第五章:功二との出会い
名古屋・金山の裏手にある場末の雀荘兼賭場。
そこに、ひときわ異様な雰囲気を纏った若造がいた。
肩まで伸びた黒髪、眼光は獣そのもの。
無口で、常に周囲の隙を探るような目付き。
名は舟木功二。
「お前が噂の覇真か」
酒と血の匂いがこびりついた座敷で、功二は俺に声をかけてきた。
見上げる視線に、一分の怯えもない。
「そうだ。……舟木功二」
名前を口にした瞬間、俺の胸の奥がざわりと揺れた。
獣だ。この男、俺と同じ匂いがする。
その日、二人の初仕事は債務者一家の強制排除だった。
女房と娘を抱えた男の家を夜討ちし、証文を燃やし、娘を質に取るという仕事。
畳に縛られた娘は十四、震え声で泣いていた。
先輩たちは薄笑いで、酒をかけ、服を裂き、順番を決めていた。
そのとき功二が、黙って短刀を床に突き立てた。
「……やめろ」
座敷が凍りつく。
「何だと?」
先輩が怒鳴り、拳銃を構えたが、功二は動じず、ただ女の子の前に立ち塞がった。
その姿に、俺は衝撃を受けた。
極道の道に入った者が、ここまで命を張って筋を通すのか。
結果、先輩三人は功二に骨を折られ、指を詰めさせられる羽目になった。
岡村総長は功二の度胸を買い、俺と兄弟盃を交わさせた。
その夜、盃の席で覇真は言った。
「……お前、なんで極道になった」
功二は酒を口に含み、炎のような目で答えた。
「守りたいもんがあった。けどな、そんなもん、クソの役にも立たねぇって知った」
その言葉に、俺は初めて共鳴した。
獣同士の友情。
狂気と仁義が交わる瞬間。
ここから、二人の破滅の舟が動き出したのだ。