客さんがいらした。
あら、可愛いお客さんね。背の小さな男の子、よね?
髪は肩まで伸び、色が薄くてサラサラでぱっと見女の子か男の子か区別がつかない。
クリクリとした目には困惑も戸惑いもなく、小さな唇は花が咲いたようだ。
けれど私には男の子に見えた。
女顔って言うのとも、なんか違うけれど、中性的が適当かしら?
とにかくお客さんがいらしたわ。
今日は歌の響きがいいはずね。このかわいいお客さんが一緒に歌っていたんだもの。
それにしてもこの歌も少しは有名になったのね。知っている人がいるなんて思ってなかったわ。
二人で歌うことがこんなに楽しいだなんて、私今まで知らなかったの。
二人で歌って、くるくる回っているとうきうきする。こんなことがこんなに愉しいだなんて嘘みたい、けど本当よ?本当なの!
疲れて倒れてしまうまで、はしゃいだわ。
地べたに寝っ転がっていると話しかけられたのよ。けれど、なんて言っているのだろう?知らない言葉だったの。
起き上がって、なんて言っているのか理解するために近付いて聞き取ろうとしていると、手を引っ張られて膝の上に乗せられたわ。
あら、この子のこと小さい子だと思っていたけれど、私も大概小さかったのね。知らなかったわ。
落ち着く膝の上でたくさんお話をしたの。
そうしたら少しづつだけど、なんて言っているのかなんとなくわかるような気がするようになってきたの。凄いわ、私天才かもしれないわね。
あら?ちょっとまって。私はそんなに凄くはないみたい。
だってこの子、私の話す二言三言を理解をしたように返事をするの。私の知らない言葉でよ?
私の言葉を知っていた感じはしないのにね。
私も言葉がはっきりわかる訳じゃないけれど、私の言ったことを行動で示すことがあるわ。これってそうだってことよね?違うのかな?
私のお願いを言ったら聞いてくれるかしら。
私は外には行けないけれど、ここの奥へは行けるの。
そこに、私の気になるものがあるはずだから手を貸して欲しいのだけれどどうかしら。
穴を掘りたいのに私の力じゃ剣ひとつ持てない。いっぱい刺さった剣を使えば壁も少しは崩せるはずだけど、そもそも剣を持てないんじゃ無理だし効率も悪いの。とてもね。
お礼になるものもそこにあると思うからお礼はできるはず。嫌なら仕方ないとは思うから無理強いはしないけど、一先ず一回だけ頼んでみよう。