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七列強盛衰記  作者: EL
第一幕 WW1
3/14

003 大公の暗殺、大戦争への始まり(塞)

ここは大セルビア、首都ベオグラード。この地で、路地裏に潜むレヴェード・ハインリヒは大きく息を吸った。

レヴェードは、つい6日前にドイツ皇帝ヨーゼフ三世を暗殺し、ついでにシラルテチェコスロバキア首相も暗殺した男であった。裏では雇われ暗殺者で名が通っているものの、実際にはロシア帝国宰相ピョートリの元で雇われている特殊部隊の者であった。


「この仕事を最後に、君には余生を過ごしてもらおう」と、ピョートリは彼に約束した。しかし、レヴェード自身その言葉は偽りとは言えないまでも自らが切り捨てられるのだという自覚はあった。しかし、妻を人質に取られている以上彼が逆らうことはできない状態であった。


少し前に産まれた娘はなんとかドイツに逃がせた、彼自身がドイツ人であることから孤児院に入れても高い金を握らせれば嫌な顔はされなかった。だが、流石に大々的に逃げることは叶わなかったのだ。

自らの行いに辟易することはあれど、止めることはできない。彼は自嘲し、そして表情を引き締めた。


最後の任務は、オーストリア=ハンガリー二重帝国の大公エレン・テイラー=ストームエルデとその妻マリアの殺害。今回の任務のため、彼は天才的な記憶力で自らの祖国語とは違う言語であるセルビア語を習得(ロシア語に似ていたため、わずか3日で覚えた)。自らの肌も少し黒く染め、セルビア人としてどこから見てもおかしくない姿をとった。


なおも溢れそうになる不満は、自ら暗殺したシラルテの嘆きが消した。

レヴェードは、悩みを振り切るようにして頭を振るい、そして二度と宿に戻ることはなかった。



「見よマリア、我のためにこのような人だかりができておるぞ」

「まぁ、すごいですわねえ。これも偉大なるテイラーの血のおかげかしら」

「わっはっは、そうかものぅ!」

馬車の中で、二人の30代後半ほどの男女が談笑していた。片方はヨーゼフに似た大丈夫で、もう片方は小柄な女性だった。レヴェードの暗殺対象、エレンとマリアである。


そして彼らは談笑しているが、実際に集まっているのは大セルビア派と呼ばれる左派集団であり、行おうとしているのは抗議であるのだが、まあ言語構成からして違うと言われる二つでは通じるはずもなく。

その結果、二人には歓迎しているようにしか思えなかった、というのである。


「...?馬車を止めろ」

だから、馬車の前に立った一人の男に困惑し、馬車を停める愚を犯した。


御者が男に何かを言おうとした瞬間、男は外套を脱ぎ捨てた。中には爆薬を巻いた体があり、自らも狂気的な笑みを浮かべていた。そして、一言。

「ypaaaa!」

そう言って、自ら馬車に飛びつき。

いつの間にか着いていた火が、一本目の爆薬を着火させ。


連鎖的に破裂した爆薬が、本来以上の威力と共に馬車を中にいる男女ごと木っ端微塵に吹き飛ばした。



1915年5月7日、ドイツ帝国はチェコスロバキア連邦へ、オーストリア=ハンガリー二重帝国は大セルビア帝国へ宣戦を布告した。

独立保障の都合上英仏も独墺と争うこととなり、同盟を理由にイタリア王国、ギリシア王国、オスマン帝国、極東の女真・満洲帝国が同盟国として、盟約を理由にロシア帝国、スペイン帝国、ポルトガル王国、大日本帝国が協商国として参戦する大戦争へと発展することとなる。


この後の出来事なども鑑みて、5月は戦乱の月と呼ばれるようになるのだが...それはまた別の話。

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