プロローグ
高校生にもなると、自分の身の丈というものを心底痛感するようになるのは、僕だけだろうか?
小さい頃は勉強も運動も、友達とあまり差がなかったはずだし、そんなことは気にしていなかった。
だが高校生となった最近は、ひどく自分という存在が凡小に思えてくる。何をするにしても平均かそれ以下である僕は、将来のことを考えると寒気がした。
…今後も平均以下の大学に行って、無難に免許でも取って、普通の企業に就職する。特別なことなど何一つ経験しないまま結婚して、些細な幸せというやつを感じながらなんとなく生きていくのだろうと、そう思っていた。
そんなのは僕だけじゃないし、望んだわけじゃないが確実にそういう人生を歩もうとしていた。
まさかそんな自分が異世界に行くなんて、誰が想像できるだろうか。
『君は鍵に導かれたのだ。この世界を救うために』
そんなことを言われたら、乗り気になってしまうじゃないか。日常を離れることが、どんなに素敵なことか。あの日僕は、中々に軽い気持ちで異世界に乗り込んだ。
だって、これほどまでに大ごとになるなんて、誰にも想像できないだろうから。
後ろには守るべき存在、前にはまるでゲームに出てきそうな強大な敵。
”二度目の、パンドラの箱の解禁”
滴る血をぬぐうと、僕はまた剣を握り締め、走り出した。