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44話 ブラカリの町パート8





 「残念だが、そういう子は知らないな。その子がどうかしたのか」


 「10歳の女の子なのですが、かなりの魔法の使い手であります。どうにかして、私たちの陣営に協力を願いたいところなのですが・・・素性が全くわからないので情報を集めております」


 「そうか。それでしたら、何かわかれば連絡しよう」



 さっきのバトルクライが話していた子がルシスという女の子のはず・・・強力な魔法の使い手となると、ますます、リプロ様の関係者の可能性が高い。この事は絶対に他言はできない。とプルートは思った。



 「それでは、本題に入ろうではないか。神守教会の動きが活発になっているみたいだな」


 「はい。パースリの町が、ゴブリンに占拠されたことを聖魔教会の仕業だと吹聴しています。それにより、王都内では今まで優勢だったネテア王妃様の勢力が、神守教会の勢力に寝返る者も現れています」


 「そうらしいな。パースリにいた家族を失った者の怒りの矛先が、聖魔教会にきたというわけか」


 「はい、そうです。ネテア王妃様が、推し進める全人種共存政策が、このままでは頓挫してしまいそうです」


 「困ったものだな。こちらとしては、できるだけネテア女王様への支援をするつもりであったが、逆に迷惑をかける立場になったというわけだな」


 「結果的にはそうなっています・・・失礼を承知でお聞きしますが、魔獣を退ける魔石があるなら、魔獣を呼び寄せる魔石があるのではないでしょうか?」


 「そんなものあるわけがなかろう。この町は無関係だ」


 「失礼しました。しかし、状況は悪くなってきていますが、パースリの町を救ってくれたのは、亜人の女の子がいるラスパです。それを上手い事利用できないかと考えております」


 「それで、話しが戻るという事だな」


 「はい。もし、プルート伯爵様のお知り合いだったのなら身の潔白を証明することになります。それに、ネテア女王様の全人種共存政策の柱になる人物でもあると思っています」


 「残念ながら、知らないもの知らないとしか言えんな」


 「わかりました。今後もご協力お願いします」


 「ああ、目指すところは同じだからな」




 私たちが、大食館で話しをしていた時、外で騒ぎがあったらしい。店員によると、魔石工房に不正に侵入して、魔石技術を盗もうとしていたらしい。


 しかし、すぐに、バレて捕まってしまった。この町で、犯罪を起こしたらこの町の法律で裁かれる。どんな刑罰になるのか興味があって、私は店員に捕まった人が、どうなるのか尋ねてみた。


  

 「この町へ来て罪を犯すのは、ほとんどが神守教会のスパイです。魔石技術や、聖魔教会の実態を探りに来ているのです。もし捕まったら、それは恐ろしい地獄の日々が待っているのです。神守教会を信仰している者にとっては」


 「恐ろし地獄の日々とは、どういうことですか?」


 「それは、獣人との共同生活です。聖魔教会は、他人種との共存を理解させるための処置として、共同生活をさせるのです。神守教会の信者にとってはまさに地獄です。恐ろし魔王の手先との、共存生活だから、いつ食べられるのか毎日が恐怖で生きた心地がしないのです」


 「獣人は、いい人なのになぁ」


 「そのとおりです。俺も実は神守教会のスパイでした。スパイ活動がバレて捕まって、獣人との共同生活をするようになって、初めの3ヶ月は恐怖の日々でした。しかし、そのうち獣人たちの優しさに惚れ、いつしか友と思えるようになりました。俺は、この町が気に入ったから、家族を説得してこの町に移り住んだのです。しかし、捕まった者でもこの町に住まずに故郷に帰る者もいます。しかし故郷に帰って、神守教会の教えの間違いを広め、王妃様の推し進める全人種共存政策に、賛同を呼びかけているのです」


 「そうなんですね」


 「この町は、ほんといい町です」



 店員は幸せそうな笑顔で言った。




 ⭐️リアム視点になります。

 


 「旦那様、ジャイコブ司教様の使いの者がきています」


 「わかった」

 


 ジャイコブ司教とは、パースリの町の神守教会の司教であり、パースリの町を実質的に支配していた人物である。



 「リアム伯爵様、ジャイコブ司教様の状態がよくありません。なんとか支援してもらえないでしょうか」


 「わかっておる。しかし、最近ディーバの監視もきびしくて、動きづらくなっている。治癒士は派遣しただろう」


 「はい。しかし、より高度な治癒ができる者が必要です。ジャイコブ司教様は、両腕を失っております。傷はふさがりましが痛みが消えません」


 「わかっておる。王都に使いの者を出しているところだ。教皇様がなんとかしてくれるだろう」


 

 オリビアの話しによると、あのガキが腕を失った護衛を魔法で元に戻したらしい。俺は亜人などの力は借りたくない。それに、俺が、神守教会と繋がっているのがバレるのも困る。


 パースリの町は、教皇の指示によって神守教会の信者の育成をする町であった。立派な孤児院を作り、子供の頃から神守教会の方針を叩き込み、さらに、神守教会の兵士として育てるのである。なので、パースリの町は、神守教会の信者の町であり、ブラカリへの侵攻をする時の為の準備拠点でもあった。


 

 「王都まで、ジャイコブ司教様を運ぶことはできませんか?」


 「それは、難しいな。俺の立場的に表立って神守教会を支援することができない」



 ジャイコブ司教は、神守教会の中でもっとも過激的な人物であった。聖魔教会や王女様の進める全人種生存政策に、真っ向から反発していた。パースリの町を拠点として、神守教会の勢力を拡大する事を目指していたが、あまりにも横暴なやり方のため、反発をかうことも多かった人物である。


 ディーバ様が王妃様の政策を支援しているので、リアムが表立って神守教会と関わる事はできないのである。


 ジャイコブ司教は、ゴブリンの軍勢から逃げることができて、トメイトの村で治療に専念している。トメイトの村は、神守教会支持派の村なので待遇は悪くはないのである。しかし、ディーバ様の影響で、リアムの領土のほとんどの町が神守教会の教えを否定している。

 

 さらに、横暴なやり方で信者を増やしているジャイコブ司教は、トメイトの町を除いて、他の町からは嫌われているのである。なかには、パースリの町が襲撃された事を当然の報いを受けたと言う者もいる。



 「旦那様、教皇様の使いの者が到着しました」


 「おお。それはいいタイミングだ。こちらに通してくれ」


 「はいわかりました」


 

 教皇の使いの者は、リアムに書簡を手渡した。書簡の中には、こう書かれていた。


 『ジャイコブは仕末しろ。パースリの町の事件は、神守教会にとって好都合の材料になっている。ジャイコブは、独断で行動し神守教会の評判を下げる原因にもなった男だ。余計なことをされて、この好機を潰されるわけにはいかない』


 リアムは、ジャイコブ司教の使いの者に、教皇の判断を説明した。


 教皇の指示は絶対である。使いの者はすぐに始末しますと言って屋敷から出て行った。

 

 そして、リアムはもう一つの書簡に目を通した。


 『ブラカリ襲撃の準備を、進めるように』と書いてあった。




 


 



 

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