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第二十話 旅立ちの朝、風の向こうへ

夜が静かに明けていく。

空は薄い桃色に染まり、鳥たちがゆっくり歌い始めていた。


風の庭には、朝露がきらめいている。

花びらの上の透明な雫が光を受けて輝き、

まるで庭全体が「行ってらっしゃい」と言っているようだった。


ミツヨーナは旅装束に身を包み、

胸元の紐を軽く整えた。


(……セリーヌの手縫いなのよね。

ほんとに、どこに出しても恥ずかしくない出来だわ)


鏡の前で軽く身を回し、

布の揺れを確かめる。


「よし。アタシ、今日も綺麗よ」


庭に出ると、三人がすでに待っていた。


ルナは眠そうな目をこすりながら、

必死に笑顔を作っている。


「ミツヨーナさま……ほんとに、行っちゃうんですか……?」


「行かなきゃいけないのよ。

人の涙をそのままにしておくの、アタシの性分じゃないもの」


ルナは唇を噛みしめ、

小さなお守り袋をもう一度ぎゅっと握った。


カイルは大きな荷物を背負い、

まるで自分も行くつもりのような顔をしている。


「……なぁ、本当に俺は付いていけないのか?」


「アンタが来たら庭の子たちが泣くでしょ。

それに、ここを守る人が必要なの」


「……わかった。でも絶対無事で帰ってきてくれ」


ミツヨーナはにっこり笑い、

彼の額を指で軽く弾いた。


「心配性な男はモテないわよ?

でも、ありがと」


カイルは顔を赤くしてうつむいた。


セリーヌはいつもの静かな表情だが、

その目には強い光が宿っていた。


「殿下と二人だけ……危険な旅になります。

どうか、ご無事で」


「アンタの服がアタシを守ってくれるわよ。

それにね――」


ミツヨーナはそっとセリーヌの手を取り、微笑んだ。


「帰る場所があるってだけで、人は強くなれるのよ」


セリーヌのまつげが震え、

小さく頷いた。


そこへ、蹄の音が響いた。

風を切るように白馬が現れ、

レオネル王子が姿を見せる。


「皆、早朝からすまない。

支度はできているか?」


ミツヨーナは軽く手を上げた。


「もちろんよ、王子。

今日のアタシは絶好調。

どんな荒れ地でも花咲かせてやるわ」


レオネルは微笑し、

手を差し出した。


「行こう、ミツヨーナ。

風の向こうへ」


ミツヨーナはその手を取った。

その瞬間、胸が少しだけ熱くなる。


馬に乗り、風の庭を振り返る。

ルナ、カイル、セリーヌ――

彼らの目は、涙を堪えた笑顔だった。


「みんな、アタシ帰ってくるからね!

花を枯らしたら承知しないわよー!」


「はいーっ!」「任せろ!」

三人が声を上げる。


風が吹き、花びらが舞った。

まるでミツヨーナの背中を押すように。


レオネルが馬を走らせる。


ミツヨーナは胸を張り、風を受けた。


「さぁ、旅の始まりよ!

アタシ、花咲かせますわよッ!」


朝の光が二人を照らし、

風の向こうへ――旅立ちの道が続いていった。

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