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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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ドールファミリアYAMAMOTO

 こうして琴美が学校で淡々といつも通りに過ごしている頃、一真も、

『いつも通り淡々と』

 仕事をこなしていた。今日のそれは、<SANA>のドレスを気に入ってくれて自身が作るドールの衣装として用いてくれるドール作家、

 <山下典膳(やまもとてんぜん)

 のパートナーが運営する<ドールファミリアYAMAMOTO>での新しい人形の展示について、ドレスを提供する<SANA>としても意見を述べるという仕事だった。

 一真ももうすでに何年も<SANA>に務めている社員の一人である。<SANA>としての業務の柱の一つを任されることも何もおかしくない。会社自体がまだまだ若いそれであるがゆえに。

 一真自身、あまりコミュニケーションが得意なタイプではないものの、<ドールファミリアYAMAMOTO>の代表である山下(やました)郁美(いくみ)も、他者とのコミュニケーションを苦手とするパートナー<山下典膳(やまもとてんぜん)>を支えてきた経験を活かし、

『相手の話にまず耳を傾ける』

 ことをしてくれるがゆえに成立していた。

 自分の主義主張を一方的に押し付けることが結局は問題を作っていることを理解してる人物の一人でもある。

 その一方で、譲れないところは頑として譲らない人物でもあることで、一真はたくさんのことを彼女から学んできた。

「一真くん。沙奈子さんとしてはこの方向で行きたいということでいいのね?」

「はい。今回のドレスのコンセプトとしてはこれ以外には有り得ないと、<SANA>は申しております」

「そう。確かにドレス単体としてはこの方向性も理解できるし素晴らしいと思うけど、山下(やまもと)のイメージにはそぐわないの。これはシロイルカをモチーフにしてる印象。でも山下(やまもと)の頭にあるのはスナメリということなの。申し訳ないけどこちらとしては再度検討をお願いしたい」

「分かりました。それでは持ち帰って検討します」

 このように、一方的に、

『違う! こうじゃない!』

 と怒鳴りつけるのではなく、具体的な相違点を提示しつつ最終的には自分達の要求を相手に認めさせるというやり方だった。

 なので<SANA>側としても対処もしやすいし、担当者の一真としてもストレスが少なく済んでいる。

『現場の人間に過剰なストレスを掛けてこそ良い仕事ができる』

 という神話を信じる者は今なおいるが、山下郁美は、その神話を信じないタイプの人間である。自身の父親がかつてそれで部下を自殺に追いやり、その一件が基で家庭が崩壊したという経験を持つことが根底にあるのだろう。

『指示や注文は具体的に』

 が信条である。



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