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ハズレガチャの空きカプセル  作者: 京衛武百十
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働いてる気配

 海美神(とりとん)が、

『この車に乗るとね、それこそもうあっちこっちが『動いてる』『回ってる』『働いてる』って分かるんだ。『一生懸命走ってるんだな』ってのが分かってなんか楽しいんだよ♡』

 と言ったことについて、義綱も語る。

「僕はね、静かすぎる車は苦手なんだ。不安になるんだよ。本当にちゃんと問題なく動いてるのか分からなくて。だけどこいつは、どこかに不調があればすぐにそれを伝えてくれる。必ずはっきりと分かる予兆がある。そして何より、それぞれの部品が『働いてる』のが伝わってくる。

 会社でもそうだ。働いてる人達の気配や息遣いみたいなのが伝わってこないと、僕自身が働いてる実感がないんだよ。機械でさえこうやって<働いてる気配>があるのに、<人間が働いてる気配>がないってのは、僕にとっては不気味なんだ」

 それが義綱のポリシーだった。会社で働いているのは<人間>だ。<電子部品>じゃない。<アプリケーション>じゃない。だから一人一人を人間として扱う。人間として接する。人間として遇する。その当たり前のことを心掛けているだけに過ぎない。

 にも拘わらず、昨今は、その<当たり前のこと>をしない経営者も多いという。人間が働いてくれているから自身の会社が成立しているというのにそれを理解していない者が少なくないという。

 義綱にはそれが理解できない。

 そして続けて真理愛(まりあ)が言う。

「私もね、人間が人間として扱われないことにずっと違和感を覚えてた。人間を人間として扱わないことでこんなに爆発的に増えたんなら、人間を人間として扱うことで、増えなくなってもいいじゃない。それにこんなに爆発的に人口が増えたのってここ百年とか二百年とかの間でしょ? それまでの人口増加なんて本当にゆっくりだった。でも人間は生きてた。万年単位でね。それがどういうことなのかちゃんと考える必要があると思うんだ。大人として」

 穏やかな口調でそう話す真理愛に、琴美はある種の既視感を覚えた。似たようなことを言ってる者がいることを思い出した。

 結人(ゆうと)達だ。結人達とはまったく別でそう考える者がいることに少なからず驚かされた。

 けれど、それも本来は当然のことのはずである。日本に限っても一億人以上の人間がいて、結人達しかそういうことを考えていないなどと、なぜ思える? 結人達は決して、

 <異世界から転生してきたチート能力持ち>

 などではない。ただの人間だ。同様の考えを持つ人間がいても、何も不思議ではない。ただそれまで出逢うことがなかっただけだ。

 確かに結人は自身のバモスを大森モータースで改造してもらっているものの、そこの代表取締役と話をする機会など、必ずあるとは限らないだろう。



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