穴掘りの支度
飛んで行く後ろ姿を眺めて突っ立っていると、彼女が階段を上がって見えなくなった途端真っ暗になった。
あ、ここ声出すだけで壁崩れたんだった。見えないと怖いから追いかけよ。
さっと階段に向かって歩き出した。
元いた場所に出ると、頭を下げてお尻を揺らしていた。何かを探しているのだろう、土を掘っていた。
けれどほとんど掘れてはいない。砂が退いたくらい。
手伝おうと近寄った時、地面がパカッっとティッシュ箱くらいの大きさで板状に持ち上がるのが見えた。
彼女はそこに片腕を入れて目的のものを取り出す。
それは柄だった。
それを持って顔を上げたかと思うとすぐさま僕の顔めがけて飛んでくる。
「なゃんくんくん!」
首に腕をかけてくるりと回ると、背中にくっ付いて、座れない椅子の部屋へと向けて後ろを押してくる。
そのままさっき登った階段を取って返した。
戻ったさきで彼女の指差した剣に柄を取り付けた。木槌とか無いから止めるの大変だった〜。
そして早速、その剣を使って穴を掘ることにした。
腰高の位置で切っ先を硬い壁に押し当て、ゆっくりと挿し入れる。
凄い凄い、するっと入っていくよ。壁の向こうは空洞かもね。
挿し入れたまま、人が入れるくらいの大きさでかまぼこ型に抉りこむ。
一周したところで一蹴して壁を抜こうとした。
が、踵から踏み抜こうとした足が痛〜い。
抜けるどころか凹みもしない。
感触と音の響きでわかった。ここの壁薄くない。
「向こう側には何があるの?」
振り返らずにそう尋ねると、返ってきた。
「わりゅぁにやんるるぅ?」
穴を空けてほしいんじゃなくて掘って欲しいそうだ。
そうして僕は穴を掘ってトンネルを作っています。
道具がないから仕方がないけれど剣は土を掘るのには向いていないね。