第七章:恋女房・柚月との逢瀬
鈴鹿一家の事務所裏。
薄明かりの中、覇真はひとりの女を待っていた。
その名は柚月。彼女は、表向きは居酒屋の女将だが、裏社会の情報通であり、覇真の心の拠り所でもあった。
扉が開き、柚月が静かに入ってくる。
淡い香水の香りが、覇真の鼻をくすぐった。
長い黒髪がゆるく乱れ、艶やかな瞳がこちらを見つめる。
「遅かったわね」
彼女の声は柔らかく、しかしどこか強い意志を秘めていた。
「悪い……仕事が長引いて」
覇真は短く答え、隣の席を差し出す。
二人は向かい合い、ひとときの安らぎを分かち合った。
柚月は熱燗を注ぎ、覇真の手を優しく包み込む。
「お前には、いつも命がかかってる」
「それでも俺は、この道を選んだ」
その夜、酒の酔いが進むにつれ、二人は距離を縮めた。
覇真の荒んだ心が、柚月の温もりに少しだけ溶かされる。
やがて、柚月は覇真の胸に顔を埋め、囁いた。
「あなたが変わらなければ、私はここにいられない」
その言葉に、覇真の心が痛く締め付けられた。
しかし、裏社会の闇は二人を容赦なく襲う。
敵対勢力の襲撃が迫っている。
柚月は静かに覇真の耳元で言った。
「逃げられない。だから、強くなって」
二人の逢瀬は、甘くも苦く、そして悲しい未来の予感を孕んでいた。
拳と刃の世界で咲いた、一瞬の恋花。
その香りは、やがて血に染まる。