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ちゃんと言えなくてごめん

作者: あさむら

素敵な公式企画があったので、ギリギリですが参加させていただきます。

 高い山をこえると、森のむこうに動物たちの町があります。


 そこに住む仔リスのピピンと仔うさぎのシャルルは、赤ちゃんのときから仲良しでした。


 ピピンのおうちはパン屋さん、シャルルのおうちはお医者さん。


 だんだん寒くなってきて、ピピンのお父さんの焼くりんごパイの香りが町に広がりはじめたころ。ある夜、雪がたくさん降りました。次の朝、外はキラキラのお日さまと子どもたちの声でいっぱい。


「お母さん、シャルルと遊んでくるね」


「お母さん、ピピンと遊んでくるね」


 そして二人は、いつもの二人だけの広場で会いました。


「うわあ!」


 ピピンは目を丸くして、手をパチパチたたきました。


 シャルルはそっと雪の上に手をのせました。


「すごーく、つめたいよ!」


 それから二人はサクサク雪の中に入っていって、雪だらけになったあと、雪だるまを作ることにしました。


 大きな雪玉をころがしながら、シャルルが言いました。


「お父さんが言ってたんだけど、次の日曜に広場でお祭りがあるんだって」


「お祭り?」


 ピピンが聞きました。


「うん。いつもはないけど、今年はあるんだって。それで、そこにはめずらしいお菓子屋さんがいっぱい並ぶんだって」


 お菓子の大好きなピピンは、目をクリクリさせました。


「お菓子って、どんなの?」


「お父さんの言うには、とっても甘くてすごくおいしいのばっかりだって。いっしょに行こうよ」


「うん、行こう!」


 それから二人は、また今度は雪だるまの顔になる小さな玉を作り始めました。


「ねえ、そこにはくものお菓子もあるかな」


 ピピンがポツリと言いました。


「えっ?」


 シャルルはびっくりしました。


「クモ? クモだって? ピピンはクモを食べたいの?」


「ちがうってば。ボクの言ったのは、お空の雲」


 二人は空を見上げました。


「雲がお菓子になるのかな?」


 シャルルが言うと


「うん。だって、食べたことがあるんだ」


 とピピン。


「えーっ!」


 シャルルはまたびっくり。


「だって、雲って、あれだよ。あんなところにあるの、どうやっても食べられないよ」


 ピピンは悲しくなりました。だって、ピピンはほんとうに食べたことがあったのです。今よりちょっと昔、おじいちゃんのおうちで。あのときの甘―い味が、ピピンの口の中に広がりました。


「でも、ボクは食べたの! ほんとうに、雲のお菓子を食べたの!」


「だから、あの雲はとれないってば!」


 シャルルも言い返しました。


「どうしてうそつくのさ」


「うそなんか言ってない!」


「うそだよ、うそだ。うそつきのピピンなんて嫌いだよ!」


 シャルルはおこって帰ってしまいました。しかたなく、ピピンはひとりで雪だるまの顔に黒い実をつけ、それから帰りました。




 次の日、ピピンはシャルルと遊ばず、ひとりで町を歩き回りました。お菓子を見つけてシャルルに見せれば、信じてもらえると思ったのです。


 けれど、ピピンがシャルルに見せたいお菓子は、どこにもありませんでした。


 どうしよう、これじゃほんとうに、うそつきになっちゃう……。


 そこでピピンは、今度は雲をとろうと高いところに登ることにしました。虫とりアミなら雲までとどくかもしれない、ピピンはそう思ったのでした。


 高いところ……高いところ……ピピンは家中を見て回りました。そして、倉庫の天窓を見つけました。


「あそこからなら」


 ちょうど窓のところまで、高く高く粉袋が積まれていました。


「よいしょ、よいしょ」


 ピピンはひと袋ずつ足をかけながら登り始めました。ところが十コ目まで登ったとき


「なにしてるの!」


 お母さんの大声でびっくりし、そのひょうしにドシーン。


 雲をとるのは失敗。お父さんとお母さんにはプンプンにおこられ、そして何よりおしりの痛いこと。


「もうダメだ!」


 ピピンはその晩、ベッドの中で泣きました。


 ところが次の日、ピピンにとって夢のようなことが起きました。


 シャルルが家に来てくれたのです。


「あのね、雪だるま、とけちゃった」


 シャルルは下をむいて小さな声で言いました。


「また、作ればいいよ」


 ピピンも下をむいて小さな声で言いました。


 それから二人は、ピピンのお母さんが持って来てくれたアツアツのりんごパイを食べました。


 次の日から、また二人はいっしょにいつものところで遊ぶようになりました。


 でも、もう雲のお菓子の話はしませんでした。




 そして、お祭りの日。ピピンとシャルルが広場に行くと、そこはもう甘い香りでいっぱい。


「うわあ! すごい! すごい!」


 二人はあちこち見ながらどんどん進んでいきます。


「ねえ、どれ食べる?」


「どれにしよう」


 そのとき、シャルルが少し先を指して大きな声を上げました。


「あれ見て! ピピン」


 ピピンが見ると、そこではおじさんが、何か白いフワフワしたものを棒に巻きとっていました。その前には、いろんな子たちがズラリと並んでいます。


「もしかして、ピピンが言ってたのって、アレのこと?」


 二人は顔を見合わせました。


「きっと、そうなんだ。行ってみよう」


 シャルルが走り出しました。ピピンも続きました。


 ちょっと待って、二人の手におじさんから白いフワフワのついた棒が渡されました。


「すごいね、すごいね。どうやって食べよう」


 シャルルはフワフワにほっぺをつけました。


「こうやって、なめるとね」


 ピピンはフワフワをペロリ。


「わあ、とけるんだね!」


 シャルルもピピンにならい、ペロリ。


 その甘いこと甘いこと。


「本当だ! これ雲のお菓子だ!」


 そしてシャルルはまたペロリ。


「ごめんね、ピピン。本当にこんなお菓子があったんだね」


「うん。でもボクもちゃんと言えなかったから。ボクもごめんね」


 ピピンとシャルルはステキな二人。たまにケンカもするけれど、さみしくなってすぐ会いたくなる、とっても仲良しさんなのです。


ピピンが探したのは"くものお菓子"。でも、二人が本当に探していたのは、ちゃんと謝るための言葉だったのです。


読んでいただいて、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ごめんね」って、最初に言うタイミングを逃すと、その後って言いだしにくいのですよね。 実際に綿菓子があるとわかってから、ピピンを疑ってごめんと言えたシャルルは偉かったですね。 これからも喧嘩…
[一言] 大人も子どもも、自分の非を認めるのはとても難しいことです。しかもそれぞれ自分は間違っていないと思っている場合は特に……ですね。 この物語では「ある」「なし」が明確に示されるものでしたが、我…
[一言] 2人仲直りできて良かったですね。 綿菓子食べたくなりました^_^
2021/01/13 20:35 退会済み
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