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第十章:功二との抗争の夜
鈴鹿一家の事務所は静寂に包まれていたが、空気は張り詰めていた。
覇真と功二、かつての兄弟盃を交わした者同士の亀裂が、今まさに爆発しようとしていた。
二人の間に横たわるのは、組の方針の対立。
覇真は教団化を目指し、血の教義を広めようとした。
一方、功二は昔ながらの極道の仁義を守ろうとしていた。
その夜、激しい口論の末、言葉は拳と刃に変わった。
狭い事務所で火花を散らす二人。互いの命を懸けた激闘が始まった。
拳が激しくぶつかり合い、刃が飛び交う。
血と汗が入り混じり、二人の叫びが闇夜に響いた。
功二の鋭い一撃が覇真の腕を裂く。
覇真は痛みを堪え、逆に拳で功二の腹を貫いた。
だが、二人とも互いを殺すことはためらっていた。
それは兄弟としての絆が微かに残っている証だった。
激闘の果て、二人は血まみれで立ち上がり、息を切らせながら互いを見つめた。
功二は言った。
「お前とは違う道を行く。だが、俺はお前を認めてる」
覇真は頷いた。
「俺もだ。だが、俺たちはもう戻れない」
二人の抗争は、破滅へ向かう船の航路を定めたのだ。