24話 星の空洞 3
「な、なんだ……?」
ブラスの頭上を通り水弾を打ち消した極太の光は、そのまま勢いを落とさずに遠くのロブスターを貫く。
一瞬でHPを全損したロブスターは華々しい虹のエフェクトを残しながら消滅した。
「【レインボービーム】……危ないところでしたね」
その声に振り返ると、立っていたのは可愛らしいハートをあしらったステッキを構える魔法少女だった。
『Player:魔法少女リリス』
ピンクと黒のツートンカラーをしたツインテールと、似た配色でフリル付きの衣装はまるで半分闇落ちしたかのような印象である。
「あんたは……?」
「私は魔法少女リリス。あまりじろじろ見ないでください、マジで」
「わ、悪い、そんなつもりは……」
少女は心なしか顔を赤らめているように見えたが、詮索はしないほうがよさそうだ。
衝撃的な出来事のあとでうまく話せずにいると、シスが横から飛びついてきた。
「無事でよかったよぉぉ! お兄ちゃぁぁぁん! ばかばかばか!」
「シ、シス!? 悪かったって!」
「ぐすっ、ううっ。その、私もあんまり役に立てなかった……ごめん」
「シス……。そんなことないぞ、よくやった」
しばらくなだめていると、リリスを名乗る少女が咳払いをする。
シスが顔を真っ赤にして飛びのいたので、ブラスは会話を続ける。
「さっきは本当に助かった。俺は《ブラスターズ》のリーダー、ブラスだ。パーティを代表して礼を言わせてほしい」
「どういたしまして」
「それで、いくつか聞きたいことがあるんだが、構わないだろうか」
「多くを語らないのが私のポリシー。手短にお願いします」
「お、おう」
変わった人だなと思いつつも、返答を肯定と受け取ったブラスは質問を始める。
「まず、ツルハシを持った茶髪の男を見かけなかったか? ヒロシっていう名前なんだが」
「ああ、あの人ですね」
「見たの!? あいつは無事なの!?」
ブラスを押しのけてシスがすごい勢いで食いつく。
「はい。心配だったので帰還用アイテムを渡して街に帰らせました」
「帰還用アイテムだって? そんなものがあるのか……」
「ひとつしかない貴重なものでしたが、ここは生産職には危険すぎる場所だと思いましたので」
「そう……とにかく無事なのね。よかったわ」
シスが胸をなで下ろす。
ブラスも内心でホッとした。
「ヒロシさんは俺たちのパーティにいたんだが、このエリアに来るときにはぐれてしまったんだ。誘ったのは俺だし、あとで謝らなくちゃならん」
「はて、彼は自分が悪いと言っていましたよ。なんでも敵の殻を早く削りすぎて特殊条件を達成してしまったとか」
「いいや、責任は俺にある。俺がもっと気をつけていれば分断も防げたはずだ。……ん? 2人してどうかしたか?」
リリスだけでなくシスまで呆れたような目を向けてきたので、たじろいでしまう。
「別に。お兄ちゃんってほんっとお兄ちゃんだなーって思っただけよ」
「なんだよそれ……。そうだ、リリスさんはどうやってここに来たんだ?」
「ああ、実はあなたたちの戦闘を見ていたんです。結界の外から様子を見ていたのですが、地面が割れて結界が消えたのを見てつい飛び込んでしまいました」
「「ええっ!?」」
まさかの展開にブラスとシスの声が重なった。
戦闘中は周囲を把握していたつもりだったが、まさか入り口に人がいたとは。
「私たち以外にプレイヤーがいたなんて……」
「あ、ああ、びっくりだ。飛び込んだことにも驚きだが」
「いいじゃないですか、おかげであなたたちも助かったんですし。せっかくですし、私が護衛になりましょう」
「いいのか? って、なんでリリスさんはこんなに強いんだ? あの虹の光線、一発で敵を倒してたよな」
「強き力には制約がつきもの。この状態でいられる時間は長くありません。つべこべ言わずに行きますよ」
「ま、待ってくれ、よければパーティを組んでほしい。あとトモエさんを起こさないと」
ずっと気絶しっぱなしの少し残念なトモエの肩を叩いて起こし、いきさつを説明する。
彼女の驚き様を見て、「そりゃそうなるわな」と苦笑する兄妹であった。




