ラウンド4・前半:『IFの選択』~もしあの時、違う道を選んでいたら~
あすか:「ラウンド3では『徳と覇業』という、為政者の根幹に関わるテーマで、魂のぶつかり合いを見せていただきました。誠にありがとうございました!さて、続くラウンド4では、がらりと趣向を変えてみたいと思います。テーマは…『IFの選択』!歴史に『もしも』はタブーと申しますが、今宵は特別。皆さまが過去の重大な岐路において、もし別の道を選んでいたら…ご自身の運命、そして三国志の歴史はどのように変わっていたのでしょうか?その禁断の扉を、少しだけ開いてみたいと思います。」
(スタジオの雰囲気が幻想的に変わり、背景には無数の分岐する道を示す映像が映し出される。)
あすか:「このラウンドでは、お一人ずつ、クロノスが提示する『IFのシナリオ』について、ご自身のお考えや、その選択がもたらしたであろう結果について語っていただきます。そして、他の皆さまにも、そのIFの世界についてご意見を伺ってまいりたいと思います。では、最初のIFの扉です」
(クロノスがピロリと音を立て、最初のIFシナリオを空間に投影する。それは、呂布奉先に関するものだ。)
あすか:「最初のIFは、呂布奉先殿についてです!(IFシナリオを読み上げる)『もし、下邳の戦いで曹操殿に降伏した後、再び裏切ることなく、その武勇を曹操軍のために振るい続けていたら…?』呂布殿、このIFシナリオ、いかがでしょうか?もしあなたが曹操殿に忠誠を誓い続けていたとしたら、どのような未来が待っていたとお考えになりますか?」
呂布:「(腕を組み、少し複雑な表情で考え込む)…曹操に、この俺がずっと頭を下げ続ける、だぁ?あんまり想像つかねえな。だが…(少し声を落とし)あの時、陳宮の言うことを聞いて、もっと上手く立ち回っていれば…あるいは、曹操の下でなら、もっとデカい戦場で暴れられたかもしれねえな。」
曹操:「(冷静に呂布を見つめ)奉先、お前の武勇は確かに惜しかった。もしお前が心から我が軍門に下り、その力を正しく用いていたならば、袁紹との戦いも、その後の数多の戦も、もっと容易に勝利を収められたであろう。お前を先鋒とし、関羽や張遼といった猛将たちと共に敵陣を蹂躙する姿は、まさに天下無敵の軍団であったろうな。」
呂布:「(少し得意げに)だろ?俺がいりゃあ、赤壁みてえな負け戦もなかったかもしれねえぜ、曹操のおっさん!」
曹操:「(苦笑し)それはどうかな。だが、お前の武を活かす場はいくらでも提供できた。問題は、お前が本当に一人の主に忠誠を誓い続けることができたかどうかだ。お前の心変わりは、もはや病のようなものであったからな。」
呂布:「(むっとして)う、うるせえ!あの時は、みんな俺を裏切ろうとしてたんだ!俺は自分を守っただけだ!」
劉備:「(静かに)奉先殿、もしあなたが曹操殿の下でその武勇を正しきことに用い、多くの人々を無益な争いから救うことができたのなら…それは素晴らしいことだったかもしれません。あなたの力は、使い方次第で多くの命を救うことも、奪うこともできたのですから。」
諸葛亮:「(羽扇で口元を隠し)もし呂布殿が曹操殿の麾下で安定して武功を挙げていた場合…おそらく、我が君(劉備)の決起はさらに困難なものとなっていたでしょう。曹操軍の武威は天を衝き、対抗できる勢力は早期に淘汰されていたやもしれませぬ。そうなれば、天下三分の計も絵に描いた餅に終わっていた可能性が高いですな。」
あすか:「呂布殿の選択一つで、三国時代の勢力図が大きく塗り替わっていたかもしれない、ということですね…。呂布殿ご自身は、もし曹操殿に仕え続けていたら、どのような最後を迎えていたと思われますか?」
呂布:「(少し遠い目をして)さあな…戦場で華々しく死ねりゃあ本望だが…案外、曹操のおっさんに上手く使われて、手柄立てまくって大将軍にでもなってたかもしれねえな!そんで、毎日うまい酒飲んで、美女侍らせて…(にやりとする)まあ、それも悪くねえ人生だったかもな!」
あすか:「(微笑み)呂布殿らしい未来予想図ですね。ありがとうございました。…さて、次なるIFの扉をお願いします!」
(クロノスが再び音を立て、今度は諸葛亮孔明に関するIFシナリオを投影する。)
あすか:「続きましては、諸葛亮孔明殿のIFでございます。(IFシナリオを読み上げる)『もし、三顧の礼の折、劉備玄徳殿の招きに応じず、あるいはその後、劉備軍を離れ、曹操孟徳殿に仕官していたとしたら…?』孔明殿、これは非常に大きなIFかと存じますが、いかがでしょうか?」
諸葛亮:「(目を閉じ、しばし沈黙した後、静かに口を開く)…もし、私が劉備様にお仕えしなかった、あるいは曹操殿にお仕えしていたとしたら…まず申し上げたいのは、私の人生は全く異なるものとなっていたでしょう。隆中で草廬を結び、静かに世の趨勢を見守るだけの隠士として生涯を終えていたか、あるいは…。」
曹操:「(鋭い眼光で諸葛亮を見据え)孔明、もしお前が我が幕下に加わっていたならば、私はお前を厚く遇したであろう。お前のその知略、我が覇業のために存分に振るってもらいたかった。郭嘉を失った後の我が軍にとって、お前のような軍師の存在は喉から手が出るほど欲しかったものだ。お前がいれば、赤壁での敗北もなかったやもしれん。」
諸葛亮:「(曹操に軽く一礼し)曹操殿からそのように評価していただけるのは光栄の至りです。しかし、私が劉備様にお仕えしたのは、単にその才能を評価されたからだけではございません。劉備様が掲げられた『漢室再興』という大義、そして何よりも、民を慈しみ、天下泰平を願うその高潔なお心に、私の魂が共鳴したからに他なりません。もし、曹操殿にお仕えしていたとしても、私とそのような心の繋がりを築けたかどうか…。」
劉備:「(感慨深げに)孔明…そなたがわしの元に来てくれなかったら、わしは今頃どうなっていただろうか…。おそらく、理想を抱いたまま、どこかの戦場で露と消えていたに違いない。そなたの知恵と忠義があったからこそ、わしは蜀漢を建国するという夢を現実のものとすることができたのだ。」
呂布:「(横から口を挟み)なんだよ、劉備のおっさん、泣き落としか?ま、確かにこのモジャモジャ頭がいなけりゃ、劉備軍なんて弱小勢力だったろうな!」
あすか:「(呂布を軽く制し)孔明殿、もし仮に、何らかの理由で曹操殿にお仕えすることになった場合、三国志の歴史は具体的にどのように変わっていたとお考えになりますか?」
諸葛亮:「…それは、想像を絶する変化をもたらしたやもしれませぬ。曹操殿の強大な武力と組織力に、私の知略が加われば、おそらく荊州、益州の平定は早期に成り、孫呉もまた、赤壁のような局地的な勝利は得られず、いずれは魏の軍門に下った可能性が高いでしょう。そうなれば、天下統一は曹操殿の御代、あるいはその直後に達成され、いわゆる『三国時代』というものは、存在しなかったか、あるいは極めて短い期間で終わっていたかもしれません。」
曹操:「(満足そうに頷き)うむ、それこそが我が望んだ道であった。無益な戦乱を早期に終わらせ、統一された中華の下で新たな秩序を築く。孔明、お前がその一翼を担ってくれていたならば、歴史はより速やかに、そしてより良い形で進んでいたであろうよ。」
諸葛亮:「(静かに首を振り)しかし曹操殿、そのような形で天下が統一されたとして、それが果たして真に『良い形』であったかどうかは分かりませぬ。力による統一は、新たな火種を生むこともございます。民の心が真に服さなければ、その平和もまた脆いものとなるやもしれませぬ。劉備様の下で目指した道は、遠回りであったかもしれませんが、民の心に寄り添うという点において、私は決して誤っていなかったと信じております。」
劉備:「(涙ぐみながら)孔明…ありがとう。」
あすか:「(感動を覚えつつ)孔明殿の劉備様への揺るぎない忠誠心、そして歴史への深い洞察、誠に胸を打たれます。もし孔明殿が曹操殿に仕えていたら、三国志の様相は一変し、もしかしたら私たちが知る英雄たちの物語も全く異なるものになっていたかもしれないのですね…。ありがとうございました。」
(諸葛亮のIFが提示した歴史の大きな分岐点に、スタジオはしばし静まり返る。それぞれの英雄が、自らの選択の重みを改めて感じているかのようだ。)