79話 ターニプの町その後パート2
今回は、町から離れたところに降りるのは面倒だったので、ターニプの門の前に降ろしてもらった。
門番のスルタ・サウパは、目の前にサラマンダーが現れたので、ビックリして町の中へ逃げていった。たぶん、7巨星王に報告に行ったのだろう。どのみち、報告に来たのだから、詰所でのんびり待つことにした。
サラちゃんは、追加のプリンをたくさん持って、嬉しそうにイディ山に帰って行った。
しばらくすると、7巨星王が、完全武装して門に現れた。
「スルタ、どこでサラマンダーを見たのだ」
「ブロッケン山の方角から来ました。しかも、カゴをつけて人を運んでいたみたいです。あれは、この町を襲いに来た不審者に間違いありません」
「そうなのか・・・せっかく、ホワ様が、お目覚めになったのに次はサラマンダーの襲来か」
「ドッレ、何をそんな深刻な顔をしてるんだ」
トールさんが、ドッレに声をかけた。
「これは、トールさん。ダークエルフの説得ありがとうございます。ホワ様が、長い眠りから目を覚ましました。これで一安心できると思ったのですが、サラマンダーの襲撃が確認されました。安全なところへ避難された方が良いでしょう」
「サラのことか」
「・・・・・」
「だからサラのことか」
「いえ、サラマンダーです。イディ山に住む火の聖霊神です。とても獰猛な性格をしていて、機嫌を損ねると、地獄の業火で世界を火の海に沈めると言われている精霊神最強のサラマンダーです」
「あいつ、そんなに凄いヤツだったのか・・・ただの食いしん坊だと思っていたぜ」
「ドッレさん、トールの説明が下手で申し訳ありません。火の精霊神サラマンダーは、ポロンの召喚獣です。ブロッケン山からこの町まで、送ってもらっただけなので、決してこの町へ襲撃に来たのではないので安心してください」
「ほ・ほ・本当なのか・・・」
「本当ですわ。私の召喚獣ですわ」
「そうなのですか。ポロン様は凄い方なのですね。これまでの失礼な対応申し訳ございませんでした。何卒、このターニプの町を火の海にしないでください」
ポロンさんが、サラちゃんを召喚できると知って、7巨星王達は、ポロンさんを見る目が一変した。ポロンさんを怒らしたら、町は崩壊しドワーフは殲滅されると感じたのであろう。
「そんなことするわけないわ。それよりも、会ってもらいたい方がいるのよ」
「ポロン様の頼みなら、誰にでも会いましょう」
「それは、助かるわ。実は、ダークエルフが、あなた達に謝罪をしたいというので、連れてきたのよ。さあ、アビスさん、ドワーフの方々へご挨拶しなさい」
ポロンさんは調子に乗りまくっている。精霊神と契約したことによって、ドワーフのポロンさんに対する態度が一変して、よほど気持ちが良かったのであろう。
アビスは、7巨星王のもとへ行って、150年前の出来事を全て説明した。そして、涙がらに謝罪した。
「これは、国民達に知らせて、もと王族への非難を改めさせないと」
「ホワ様が、眠りから覚めたのなら、もう過去のことは、水に流そうではないか」
「悲しい、結末だったのだな・・・」
「お前のしたことは、決して許される事ではない。でも、もう十分に反省しただろう」
「エルフの呪いが解けたのなら、もう許してあげよう」
「国民が納得いくか心配だが、もう争いやめにしようではないか」
7巨星王それぞれの意見があった。7巨星王は、アビスの話しを聞いて、もと王族の名誉王族を加えて、今後の事で、会議をしたいといことで、しばらく待っていてほしいと言われた。
私たちも、エルフとドワーフの対立の根本の原因は、アビスにあると思っているので、ドワーフの提案に納得し、詰所で待つことにした。
しかし、アビスとサンドマンをうまく利用して、エルフとドワーフの戦争を企てたのは、いったい誰なんだろう。サンドマンを取り逃したので、真相は謎のままである。
2時間くらい過ぎただろうか、詰所に、1人のドワーフの女性が現れた。ドワーフの女性は、男性よりも細く髭もない。そして、長い髪を後ろで束にして結んでいる。
「あなた方が、ラストパサーの冒険者で、よろしいのでしょうか」
「そうだぜ。あんたは誰なんだ」
とトールさんが尋ねる。
「私は、名誉王族のホワと言います。私を眠りから救っていただいて、ありがとうございます。私は、ドワーフの一族の代表としてここにきました」
「そうか、それで、アビスの件はどうなったのだ?」
「もちろん、アビスさんのことは、許すという結論にな李ました。150年前に色々とあったけれど、過去を見るのではなく、現在を見ろとの意見で一致しました。でも、本当はあなた方が持っている、日本酒というお酒で、早く私が呪いから解放された祝賀会をしたいのが本音です。それに、サラマンダーを召喚できるエルフさんがいる国と、対立しようと思いません」
「それは助かる。これで、依頼達成だな」
「許していただいて、ありがとうございます。全ての原因は私にありますので、処罰していただいても、何も文句を言うことはありません」
「違うわ!あなたも被害者ですわ。あなたの弱い心に付け込んで、利用した黒幕が、全ての元凶ですわ。だから、あなたは、何も気にしなくて良いのよ」
「ありがとうございます。ドワーフの姫よ。あなたは、とても心も姿も美しい方なのですね。あなたの言葉を聞いていると、姉上を思い出します。やっと姉上が言っていた事を、理解することができました。そして、姉上が、ドワーフの王子を愛した理由も今ならわかります」
「私は姫ではないのよ。でもお姉さん気持ちを理解できるようになって良かったわ。あなたの力で、ドワーフとエルフの友好を取り戻しましょう。もちろん、私も協力するわ」
「わかりました。ホワ様と共に協力して、必ず、150年前のようなより良い関係に戻るように頑張ります」
ホワはアビスに近寄り強く抱きしめてあげた。アビスは、ドワーフから許しを得た喜びから、ホワの腕の中で涙を流して喜んだ。アビスには、ホワの温もりが姉上の温もりに感じたのであろう。
「おっ、あの2人いい雰囲気じゃないか」
「トール、余計なことは言わないのよ」
「でも、面白そうじゃないか」
「そうですわ。どうなるかワクワクですわ」
ポロンさんとトールさんの視線に気づいて、ホワとアビスはそっと離れた。
「2人が邪魔するから離れました」
ホワとアビスの顔は真っ赤になっていた。2人とも、かなりお互いを意識しているのだろう。でもエルフとドワーフが仲が良いのはいい事である。
私たちは、ホワさんに連れられて、7巨星王と名誉王族のいる大きな広間に連れて行かれた。もちろん、竜光石の話しをしてくれるのではなく、日本酒を早く出してくれという宴会の催促であった。




