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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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幽霊

 風呂を終えた後、二人してTシャツにジャージのボトムという格好で寛ぐ。

「学校の課題は?」

 一真に訊かれると、琴美は、

「ん……大丈夫……」

 動画を見ながら応えた。嘘ではなく本当だった。家に帰ると両親がなんだかんだと邪魔をして課題どころではなくなるので、学校の図書室などで終わらせてから帰るのだ。部活には入っていない。

 学校での琴美は、

『幽霊』

 とあだ名されるくらいにはほとんど誰とも関わろうとしない生徒だった。ファッションに興味もないが取り敢えず清潔そうにしていることもあってか見た目はそれほど悪くないので、

『こいつモテないからちょっと優しくしてやったらコロッと落ちるに違いない』

 的に侮った男子生徒に声を掛けられたりするものの一切なびかないこともあって、

「なんだよ! 陰キャブスのクセに調子乗ってんじゃねーよ!」

 などという捨て台詞と共に去っていくというのがいつものパターンだった。

 けれど、自宅で、気に入らないことがある度に目立たないところに煙草の火などを押し付けてきたり、地味に効果のある関節技を決めてきたりする理不尽な父親と、

「マジあんたなんか生むんじゃなかった。てか、勝手に生まれてきてんじゃねーよ、邪魔なんだよ、ゴキブリ!」

 等々、存在そのものを貶めてくる母親の感情を逆撫でして余計に状況を悪くするのを避けるために自我を殺すことに比べれば、それこそ蠅が寄ってきてる程度のことでしかなかった。

 だからダメージなどない。


 そういうこともあってイジメを受けやすいタイプではあっただろうが、幸いなことにその辺りの対応については丁寧な学校に通えたことで、苛烈な<イジメ>はほとんどなかった。精々、クラス全員から無視されるか、陰口を叩かれるくらいであって、直接的な暴力などはなかったのだ。

 教師も、個人面談などに現れるのは決まって兄であり両親は一度も現れたことがない上にPTAにも一貫して不参加の姿勢を貫いていることであまり好ましくない親であることは察しており、気を遣ってはくれていた。イジメの対象になりやすい傾向にあることも承知、職員会議などでは、

『特に注視していくべき生徒である』

 と議題に上がる常連でもあった。

 これは、兄の一真が在学中も同じで、特に一真の方は<普段はおとなしいが実はキレやすい性格>だったこともあり、特に慎重な対応が求められていた。

 小学校の六年生の時など、原因は相手が先に暴力を振るってきたのが切っ掛けだったものの教室内で大喧嘩になったこともあったのだった。



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