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ラウンド1:『我こそが最強』~それぞれの根拠と実績~

あすか:「さて、皆さま、最初のラウンドが始まりました!ここでは、皆さまお一人お一人に、なぜご自身が『三国志最強』とお考えになるのか、その輝かしい実績と揺るぎない哲学を、存分に語っていただきたいと思います。まさに、所信表明演説でございますね!トップバッターは…この方に勢いをつけていただきましょう!武の化身、呂布奉先殿!あなたにとって『最強』とは何か、そしてその圧倒的な根拠をお聞かせください!」


(スポットライトが呂布に集中する。彼は待ってましたとばかりに不敵な笑みを浮かべ、方天画戟のレプリカを軽く持ち上げる。)


呂布:「(立ち上がりはしないものの、身を乗り出して)おう、やっと俺の番か!『最強』だあ?そんなもん、決まってんだろ!この俺、呂布奉先こそが三国志最強よ!なぜかって?そりゃあ、誰よりも強えからだ!小難しい理屈なんざいらねえ。戦場で一番多くの敵をなぎ倒し、一番強い奴を叩きのめした奴が最強!単純明快だろうが!」


あすか:「(目を輝かせて)おお、呂布殿の自信、画面越しにもビリビリ伝わってまいります!具体的なご武勇伝、ぜひお聞かせいただけますか?」


呂布:「武勇伝だあ?ありすぎて何から話しゃいいか分からねえな!まずは虎牢関よ!あの時の俺は、まさに鬼神だったぜ。劉備、関羽、張飛!あの三人が束になってかかってきても、俺一人にかなわなかったんだからな!(劉備と、今はいない関羽・張飛を思いやるように眉をひそめる劉備を見やり、ニヤリとする)あれで天下に『呂布あり』って知らしめてやったのよ!」


諸葛亮:「(冷静に、しかし少し皮肉を込めて小声で)…匹夫の勇、とはまさにこのことですな。」


呂布:「(諸葛亮の声を捉え)あん?なんか言ったか、そこの書生?聞こえねえぞ!」


諸葛亮:「いえ、何も。続けてください、呂布殿。あなたの武勇、拝聴しております。(涼しい顔で羽扇を揺らす)」


曹操:「(面白そうに口元を歪め)確かに、あの時の奉先の武は凄まじかった。我が軍も大いに手こずらされたものだ。」


呂布:「(曹操の言葉に気を良くして)だろ?曹操のおっさんにも分かってもらえて嬉しいぜ!それから、董卓のクソ野郎をぶっ殺したのもこの俺だ!アイツの圧政に苦しむ民を解放してやったんだぜ?これも強さの証ってもんだろ!」


劉備:「(静かに)董卓殿を討ったことは、確かに大きな功績でありましょう。しかし、その後のあなたの行動が、さらなる混乱を招いたこともまた事実では…。」


呂布:「(劉備の言葉を遮り)うるせえな、玄徳!細けえことはいいんだよ!要は俺がやったってことだ!それに、徐州でもそうだ。曹操のおっさんの大軍から、一時的とはいえ玄徳、お前を守ってやったじゃねえか。あの時、俺がいなけりゃ、お前なんかとっくに…(言葉を濁す)」


あすか:「(割って入り)呂布殿の武勇、そして時には義侠心も…確かに記録に残っております!(クロノスに呂布の戦績データを表示する)では、呂布殿。あなたにとって、知略や人徳といったものは、どのように映るのでしょうか?」


呂布:「知略?人徳?そんなもん、力の前じゃ無力よ!どんな策を練ろうが、どんなに人に好かれようが、俺の方天画戟の一振りで全部おしまいだ!結局、最後に立っている奴が一番強い!それが真理ってもんだ!俺は誰にも負けねえ!だから俺が最強だ!文句あっか?ああん?!」


(呂布は胸を張り、挑戦的な視線を他の三人に送る。スタジオには彼の圧倒的な武のオーラが満ちる。)


あすか:「(圧倒されつつも笑顔で)は、はい!呂布殿の揺るぎない自信、しかと受け止めました!まさに『力こそパワー』を体現されていらっしゃいますね!ありがとうございました!…さて、この熱気冷めやらぬ中、次にお話を伺うのは、このお方です。知の巨星、諸葛亮孔明殿!呂布殿の『力こそ最強』というご意見、孔明殿にはどのように響きましたでしょうか?そして、孔明殿の考える『最強』とその根拠をお聞かせください。」


(スポットライトが諸葛亮に移る。彼は静かに呂布を見つめた後、ゆっくりと口を開く。)


諸葛亮:「(落ち着いた声で)呂布殿の武勇、確かに一個人の武としては類稀なるものがありましょう。戦場においては、一瞬の勝敗を左右する力となり得ることも認めます。しかし…(一度言葉を切り、呂布を見据える)国を治め、民を安んじ、大業を成し遂げるための『最強』とは、そのようなものではないと私は考えます。」


呂布:「あんだとコラ!まだ言うか!」


諸葛亮:「(呂布の声を意に介さず)真の『最強』とは、先を見通す目、すなわち深遠なる知略と、それを実行に移すための緻密な戦略。そして、大局を動かすための揺るぎない意志。これらが揃って初めて、『最強』と呼ぶに値するのではないでしょうか。」


あすか:「孔明殿の考える『最強』は、知略と戦略、そして意志…と。具体的なご実績と共に、詳しくお聞かせいただけますか?」


諸葛亮:「(頷き)私が劉備様にお仕えするきっかけとなりました『隆中対』。あれは、天下三分の計を示し、劉備様が進むべき道筋を明らかにしたもの。当時、曹操殿の勢いは絶大であり、孫権殿も江東に確固たる地盤を築いておりました。その中で、劉備様がいかにして独自の勢力を確立し、漢室再興という大義を成し遂げるか。そのための長期的な戦略こそが、私の考える『知の力』の一端です。」


曹操:「(腕を組み、目を細めて)…確かに、あの時の孔明の策は鮮やかであったな。劉備軍があれほど急速に力を増すとは、予想を超えるものであった。」


諸葛亮:「(曹操に軽く会釈し)過分なお言葉、痛み入ります。そして、かの『赤壁の戦い』。曹操殿、あなた様の大軍を前に、我が君と孫権殿の同盟を成立させ、火攻めの策をもって勝利に貢献できたことも、知略の勝利と言えましょう。あの戦いなくして、天下三分の形勢は成り立ちませんでした。」


(クロノスにあすかが赤壁の戦いの図解を映し出す)


呂布:「火攻めだぁ?そんなもん、風向き次第じゃねえか!運が良かっただけだろ!」


諸葛亮:「(呂布に微笑みかけ)運もまた、実力のうち…と申します。風を読むのも、また知略の一つ。そして、その風を待つための忍耐と準備もまた、戦略でございます。その後も、南蛮を平定するにあたっては、孟獲を七度捕らえ、七度放つことで心服させました。単に武力で押さえつけるのではなく、相手の心を掴むことこそが、真の平定に繋がると考えたからに他なりません。」


劉備:「(感慨深げに)うむ、孔明のあの時の粘り強さと深い洞察力には、わしも感服した。武力だけでは、南蛮の民の心は得られなかったであろうな。」


諸葛亮:「そして、我が君の遺志を継いで行った北伐。国力では魏に劣る中、いかにして敵の意表を突き、戦いを有利に進めるか。木牛流馬のような輸送手段の開発も、兵糧という現実的な問題を解決するための知恵。八陣図のような陣形も、寡兵で大軍と渡り合うための工夫。これら全てが、私の考える『最強』、すなわち知略と戦略の結晶でございます。個人の武勇がいかに優れていても、国家間の総力戦においては、大局を見据えた知恵こそが最終的な勝利を導くのです。」


(諸葛亮は静かに語り終え、その理路整然とした主張は、スタジオに知的な緊張感をもたらす。)


あすか:「(深く頷き)ありがとうございます、孔明殿。長期的な戦略、人心の掌握、そしてそれを支える具体的な工夫…。まさに『知は力を制す』という言葉が思い浮かびます。呂布殿の圧倒的な『武』と、孔明殿の深遠なる『知』。早くも『最強』の定義が大きく揺さぶられておりますね!…それでは、次にこの方のお話を伺いましょう。その温かいお人柄で多くの人々を惹きつけ、激動の時代に『徳』の光を示された、劉備玄徳殿!お二方のご意見を踏まえ、劉備殿の考える『最強』とその根拠をお聞かせください!」


(スポットライトが穏やかな表情の劉備に移る。彼はまず、呂布と諸葛亮に敬意を表すように軽く頭を下げた。)


劉備:「(落ち着いた、しかし力強い声で)呂布殿の比類なき武勇、そして孔明の深き知略、いずれも乱世を生き抜く上で欠かせぬ力であったことは疑いありません。わし自身、二人の力を借りなければ、今日この場にこうして座っていることも叶わなかったでしょう。…しかし、わしが考える『最強』とは、個人の武や知を超えたところにあるのではないか、と思うのです。」


あすか:「個人の武や知を超えたもの、と申されますと?」


劉備:「それは…人を惹きつけ、心を結びつける『徳』の力です。わしには呂布殿のような武も、孔明のような知もありませんでした。しかし、わしにはかけがえのない仲間たちがいた。(遠い目をして)関羽、張飛という義兄弟、そして孔明をはじめとする多くの賢臣猛将たち。彼らがなぜ、この劉玄徳と共に歩んでくれたのか。それは、わしが漢王朝の末裔であったからだけでも、高い俸禄を約束したからでもありますまい。」


曹操:「(フッと息を漏らし)…確かに、お前の周りには、不思議と人が集まったものだな。それも一種の才能であろうよ。」


劉備:「(曹操に穏やかな笑みを向け)孟徳殿にそう言っていただけるとは光栄です。わしが常に心掛けていたのは、民を慈しみ、義を重んじ、人を信じること。長坂の戦いでは、曹操殿の大軍に追われながらも、わしを頼って逃げてきた十数万の民を見捨てることができませんでした。あの時、わしは民と共に死ぬ覚悟でした。それが、わしにとっての『義』であり、君主としての務めだと信じていたからです。」


(あすかがクロノスに長坂の戦いの様子をイメージ映像で映し出す。民衆と共に逃げる劉備の姿。)


呂布:「(呆れたように)民なんぞ足手まといだろうが!さっさと見捨てて逃げりゃあ、もっと楽に勝てたかもしれねえのによ!」


劉備:「(静かに首を振り)奉先殿、それがあなたのやり方なのでしょう。しかし、わしにはできませぬ。民あっての国、民あっての君主です。そして、三顧の礼をもって孔明を迎えた時もそうでした。わしはただ、この乱れた世を正し、民を安んじたいという一心で、賢者の力を借りたいと願っただけです。身分も実績もないわしのために、なぜ孔明が力を貸してくれたのか…それは、わしのその想いが彼に届いたからだと信じております。」


諸葛亮:「(劉備の言葉に深く頷き)劉備様のあの時の真摯なお姿、そして天下万民を思うお心に、私は生涯を捧げる決意をいたしました。あの方の『徳』こそが、我々を一つにまとめ、不可能を可能にする力となったのです。」


劉備:「そして、多くの困難を乗り越え、蜀漢という国を建国できたのも、わし一人の力では決してありません。仲間たちとの絆、そして民からの信頼…それら全てが合わさって初めて成し遂げられたのです。だからこそ、わしは思うのです。真の『最強』とは、多くの人々から愛され、信頼され、共に大義を成し遂げようという心を奮い立たせる…その『魅力』と『徳』の力ではないかと。それこそが、わが生涯をかけて追い求めたものであり、わが最強の根拠でございます。」


(劉備の言葉は、スタジオにいる他の英雄たち、そしてあすかの心にも温かく響く。彼の語る「徳」の力は、武や知とは異なる、しかし確かな強さを感じさせた。)


あすか:「(感動を隠せない様子で)劉備殿、ありがとうございました…。仲間との絆、民への慈しみ、そして揺るぎない義の心。それらが合わさった『徳』の力こそが最強であると…。お話、深く胸に刻まれました。…さて、熱いお話が続いておりますが、最後にこの方にご登場いただきましょう。この乱世において、最も大きな結果を残したお一人、曹操孟徳殿!これまでのお三方のご主張、そして曹操殿ご自身の『最強』論とその根拠を、お聞かせいただけますでしょうか!」


(スポットライトが、静かに腕を組んで他の三人の話を聞いていた曹操に当たる。彼の表情は読み取りにくいが、その瞳の奥には確固たる自信が宿っている。)


曹操:「(ゆっくりと、しかし威圧感のある声で)ふん、呂布の武、孔明の知、そして玄徳の徳か…。それぞれ、一理あると言っておこう。だがな、どれも所詮は『手段』に過ぎん。あるいは、心地よい『理想』かもしれんな。(劉備を一瞥する)しかし、この曹孟徳が語る『最強』とは、もっと現実的で、そして揺るぎないものだ。」


あすか:「現実的で、揺るぎないもの…と申しますと?」


曹操:「それは『結果』だ!この戦乱の世において、誰が最も広大な地を平定し、最も多くの民に秩序をもたらし、新たな時代の礎を築いたか!その『実績』こそが、最強の動かぬ証であろう!私は黄巾の乱で頭角を現して以来、董卓の暴政を正さんと兵を挙げ、その後、中原に割拠する数多の群雄を打ち破ってきた!」


(あすかがクロノスに、曹操が制圧した中原の地図と、官渡の戦いの概要を映し出す。)


曹操:「最大のターニングポイントは、官渡の戦いよな。あの時、袁紹の本初は我が軍の数倍もの兵力を有しておった。誰もが我が敗北を疑わなかったであろう。だが、結果はどうだ?私の戦略と決断、そして許攸のような裏切り者すらも受け入れる度量によって、袁紹の大軍を打ち破り、中原の覇権をこの手に握ったのだ!」


呂布:「(少し不満そうに)裏切り者を使うなんざ、褒められたもんじゃねえな。」


曹操:「(呂布を鼻で笑い)奉先、お前にだけは言われたくない言葉だな。だが、それもまた現実だ。使えるものは何でも使う。清濁併せ呑んでこそ、この乱世は治められるのだ。その後、私は唯才主義を掲げ、身分や過去にとらわれず、才能ある者を積極的に登用した。郭嘉、荀彧、荀攸、程昱、その他多くの賢臣たちが私の下に集い、その知恵を貸してくれた。彼らの力なくして、私の覇業は成し遂げられなかったであろう。」


諸葛亮:「(静かに)確かに、曹操殿の人材登用の手腕は見事なものでした。敵であった張繡殿すらも重用された度量には、学ぶべき点もございます。」


曹操:「うむ。そして、私はただ戦うだけではない。屯田制を実施し、戦乱で荒廃した農地を復興させ、兵糧の確保と民の生活の安定を図った。法を整備し、新たな官僚制度を導入し、国家としての体裁を整えた。これら全てが、最終的に魏という強大な国家を築き上げるための布石であったのだ。玄徳、お前の言う『民のため』というのであれば、実際に戦乱を収め、民に安定した生活をもたらした者こそが、真に民のためを思ったと言えるのではないかね?」


劉備:「(静かに反論する)孟徳殿、あなたの言う安定が、力による支配の上に成り立っているのだとすれば、それは真の安寧とは言えませぬ。民が心から喜んで従う世でなければ…。」


曹操:「(劉備の言葉を遮り)理想論は聞き飽きたわ!現実に目を向けろ、玄徳!この曹孟徳が天下の三分の二をその手に収め、実質的にこの国の新たな秩序を創り上げたのだ!私の死後、息子の曹丕が皇帝となり、魏王朝を開いたが、その全ての基礎はこの私が築いたもの!これ以上の『結果』があるか?これ以上の『最強』の証明があるか!?私の成し遂げた覇業こそが、三国志における最大の『最強』の証なのだ!」


(曹操の言葉は、絶対的な自信と実績に裏打ちされ、他の三人を圧倒するような迫力があった。彼の語る「結果」としての最強は、否定しがたい重みを持っている。)


あすか:「(ゴクリと息をのみ)曹操殿、ありがとうございました…!力強いお言葉、そして揺るぎない実績の数々…。まさに『結果こそが最強を物語る』という気迫が伝わってまいりました!さあ、皆さま!これで四者四様の『我こそが最強』という主張が出揃いました!呂布殿の『武』、諸葛亮殿の『知』、劉備殿の『徳』、そして曹操殿の『覇業』…。どれもが説得力に満ちており、早くも甲乙つけがたい状況です!(クロノスに四人の主張をキーワードで表示する)いやはや、このラウンドだけでもお腹いっぱいになりそうな濃密な議論でございましたが、まだまだ序の口でございます!この後、これらの主張をさらに掘り下げ、互いにぶつけ合っていただきます!ラウンド1『我こそが最強』は、ここまでとさせていただきます!」


(スタジオの照明が一度少し暗くなり、ラウンド終了の音楽が流れる。対談者たちは、それぞれの主張を終え、次のラウンドに向けて静かな闘志を燃やしているかのようだ。)

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