隣の部屋を覗く
「ならいってゆん、ふおっふぃ〜!」
彼女が右手の人さし指をグルグル回しながら左手で洞穴の奥を指差す。
「ん?いいよ。この奥?」
言われた通りに立ち上がり、お尻の土を払ってから奥を覗きに行くと、小さな入り口と下に降りる階段が掘ってあった。
「なぁに、これ。何かあるのかな」
彼女がいなければ真っ暗になってしまうので、勿論彼女はくっついて一緒に来ている。
「んそそ」
こめかみの辺りからニュッと右手が伸びて階段の奥、暗がりの底を指差す。
指示通り指差した先にある階段を降りた。
するとそこには小さめだが、とてもとても立派なゴツい上に素晴らしく繊細な彫刻の施された木扉が設えてあった。
ドアノブも勿論、素敵な装飾が施されている。パチンコのレバーハンドルみたいな感じで金属の蔦が這い、指を掛けられるように少しだけ立体化している柔らかさを感じさせるもの。
が、このドアには些か大きめ。
そのノブを優しく捻るとガチャリと留め金の外れる音がした。
そのまま引くと、扉は開かなかった。強めに数度引いてもガガガン!と音がするだけで開かない。
押すのかなと押してみても開かないので、横にスライドしてみたら開いた。
引き戸め。
そうやって入れた扉の奥には15坪くらいの空間が広がっていた。
ぽっかりと拓けた丸い床に、ドーム型の天井。真ん中には細い脚の王座のようなもの。他にはなにも無い。
埋め尽くすように壁中に突き刺さる大量の刀剣類以外は。
「あららはら〜らは〜」
扉の先から覗き込んで見ていると、彼女が歌うように何事が囁く。すると椅子の背もたれ側の棒材が片一方だけ倒れ、椅子の向こう側にある正面の壁が少し崩れ落ちた。
斜め後ろを見上げ彼女の目を見ると、まばたきを一つした後に頷いたので部屋に足を踏み入れた。