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七列強盛衰記  作者: EL
第一幕 WW1
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001 偉大なる戦争(捷)

ルドルフ・ヴィルアドラーは、ドイツ帝国の国民であった。最近は、チェコスロヴァキアのプラハに便利屋を自称する店を置き、いずれ訪れるであろう祖国とチェコスロヴァキアの統合を夢見て日々靴を修繕し、釘を作り、肉を売っていた。


そうして過ごしていた1915年の或る日、ルドルフは遠目にある人物を見かけた。190㎝を越える大きな背丈に、茶の髭と髪を蓄えている大丈夫。左目にはモノクルを掛けており、傍から見てもその人物が高貴であるのだと言う風格を纏っていた。


「皇帝陛下だ...。」

彼の名は、ヨーゼフ・カール・フランツ・エル・フォン・ハプスブルク=ロードリンゲンと言い、ドイツ国では『Österreich』(エスターライヒ、東の帝国という意味)と呼ばれる、チェコスロヴァキアの周囲をドイツ帝国、ロシア帝国と共に三分する大帝国『オーストリア=ハンガリー二重帝国』の下で嘗て力を持っていたものの失脚し追放されたハプスブルク=ロードリンゲン家の一族の者だった。


また、ローマ神聖帝国時代の皇帝ヨーゼフ二世がハプスブルク=ロードリンゲン家へと亡命したと言う歴史的要因から彼のドイツ帝国皇帝への即位は『王の帰還』とも呼ばれ、主にヨーゼフ3世と呼ばれている。


ヨーゼフ三世を見かけたルドルフは、遂に祖国とチェコスロヴァキアが併合されるのだと考えた。

今まで、ヨーゼフ三世は帝国内にて政治を行っており、他国との干渉はヴィルヘルミナ外相が行ってきた。

しかし、皇帝陛下が直々に『元』植民地であるこの地に来たと言う事は、チェコスロヴァキアが再びドイツ帝国―――いや、ドイツ連邦への再編入を果たすと言うことに他ならないだろう。


※1874年、ドイツ連邦から一部地域が離脱し、その残りがドイツ帝国となった。そして、離脱した一部地域に含まれるのがチェコスロヴァキアなのである。


だが―――いまだ誰も気付いていなかったことがあった。

それは、ドイツ帝国皇帝へのチェコスロヴァキア右翼の怨み。


30分後。昼食を終え、営業を再開させようとしていたルドルフの耳に、遠くからくぐもった破裂音が聞こえてきた。ルドルフは軽く眉をひそめたが、気にせず営業を再開した。


―――時は少し戻る。


ドイツ皇帝ヨーゼフ・カール・フランツ・エル・フォン・ハプスブルク=ロードリンゲンと、チェコスロヴァキア連邦首相シラルテ・ヴィルナは会談をしていた。


「このような機会にお越しいただき、誠にありがとうございます、皇帝陛下」

シラルテがさも慇懃そうに深く白髪をヨーゼフに見せ、直後ヨーゼフはそれを遮った。

「余は貴公に期待している。貴公はこのチェコスロヴァキアを良く治め、そして余の元にこの地を返すと言うのだからな」


常に不機嫌そうな顔であるヨーゼフの顔をみて心の中で(それはお前が脅すからであろうが)と憎々しげに罵ったシラルテではあったが、其のことはおくびにも出さず何気ないような顔で続けた。

「いえいえ、最近では我が方でも陛下の偉大なる統治を遮って政権を奪取せんとする者どもが蔓延っていますからなあ。皇帝陛下にお越しいただいたのも、この場で直接講和を行うためなのです」


ヨーゼフはその反応に満足した様に髭を撫で、

「うむ。余は善い為政者とは呼べぬだろうが、偉大なる祖国の最高の為であれば余はいくらでも悪王と呼ばれよう。そうして後の祖国に尽くすことは出来るのだ」

シラルテは少しの間面くらったが、さも納得したかのような曖昧な笑みを見せた。そして同時に、時計を盗み見る。

―――残り5分。

シラルテはほくそ笑んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] これがあのうrlの正体なのか…?…違うか。
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