第39話 グッドラック
――コロニー「ヒース 2nd」外周、建設用拠点
<役目を終えた建設用拠点の解体が進んでいる。重機の低い駆動音が響くなか、作業員や無人作業機械が働く様子をアトラスは見守っていた。私が横に立つと短い挨拶の後、彼は再び視線を前に戻す>
【あなた方の知識がなければ、再建の計画は見直しを迫られていたでしょうね】
私は大地との関わり方を教えたに過ぎない。
いかに大地の力を借り、あるいは大地から身を守るのか。
狩りの仕方、安心して眠れる場所の見つけ方。実践したのは君たちだ。
【そもそもどうやってあの事態を知ったのでしょうか?】
助けを求められたからだ。
【誰から?】
スノードロップから聞いた。ほかにも関わりのあるコロニーから状況を聞いていたグループもあった。
【グループについて教えてください】
説明が必要だったな。ワンダーはグループと呼ぶ小規模な集団をまとめた呼び方だ。簡潔すぎるか?
【十分です。ありがとうございます】
スノードロップからヒースの放棄は聞いていた。再建計画の状態も。そして、物資の輸送計画が災害によって崩れたこともだ。
彼女は知識や技術だけで充分だといった。だが、実践して見せる人間が必要だと私が押し切って、他のグループの有志とともに救援に向かった。
狩り仲間を助けに行くことにためらいはない。
彼女が急ぎで用意してくれた飛行機の乗り心地はよかった。そろそろ、本心を聞いてもよいころ合いだな。
【グループのリーダーでしたよね】
そうだ。
が、優秀な副リーダーがいたのでね。その点は心配なかった。
【狩りはエキサイティングだったと報告がありました】
みな、飲み込みが良かった。
狩りや獲物の解体に慣れない者もいたが、無理して慣れる必要もない。
【狩りは重要な儀式だと聞いていましたが】
確かに狩りは成人の儀のひとつだ。
しかし、生活を支えるものはそれだけではない。
どれかで、何かで誰かを支えられるようになれば、それは立派な成人なのだよ。
【私たちは成人になれたのでしょうか】
それは、私たちの基準の話か?
なら、十分に成人だ。この試練を乗り越えたのだから。
<解体現場を見ていた彼の目が私を捉える>
【ありがとうございます】
この瞬間に立ち会えたことを光栄に思う。
ひとつ、大事な言葉を贈ろう。大人になってからは試練を見つけることが試練だ。
これは私たちなりの祝福だ。
【胸に刻んでおきます】
その必要はない。君たちはすでに実践している。
<彼のさし伸ばした手を握ると、力強く握り返された>




