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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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お下がり

 一方、琴美の方も、淡々と学校に行く準備をしていた。

 本当は高校にも通うつもりはなかった。勉強も好きじゃないし、決して稼ぎが良いわけでもない兄に学費の負担をさせるのは気が引けた。

 けれど、<奨学金>を利用することで、将来、自分でも学費の分を返済していけるようになったのは助かった。

 しかも兄の一真が機転を利かせて、

「奨学金は学費として直接学校に支払われるから、現金としては入ってこない」

 と両親に噓の説明をして誤魔化してきたことで、使い込まれることを回避できたのは幸いだった。現金で支給されることを悟られたら間違いなく使い込まれてしまっていただろう。

 家庭の事情が劣悪だということで相談し、保護者を一真とし、奨学金が振り込まれる口座は新たに作り、通帳もキャッシュカードも職場のロッカーに保管し、一切、両親の目には触れさせなかった。

 それを徹底したことでかろうじて何とかなっている。

 なお、奨学金の返済についてはもちろん琴美にその義務が生じるが、一括で学費を用意するのが困難だから利用しただけで、実際には一真が返済していくつもりである。

 ちなみに一真が公立高校に通った時には自治体による<就学支援>だけを利用したため、それこそほとんどが行政から直接学校に支払われており、この時のことが両親の頭には入っているのだろう。

 それは当然、小学校の時から利用しており、実は年二回、学校で必要になる様々な物品を購入するための補助として少しばかりの給付金が出るのだが、両親はそれすら使い込んでしまい、一真が小学校の頃に使った、

 <ランドセル>

 <鍵盤ハーモニカ>

 <リコーダー>

 <体操服>

 <定規・コンパス>

 <習字セット>

 <裁縫セット>

 <彫刻刀>

 <辞書>

 等のほとんどは、両親が使っていたもの、両親が知人から譲り受けた(脅し取った)ものだった。中学の制服すらそうである。

 同級生が真新しいそれらを使う中、一真だけが明らかに使い古されてくたびれたものを使っていた。琴美に至っては、さらに一真が使っていたもののお下がりである。ランドセルだけは母親が使っていたもののお下がりだったので赤いそれだったが、でなければ一真が使っていた黒いランドセルをそのまま使わせるつもりだったようだ。

 このことも、<イジメ>の原因になりそうなそれではあったものの、先にも述べたように一真や琴美が通った学校は、イジメに対して積極的に対処する学校だったため、幸いにも免れていたのだった。

 もっとも、それでも当然のように古いものを使っていることを揶揄する生徒は少なからずいたが。あくまでそういう行為がエスカレートしなかったというだけだ。



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