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第十五話 囁く影と閉ざされた扉

宴の翌朝、王都は静けさに包まれていた。

昨日の笑い声が嘘のように、空気は重たく沈んでいる。


塔の窓から差す光は弱く、

ミツヨーナは紅茶を飲みながら、

まだ残る花の香りを感じていた。


「……楽しい夜の後って、いつも少し寂しいのよね」


そのとき、扉の下から一枚の封筒が滑り込んできた。


封蝋には王家の紋章。

だが、色は黒。


ミツヨーナは眉をひそめ、封を切った。


“神の乙女ミツヨーナ、王の病を呪いによりもたらした疑いあり。

本日、王宮にて審問を行う。出頭を拒めば拘束とする。”


「……あらあら、アタシったら本格的にモテ期ねぇ」

軽く笑ってみせたものの、胸の奥に冷たい痛みが走る。


外から足音が響いた。

ルナとカイルが駆け込んでくる。


「ミツヨーナさま!外に兵士がいっぱい!」

「庭の外にも人が……囲まれてます!」


ミツヨーナは立ち上がり、微笑んだ。


「大丈夫よ。花は踏ませない。

でもね、怖がらないで。

この世界、嵐のあとほど綺麗に咲くの」


セリーヌも現れた。

その表情は固く、目に決意が宿っている。


「私が同行します。

一人にしません。あの人たちは、あなたを誤解しているだけ」


ミツヨーナは彼女の手を握った。


「ありがと。

でも、アタシは逃げないわ。

咲くときは堂々と、散るときも笑顔でね」


庭の外で兵士たちが整列していた。

隊長が声を張り上げる。


「神の乙女ミツヨーナ、王命により出頭せよ!」


ミツヨーナはまっすぐ立ち、言った。


「逃げる気なんてないわ。

でも一つだけお願い。

花を踏まないで。それだけは許さないわよ」


兵たちは一瞬ためらい、そして静かに頷いた。


ミツヨーナは背筋を伸ばし、

光の中を歩き出した。


同じ頃、王宮では――

レオネル王子が密書を受け取っていた。


“王の病は、ミツヨーナの呪具によるもの。

証拠、まもなく塔より押収予定。”


「……誰がこんな馬鹿げたことを!」


レオネルは剣を掴み、立ち上がる。


「馬を用意しろ!今すぐ塔へ!」


侍従たちが慌てて動く。


「殿下、評議会はもう始まっております!」


「だから行くんだ!あの人を一人にするな!」


王子の声が、宮殿に響いた。

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