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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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彼女の<キャラ>

 学校での琴美は、それこそ図書室で借りてきた本をずっと読んでいるか、課題をやっているかという形で過ごしていた。他の生徒とは、最低限にしか関わろうとしない。

 クラスには同じ中学から上がってきた者達が多く、彼女のことを知っている者も多かったので、彼女の<キャラ>は知られており、

釈埴(しゃくじき)さんっていっつも一人だよね? 寂しくない?」

 高校に入学したばかりの頃に彼女のことを知らない生徒にそう話し掛けられても、

「うん。一人でいるのが楽なんだ」

 と応えると、

「ああ、それが彼女の<キャラ>だから。そっとしといたげて」

 と、小学校の頃から彼女を知る生徒にそんな風に言ってもらえたりもした。

 人によってはそれを、

『無視した方がいいよ。と言われた』

 的に解釈することもあるかもしれないが、琴美自身はまったく気にしていない。そうしているうちにやがて

『そっとしておいた方がいい』

 という認識が浸透し、今に至るということだ。中には、

釈埴(しゃくじき)ってなんかお高くとまってね?」

「あん? ただのボッチだろ。ほっとけほっとけ」

 などと揶揄する者も当然のようにいるものの、彼女はそれさえ聞き流した。家で両親の振る舞いをスルーすることに比べればどうということもなかった。

 とは言えこれが成立していたのは、先にも述べたとおり学校側が、

『誰とでも平等に仲良くしましょう』

 と押し付けてこなかったからというのもある。

 彼女の家庭の事情については、小学校→中学校→高校と申し送りがなされ、対応に配慮が必要な生徒であるという認識はそれぞれの学校で共有されてもきた。それらの点では非常に恵まれてきたと言えるし、そのおかげで一真や琴美自身が、

 <社会のリスク>

 にならずに済んでいるという事実もある。

 他の生徒の側にしても、ノリの悪い相手と仲良くすることを強要されないので、

『せっかくこっちが仲良くしてあげようとしてんのに!』

 とイライラせずに済み、助かっていた。

『面倒臭い相手にいちいち絡まなくていい』

 のは、精神衛生上も好ましかったのだろう。また、

『そんなことで社会でやっていけるか!』

 的なお節介も緩和できている。たまにそのようなニュアンスで他の生徒を『導こう』とする者もいるが、たかが十数年しか生きていない、人生経験も浅薄で、専門的な学習もカリキュラムも経ていない、ただの、

 <素人の子供>

 が、

『他者を導こう』

 などと、おこがましいにもほどがあるというものだろう。自ら社会経験も持たなずして『そんなことで社会でやっていけるか!』など、それこそ、

 <知ったかぶり>

 以外の何ものでもないはずである。



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