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魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に助けられて、人間界で無双する。  作者: にんじん


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444話 スカンディナビア帝国編 パート31


 「ヴァリ王、ヘカトンケイル様が戻られまして、ヴァリ王との面会を求めておられます」


 「ヘカトンケイルだけが戻って来たのか?」


 「はい。ビューレイスト様や他の巨人はまだ戻られていないようです。もしかしたら、トールの拘束に失敗したのかもしれません」


 「それはないだろう。ロキには子供の頃からアーサソール家を憎むように育ててきたはずだ。母が亡くなったのもアーサソール家の薄情な対応によるものだと信じさせたはずだ。そんなあいつがトールと2年くらい旅をしたからといって、アーサソール家への恨みが消えることはないはずだ。ヘカトンケイルが1人で戻ってきたのは、ジャイアントの動向を確認するためだろう。ジャイアントとヘカトンケイルは犬猿の仲のだから、ジャイアントが裏切らないか確認しにきたのだろう」


 「そうかもしれません。一階の大広間にヘカトンケイル様が待っていますので、すぐに駆けつけた方が良いと思います。ヘカトンケイル様を怒らせると後々面倒になると思います」


 「そうだな。魔王が私の配下にくだるまでの我慢だな」



 ヴァリ王は急いで一階の広間に向かった。



 「ヘカトンケイル様お待たせしました。お一人でお戻りになったと聞いていますが、何かあったのでしょうか?」


 「とても良いことがあったのだ」



 ヘカトンケイルは嬉しそうに笑っている。



 「何があったのですか?」


 「念願の魔王様の降臨に成功したのだ!」


 「ほ・ほ・本当ですか!?」



 ヴァリは心臓が口から飛び出しそうなくらいに驚いた。



 「本当だ。だから俺はこんな嬉しそうな顔をしているのだ」


 「まさか・・・ビューレイスト達を生贄に捧げたのですか?」



 ヴァリは最悪の事態を想定した。魔王の降臨に必要なのは4人の生贄である。ロキ、トール、ビューレイスト、マグニの4人を生贄に出せば魔王の降臨の儀式を行うことはできるとヴァリは思っている。しかし、ビューレイストとロキには手を出さないように約束をしていた。しかし、その約束が破られたのではないかと危惧しているのである。



 「4人の生贄か・・・あれはジャイアントがでっち上げた嘘だ。あいつは嫌われ者だから、俺に協力してもらうために嘘の情報を掴ませてたのだ。あいつがなぜすぐにバレるような嘘をついたのかはわからないが、魔王様直々に生贄の方法は間違っていると聞いたら間違いはない」


 「生贄の方法は嘘だったのですか・・・」



 ヴァリは、魔王を配下にして巨人を支配する構想が潰れてしまい、ショックで崩れるように座り込んだ。



 「その様子だと俺を出し抜いて魔王様を利用しようと企んでいたのだな」


 「そんな・・・そんな・・・」



 ヴァリはそんなの虜になっている。



 「ヴァリ、お前の天下は3日も持たなかったな。魔王様の命令によりお前を拘束する」


 「そんな・・・そんな・・・」


 

 ヘカトンケイルは、ヴァリを大きな手で掴み上げそのまま手の中で拘束した。



 「何をする!ヴァリ王を離せ」



 ヴァリの護衛の兵士が大声でさげぶ。



 「兵士どもよく聞け!魔王様の命令によりこの城の地下牢に閉じ込められているアーサソール家の者達を解放しろ」


 「なぜですか?あいつらは魔王の降臨のための生贄と聞いています」

 

 「お前達も俺の話を聞いていただろう!魔王様の降臨方法は間違っていたのだ。それに魔王様はもう降臨されて私を導いてくれているのだ。だから、早くアーサソール家の者達を解放しろ」


 「しかし・・・」


 「何度も言わせるな!俺に歯向かうのか」


 「わかりました。いますぐに解放します」



 兵士たちは急いでヘルブリンティの元へ向かった。



 「ヘルブリンディ様、ヴァリ王がヘカトンケイル様に拘束されました。そして、アーサソール家の者達を解放しろと言っています」


 「どういうことだ。なぜヴァリ王は拘束されたのだ!」


 「わかりません。しかし、魔王の命令だと言っていました」


 「魔王だと・・・魔王が降臨したのか?」


 「ヘカトンケイル様はそう述べられていました」


 「ヘカトンケイルはロキ達を生贄にしたのか?」



 ヘルブリンディもヴァリと同じことを考える。



 「いえ違います。ヘカトンケイル様は、ジャイアント様が嘘の方法を教えたと言っていました」


 「どうなっているのだ。俺はどうしたらいいのだ・・・」


 

 ヘルブリンディは考え込むが何も良い案は浮かんで来ない。



 「早くアーサソール家の方々を解放しないとヘカトンケイル様が暴れると思います。ご判断をお願いします」


 「ヘカトンケイルを倒すことはできないのか!」


 「無理です。王国近衛騎士団のほとんどは、ヴァリ王が起こしたクーデターの時に、巨人族に壊滅状態になっています。今城にいる兵士が束になってかかってもヘカトンケイル様を倒すことはできないでしょう」


 「そうか・・・それなら解放するしかないだろう。すぐにアーサソール家の者を解放しろ」



 ヘルブリンディは、この場にいては危険だと感じて急いで城から逃げ出した。兵士たちから地下牢から解放された長男のモージと母のシヴはヘカトンケイルの元へ連れて行かれた。



 「俺たちを牢屋から出してどうすのだ」



 モージは王子らしく毅然とした態度でヘカトンケイルに声をかける。



 「魔王様の命令でお前達を解放することになった。今後のことは魔王様が決めるだろう」

 

 「魔王だと・・・もしかしてトール達を生贄にしたのか!」



 モージは、先ほどと違ってかなり取り乱した様子で怒鳴りつけた。



 「トール・・・」



 トールさんの母親であるシヴは、涙目にながらトールさんの名前を呟いた。



 「心配するな。生贄など必要ない。それに、魔王様はロキやトールの仲間だそうだ。魔王様の仲間に手出しをすることは絶対にない」


 「トールは魔王と一緒にいるのか?どういうことだ?」


 「トールが無事でよかったわ」



 シヴは安堵のため息をついた。



 「詳しいことは本人に聞け。ビューレイストと一緒に明日にでも戻ってくるだろう」


 「お前の話を信用していいのか?」


 「好きにしろ。俺は魔王様がここに戻ってくるの待たせてもらうぜ」



 ヘカトンケイルは広間で腰を下ろして座り込む。



 「母上、詳しい事情はわかりませんが私たちも部屋で休みましょう」


 「そうね。トールが戻ってきてから確認しましょう」



 モージとシヴは自分の部屋に戻って行った。


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