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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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似た者兄妹

 本当に心底嫌で嫌でどうにか、

『事故で死んでほしい』

『通り魔に襲われて殺されてほしい』

 と願わない日はなかった両親がいなくなったことを宅配ピザでささやかに祝った後、一真と琴美は何事もなかったかのように片付けを行い、一真はコーヒーを、琴美はカフェオレを飲みながらそれぞれスマホでネットをやっていた。

 そして、実に冷めた表情のままで、

『クソ親がおらんくなったぞーw』

『ヤッベーテンションあがるーw』

 的な呟きを延々と上げていた。

 そう。ネット上のテンションとは全くそぐわない表情で。『テンション上がるw』と言いつつ、その表情は能面のように強張ったままで。

 感情を表に出すことを避けてきたあまり、見た目のそれと内心とが乖離してしまっていたのである。

 兄妹揃って。

 その意味では、実に<似た者兄妹>ではあっただろう。

 さらには動画配信サイトで動画を見漁り、しばらくすると、

「風呂、入るか……?」

 一真が尋ねたものの琴美は、

「お兄ちゃん、先に入っていいよ……」

 動画がまだ途中だったことでそう応えた。すると一真は「ん……」と呟いて立ち上がり、ユニットバスの前で、琴美から見えるところで服を脱ぎ、裸になって風呂場に入っていった。脱衣所がないのだ。実際にはユニットバスの前にカーテンが吊るされていて簡易の脱衣所にできるものの、面倒臭がって誰もいちいちカーテンを閉めて服を脱ぐことはなかった。

 誰も、である。

 実際、一真は、体こそユニットバスの中で拭いたもののタオルで隠すことさえせずに出てきて風呂場の脇に並べられたビニール製のクローゼットを開けて下着と部屋着を取り出してその場で身に付けた。

 しかし琴美も、そんな兄の姿などまったく意識することなく動画を見ていて、そして終わったのかスマホを座卓の上に置いて立ち上がり、ユニットバスの前に行って、やはりカーテンは閉めることなく、一真が同じ部屋にいることもまったく気にせず、服も下着も抜いでカゴに放り込んで全裸になり、風呂場に入っていった。一真も、そんな妹のことをまったく気にも留めていない。

 お互い、心底何とも思っていないようだ。幼い頃からそうしてきたから、完全に慣れてしまっているのである。

 普通なら思春期に羞恥心の類が目覚めるところかもしれないが、おそらく二人とも、そんなものを気にしていられるほどの精神的余裕がなかったのだと思われる。

 その程度のことに心揺らがされていては、この家では生きていられなかったのだろう。



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