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バウンドレス・アイズ  作者: フィーネ・ラグサズ
ロード・ドント・スロー・ミー・ダウン

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第25話 破損

――コロニー「ヒース 2nd」天井付近キャットウォーク、ワイヤーネット統括ユニットB3前


<ドームの天井付近は風が感じられる。建物からの排熱がそのまま上がってくるのだという。街が呼吸しているんだ、とタロン氏は移動中に説明してくれた>


【AD2190.09.30にドームの破損箇所の修理を担当したと伺いました】


 あれは俺が知っている仕事のなかで一番、やばかった。ドームの天井付近は空気が渦巻いてるんだ。

 ちょうど、今も風を感じるだろ? 熱せられた空気はあの真上にあるヒートパイプを通して居住区に戻される。それだけの熱があるんだよ。

 屋根破損の警報が鳴って俺たちは急いで破損箇所に向かったんだ。破損直後、外周部の天井付近は25℃、外はマイナス60℃。外に逃げる熱と吹き込む冷気で乱流になっていた。

 屋根近くのキャットウォークに出ると俺たちは二手に分かれた。屋根を修理しに行く俺とヴィム。破損箇所のチェックと応急処置をする連中。

 破損箇所に向かって走ると、温度計の数字が急激に下がりはじめた。数字以上の寒さを感じたね。それも耐寒作業服越しにだぜ?

 俺とヴィムが破損箇所にたどり着いた時、屋根をチェックしていた連中がこう叫んだんだ。


「タロン、戻れ! 屋根の強度が落ちてるぞ」


 一箇所壊れただけじゃないんだ。屋根全体にガタが来ていて、内側にあるヒートパイプまでダメージは広がってたんだよ。破損したヒートパイプからあふれていた熱媒が止まったのを見て、俺は叫んだ。


「こいつを何とかしたら降りる!」


 叫ぶとき癖でマスクを外したんだが、あまりの寒さに喉まで凍ったんじゃないか、と思ったね。慌ててマスクをし直した。虚勢だな。そうでもしないと、逃げちまいそうだった。

 隣のキャットウォークを歩いてたヴィムは作業続行のハンドサインを出していたよ。あいつ、あんときは19になったばかりなのになんて根性だ。これは負けてられない。


【このくだりは書いても大丈夫ですか?】

 ヴィムには昨日、伝えたんだ。あの時、勇気をもらったのは俺だって。ヴィムの奴は、タロンさんが叫んだから僕はやり遂げるって決意したといってくれたよ。虚勢も張ってみるもんだな。


【屋根はどのような構造だったのですか?】


 何年もブリザードに耐えてきた屋根とはいえ、予防交換まで余裕があったんだ。ガラスパネル、セラミックと耐衝撃素材の断熱パネルの多層構造でな。

 猛烈なブリザードで耐衝撃素材がぶっ壊れ、中のセラミックが露出した瞬間、熱衝撃でバキバキになった。ガラスパネルまでぶち抜くとは思ってなかったが……。

 俺たちは、大穴のあいた箇所に幌をはろうとしたんだ。本当はパネルを置き換えたかったんだが、無人作業機械の重量で屋根が落ちるかもしれない。で、一番いいのが幌で覆って接着剤で固定する案ってわけだ。

 ところがだ。接着剤の化学反応が寒さに阻害されて、いつまでたっても固まらない。待っている間に視界に白いものが舞い始めた。吹き込んできた雪か氷とコロニー内の水分が凍りつきはじめやがった。いちかばちか、作業服のヒーターの温度を最大にしてあててみたが、何も起こらなかった。

 低温用接着剤もあったんだが、幌を固定する量はなくてな。でも、ガラスパネルの亀裂が広がるのは何とか止められた。

 幌はカラビナとワイヤーでフレームに固定したんだ。風で煽られないよう、できるだけテンションをかけてな。何もないよりはマシだ。

 運が良かったのは、外周部だってことだ。真ん中だったら、もっと急激に下がっただろうよ。


【中央から熱が逃げるのは最悪のシナリオでしょう】


 ああ、熱損失率はさらにあがったはずだ。おっかないから知らないほうがいい、とダチの技師がいってたよ。

 そういう意味じゃ、居住区の様子は知りたくなかったな。あれをおっかない以外になんていえばいい?

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