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魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に助けられて、人間界で無双する。  作者: にんじん


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394話 ボルの人界征服編 パート6


 「無理だ・・・あんな硬い物体は初めてだぜ。俺の両腕の骨が砕けたかもしれない」



 トールさんは両腕をぶら下げるように、下にダランと降ろしている。どんなに力を入れても腕が上がらないみたいである。小ルシスはトールさんを引っ張りながら治癒魔法を使ってトールさんの腕を治し始めた。



 「トールお姉ちゃん、気をしっかりと持ってください。すぐに治してあげますよ」



 小ルシスが必死にトールさんに声をかけるが、トールさんは死んだ魚のような目をして、戦意を喪失した。



 「私が相手をしてあげます」



 ロキさんは、トールさんの様子がおかしいとすぐに見抜いてムーンをトールさんの方に行かさないように挑発をする。



 「ほほう。俺を目の前にしてビビらないことは褒めてやろう。しかし、威勢がいいのはその魔剣のおかげだな」



 ムーンはロキさんの剣を見て、すぐに魔剣だと気づいてのである。魔剣とは神人や神を倒すために作られた武器である。なので、ムーンはすぐにロキさんのルーヴァティンが魔剣だとわかったのである。



 「しかし、なぜ人界に魔剣があるのだ。それに、人間のお前がなぜ魔剣を使いこなしているのだ」



 魔剣は、魔族が使用する為に作れた特別な剣である。なので、人間が簡単に使いこなすことはできない。しかし、ロキさんは覚醒者であり、私のアドバイスを受けたことにより魔剣の力を引き出すことができるようになったのである。しかし、まだ100%の力を引き出せるわけではないのである。ちなみにフェニが魔剣ティルビングを使えたのは、リプロにフェニックの能力を授かり魔人に近い体質になったからである。



 「そんなことどうでもいい事よ」



 ロキさんはルーヴァティンを握りしめて戦闘態勢に入る。



 「そうだな。どうせ死ぬのだからな」



 ムーンは、光球を回転させてロキさんに突撃する。しかし、ロキさんは空間を削って光球を避ける。



 「面倒な武器だな。しかし、逃げるだけでは俺には勝てないぞ」



 ロキさんもそれはわかっている。しかし、ロキさんはそんな安い挑発には乗らない。



 「口撃ばかりで、全然私に攻撃が当たらないのはどうしてかしら?」



 逆にムーンを挑発するのである。



 「このゴミムシがぁ!!!」



 ムーンは、魔力を全身に集めてさらに大きな光球に変身した。その大きさは直径6mもあるのであった。


 ムーンは地響きを立てながら、ロキさんに目掛けて転がるが、いくら大きくなっても冷静さを失ったムーンの動きは単調で避けるのは容易いのである。


 ロキさんは、誘導するように王都シリウス、そしてトールさんからどんどん離れていくのである。



 「この辺りでいいかしら」



 ロキさんは、ムーンから逃げることやめてルーヴァティンを光球に突き刺した。


 ルーヴァティンは光球に突き刺さり、光球の動きが止まった。



 「魔力比べをするつもりか!」



 ムーンの体は魔力障壁を重ね合わせることにより大きな光球になっている。そして、その魔力障壁を削り取らないと、ムーンの本体に攻撃を与えることはできない。


 ルーヴァティンの能力は空間を削り取る能力と魔力を奪い取る能力がある。莫大な魔力障壁で包まれたムーンの光球を壊すことが難しいと判断したロキさんは、ルーヴァティンの能力を使って、魔力障壁を壊すのでなく吸収することにしたのである。


 しかし、これは単純に魔力のぶつかり合いの相撲みたいなものである。なので、魔力が大きい者のが有利なのである。



 「そうよ。私があなたの魔力を吸収してあげるわ」



 ロキさんは、覚醒者なので2種類の魔力を重ね合わせてより魔力の質を上げる。そして、ルーヴァティンの能力を最大限に引き出すために、魔力をルーヴァティンの細部まで綺麗に魔力を流し込む。そして、相手の魔力を吸収しながら自分の魔力に変換するのであった。


 ロキさんがムーンとの魔力対決で勝つなんて不可能である。人間と神人で魔力量で対決するなんて自転車で大型トラックに突進するほど無謀な事である。


 それでもロキさんは、ムーンの魔力をルーヴァティンで奪いそれを自分の魔力に変換して戦うことにしたのである。しかし、それは危険な賭けでもある。少しでも魔力の吸収に失敗すると、光球の力に負けてそのまま光球の下敷きになるのである。



 「俺の魔力を奪っているのか・・・面白いことをする人間だな。しかし、お前のその小さな器に俺の膨大の魔力を受け止めることができるのかな」



 ルーヴァティンは、ムーンの魔力を吸収して漆黒に輝いている。ルーヴァティンが吸収できる魔力はその持ち主の器に比例する。なので、ムーンが言っていることは正しいのである。



 「あなたの魔力の量など、スズメの涙程度しかないはずよ。もうそろそろ魔力が枯渇するのではないかしら?」



 ロキさんは涼しい顔をしながらムーンを挑発するが、額からは汗が滲み落ちている。



 ロキさんは、魔力を吸収しながら奪った魔力を全身に均等に分配して魔力の均衡を図っている。ロキさんは全身に隈なく魔力を拡散させることにより、膨大な魔力を吸収しているのである。これは、言葉では簡単に表現できるが、普通の人間なら魔力を隈なく分散させることができずに魔力の圧力に負けて、体が粉々に砕けてもおかしくないのである。


 これができるのは、ロキさんがソールに負けたと感じた王都の試合以降、私が教えた魔力操作の練習を毎日欠かさずにしてきたからである。


 


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