表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

1話 ヒロシ、ハッキング依頼を受ける

 最新式のコンピューターで埋め尽くされた地下室にて、西田ヒロシは一人でチートツールの開発に没頭していた。


 きっかけは数週間前に送られてきた電子メールで、来月リリースされるというオンラインゲームのハッキング依頼をされたことだ。


 ヒロシは大戦中にサイバー傭兵として名を上げており、戦後も別名義でフリーランスのハッカーを続けていたため、こういった依頼が来るのは珍しくない。


 ただ、今回の依頼のハッキング対象は従来のネットゲームではなかった。

 ファンタジー世界を実体験できるVRMMORPG『ワンライフワールド』――最先端の技術が注ぎ込まれた没入型(フルダイブ)VRゲームらしい。


 非侵襲型VRマシンによる世界初の本格的没入型(フルダイブ)ゲームということもありセキュリティは堅牢のはずで、ハードウェアの構造についても情報がほとんど出回っていないため、ほぼゼロからのクラッキングになる。

 そもそも戦後の暗号化技術と人工知能の飛躍的発展によりハッキングそのものが困難になりつつあり、日に日に難易度が上がっているのだ。


 ただ、依頼主も当然その難易度を把握しているのか、2000万円という巨額の成功報酬を提示し、内500万円を前払いすると言ってきた。

 おまけにどこで入手したのか、来月発売予定のはずのハードウェアとゲームソフトをすぐにでも提供してくれるそうだ。


 依頼内容は新規キャラクターのレベルを自由に変えられるようにするチートの開発で、加えて万が一ばれても簡単にBANされないようプロテクトをかけてほしいとのこと。


 目的も不明でかなり胡散臭い依頼だが、リスクに見合う報酬であることは確か。

 なぜこんなしょうもないことのために2000万円も出せるのか不思議でならないが、その馬鹿馬鹿しさは気に入った。

 そしてなによりヒロシは依頼が困難であればあるほどやる気を出すタイプだった。


(いいね、自分の限界に挑戦できるいい機会だ。それに2000万円……成功したら息抜きにバカンスにでも行こうかな)


 欲に負けたヒロシは依頼を受けることを決意する。


 後日、実際に500万円とゲームが送られてきたのを確認し、ハッキングを開始するのであった。



***



 ――2085年、8月12日、午後1時。



「できた、できたぞ……!」


 あっという間に1ヶ月が流れ、依頼主が積極的に協力してくれたこともあって、なんとかリリース当日に準備が整った。ここ数日ろくに寝ておらず頭痛がひどい。


 軽くストレッチし、エナジードリンクの残りを飲み干してチートツールを起動する。レベルは思い切って999に設定することにした。ちなみにシステム上の最大レベルは200である。


 あとは実際にログインして不具合がなければ依頼完了だ。

 ゲームは数分前にサービス開始しているので、パパッと動作検証を済ませて終わりにしたい。


 前払いされた金で購入していた高級マットレスに寝ころび、マスクともヘルメットとも呼べる洗練されたデザインのVRマシン『DREAMET』を頭に装着する。素晴らしい寝心地だ。


 セットアップはすでに済ませており、起動して利用規約に同意すると微弱な電気が脳内を刺激し、睡眠へと誘う。これは一度睡眠状態になることで現実世界での神経系を意識から切り離すためである。


 眠気に身を任せると、ワンライフワールドのタイトル画面とともに意識が覚醒した。


 まずは事前登録で作ったアカウントでログインする。

 説明書に書かれてある通り、基本的に脳内でコマンドを意識するだけで操作することができた。脳波を解析して強い思考を感知しており、この技術はすでに現実世界でも普及しつつある。


 派手な音楽とともに流れ始めたオープニングムービーを当然のごとくスキップし、キャラメイクに取り掛かる。


(まずは名前を入力してください、か。ヒロシで決定、と)


 ネット上で本名を使うのはあまりよろしくないのだが、ありふれた名前なので気にしない。


 アバターの外見設定に移ると、視界の真ん中にヒロシそっくりな細身の男が布の服を身につけ、やる気のなさそうな顔で片手剣を構えていた。母親譲りの美形が徹夜の疲れで台無しに見える。

 身長もリアルと同じで、成人男性の平均よりやや高いくらい。

 二十代後半でありながら、童顔気味なせいで大学生くらいに見える。あまり人と会う機会がないので、気にしていないが。


 性別と体格は生体情報に基づき固定されている。リアルの身体との差異を減らし、悪影響を防ぐためだ。

 キャラクターの種族はデフォルトの人族を始めとしてエルフや獣人など数種類の中から自由に選べる。人族以外にすると外見が変化するほか、種族ごとに様々な特性が付与される。

 他に変更できるのは髪型と髪色、そして瞳の色。

 顔も少し弄れるが、あくまでリアルの顔が元になっているので微差だ。


 特にこだわりのないヒロシは、種族を人族、容姿もデフォルトの茶髪碧眼ショートヘアのままで決定した。


 次は肝心のステータス振り分けだった。

 説明によるとレベルアップで増えるポイントを消費してキャラを自由に強化できるもので、キャラメイクの時点で5ポイントを振れるらしい。


 そう、説明には5ポイントと書かれているのだが――


Lv:999

PT:4995


(よしィィィッ!! 2000万円!!)


 1ヶ月の成果を実感し、ヒロシは心の中で興奮気味にガッツポーズをした。

 連続徹夜明けのテンションに加え、久々の高額な報酬金と達成感で理性が吹っ飛んでいるため若干狂っている状態である。


 依頼主に報告するため、早いところ終わらせることにしたヒロシは大量にあるポイントを振り分けた。



POW(筋力):0→999

VIT(耐久):0→999

SPD(素早さ):0→999

DEX(器用さ):0→999

MGC(魔法力):0→999



 ……いかにも器用貧乏なステータスだが、各能力値の上限が999だったので仕方がない。

 このまま決定すると、鈴のような効果音が鳴り視界が白い光で埋め尽くされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ